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第12話(前篇):交差

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     偽妹(ぎもうと)
―憎い男に身体を開かれていく―



■第12話(前篇):交差








――屋上





・・・ぱはぁっ・・・ちゅちゅーっ!




放課後、屋上のベンチから下品な音がしている。


ベンチに腰掛けた男子、その前に膝をついて股間に顔を埋めるフミ。
その頭は盛んに動いている。



・・・っぱ・・・ちゅぷちゅぷちゅぷっ・・・




「フミ・・・最近とくに燃えてるね・・・」



フミが男子の肉棒をむさぼっているかたわらで、
アイカがしゃがみこんで様子を見守っている。



最近は朝から夜まで、身体が疼いて頭がぼぉっとしている日が多い。
友達とのおしゃべりや、授業までもがうわの空だった。


放課後の「男遊び」、サトシからの悪戯いたずらが待ち遠しかった。




(・・・あぁ・・・何度かイかないと落ち着かないっ・・・)




・・・じゅぷじゅぷじゅぷっ・・・




「フ、フミさん!チ●ポもってかれそうだよぉ!!」



肉棒に吸い付くフミ。


彼女に似つかわしくないほどに、くちびるに力を込め、
ほほへこむほどになって肉棒に吸い付いている。



口の中では肉棒に、フミの舌や口の肉が密着している。


舌は肉棒の下から、裏スジを艶かしく転がすように責める。
口では上顎うわあごを亀頭に擦りつけたり、奥の咽頭いんとうにまで盛んに擦りつけた。




「ああっ!フミさんのクチマ●コ最高だっ!!」


童貞どうていの彼は、フミの口や舌づかいが
まるで女性器に思えるのだろう。



(・・・あぁっ・・・わたしのクチ・・・そんなにいいんだ・・・)



童貞の彼をフェラで責め立てる。
快感にもだえる彼の顔を見上げながら、フミは悪魔めいた目になる。




(童貞くんをクチで犯してるみたい・・・)





・・・じゅるるっ・・・



フミは責め方を変えた。





「・・・へぁ・・・こんらの・・・ろうから?」



舌先で亀頭をほじる。

彼の肉棒は亀頭に皮がかぶっている。
いわゆる包茎ほうけいタイプだった。


フミは亀頭と皮の間に舌先をすべり込ませた。




(・・・ふあぁ・・・チ●ポ味すごいっ・・・)




濃厚なチーズのような香りが鼻腔びこうに広がった。




「ああっ!ダメだよっ!!そんなところぉ」


彼はフミの頭にしがみついたまま、
身体をらせる。

包茎タイプの男子には禁断の快感だった。



・・・れろれおっ・・・れおれろっ・・・



舌先で執拗しつように亀頭と皮の奥を責め回す。




(・・・ここがすごく弱いんだね・・・)




何本も肉棒を味わっていたが、肉棒の形、味には微妙な違いがあった。
今では精液の味とともに肉棒そのものもクセになっている。



かつては、ほのかに興味があるだけだった。
男という異性の秘密をのぞき見てみたかった。




・・・それが今、常識では考えられないようなことをしている。


よく知らない男子。

話をしたことも無い男子。


それをお互いに顔写真だけで気に入って、フェラにおよんでいる。



フェラは場所は違えど、キスのようでもあった。
女は口で、男は肉棒で、互いに密着して味わう。




・・・れおれろっ・・・れろれおっ・・・




「ああっ!イクイクイクっ!!」



余裕の無い声に、フミは亀頭だけにかぶりつく。





・・・ぶびゅっ!ぶびびーーーっ!!




フミの口の中に、勢いよく射精した。




(・・・ふももぉ・・・)


長い射精だった。
次から次へとドロドロした精液があふれてくる。




「おあぁああああ」


男子はフミの頭にしがみついたまま、
全身をビクビクさせている。





フミはうっとりした顔で、
最後の一滴まで肉棒からしぼり取った。


彼女は色んな肉棒の記憶をたどって、
彼の精液量がとても多いと思った。



(・・・すっごい量・・・まってたのかなぁ・・・
それなのに・・・フレッシュ感あってたまんない・・・)




・・・ぐりゅりゅりゅじゅるるるる・・・



アイカが下品な音をたてて、
精液を口の中で味わっていた理由が実感できる。


舌と鼻で、彼の精液の味を覚えようとしている。




・・・ごくっ・・・ごきゅ・・・



のどにまとわりつくようになりながら、
ゆっくり精液がおなかに入っていく。



(・・・フェラって楽しいっ・・・)



フミには精液を飲んでしまうのが、
膣内射精に思えてならなかった。


そして、おなかが精液で満たされた。
少し温かな感覚がしている。


その存在感がまるで受精の疑似ぎじ体験のようだった。




(・・・ふぁあああ・・・)



そんなことを思うだけで、
フミは軽く頭がしびれてしまう。





「・・・ありがと・・・すっごい良かったよ」


男子はすっきりした顔をして帰っていった。
フミとアイカは彼を手を振って見送った。





「今日はごめんね、ちょっと遅くなったよ」



「いいよ、いいよ~アタシは先に楽しんでたから」



ふたりは笑った。
そして、出入口の上に登って、まったりまどろんだ。


演劇部の上演がある金曜以外の放課後は、
ほとんどを屋上で過ごすようになっている。

アイカとはスマホで連絡をとって、
どちらかの都合が悪いときは会わなかった。


屋上の出入口は、アイカとフミの専用スペースになっていた。
そこにはアイカが持ち込んだビーチパラソルで日陰がつくられていた。

日差しさえしのげば、常に風が吹き抜けていて涼しかった。



でも、いずれ気候のいい季節は終わってしまう。


フミは屋上で繰り広げられる「男遊び」が
いつしか終わってしまうことに切なささえ感じていた。




「ねぇ、冬とかはここ寒いでしょ?」



「そうだよ?冬はここシーズンオフだからね~」




聞けば、冬はまっすぐ家に帰っているという。
アイカは冬が苦手だった。


それを聞いて、フミは思い付くことがあった。
アイカの家はフミのアパートからそれほど離れていない。




「もしよかったら、冬はわたしの部屋に来ない?
こたつもあるからまったりできるよ」



「マジで!?それ最高~入りびたっちゃうぜ♪」



フミに誘ってもらったことが、
アイカはとてもうれしいようだった。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




――昼休み





「最近のフミって、何か肌ツヤ良くない?」



「そう?んんー演劇部のお手伝いで身体動かしてるからかな?」



ミカにめられて、フミはニコニコしながら、
適当な理由をつけて答えた。



肌ツヤの理由は、フミには本当は見当がついている。
それは最近、何本も味わうようになった精液だった。




(・・・まるでヴァンパイアのよう・・・)



男子の精液をフェラで搾り取って飲み干す。
射精は必ず口の中にさせて、精液を楽しんだ。


男子の元気なほとばしりが、女子に悪い影響があるわけが無かった。


ミカには分からないように、フミはあん自嘲じちょうした。




「わたしも塾が無かったら、演劇部の上演観たいんだけどな」



ミカはどうしても金曜日に塾が入っていて、
下校を急ぐしかなかった。




「塾があるなら仕方ないよ」



ミカの立場に理解を示しながら、脳裏では別のことを考えていた。
いつの間にか、ふたりの世界が大きく違ってしまった。


ミカは友達であることに変わりはない。

フミは独り暮らしのため部活に入らず、気に入った演劇を毎週観る。
かたや、ミカは1週間のほぼ毎日を塾通い。


ふたりの時間は、登校してきて授業が始まるまでの間、
昼休みの弁当の間ぐらいだった。



それにひきかえ、フミとアイカの時間は濃厚だった。
放課後の少なくとも1時間半ほどは毎日のように会っていた。


その時間のなかで恋愛論や性欲を話し、
「男遊び」をして肉棒を楽しんでいる。


どうしても、フミとミカの関わりは
表面的なものにとどまってしまっていた。




(・・・いいお友達だけど・・・仕方ないよね・・・)


ミカを眺めるフミの目はどこか乾いていた。





彼女にはアイカとのことも打ち明けなかった。

彼女はゴシップネタが好きで、
情報を仕入れては、フミに披露ひろうしていた。


それを聞いていると、彼女にも限界があるのが分かった。

やはり塾通いが忙しいと、学校にいる時間が限られる。

何せフミに対する「意外に男子慣れしている」という
評判をミカは全くキャッチできていないようだった。



・・・それでも彼女をフミは利用した。


彼女の噂話に「屋上」というフレーズが出てこないか、
いつも密かに注意していた。

ときには、それとなく話を振ってみることもあった。


盛んに「男遊び」をするようになっても、
それをにおわせるような噂話は出てこなかった。


屋上は複数あり、クラスメイトも屋上に上がる。
しかし、アイカとフミがいる屋上は別のところだった。

それはほとんど使うことがない校舎なので、
誰しも行きたがらないところになっていた。

フミはアイカがそうした屋上を選んでいることに、
観察眼があることを感じた。


「男遊び」している男子もそうだった。

リストの男子は大人しい子が多かった。
メンバーが増えることは無かった。


「男遊び」は彼女らにとっても、彼らにとっても秘密の足枷あしかせがあった。


関係の無い者に漏らして、「男遊び」ができなくなることは、
誰も望まないことだった。






「ね、フミ、今日遊びに行ってもいい?」



一瞬、フミは逡巡しゅんじゅんした。

これまでにそんなことは一度もなかった。
お互いのスケジュールが合わないのは事実だったが、
そんな気が起こらなかったというのがさいたる理由だった。



「うんうん、いいよ~」



今日は塾が休みになったという。 




(・・・・・・・・・)


ミカが部屋にやって来ることがわずらわしかった。
フミは彼女との関係が表面的なもので固定してしまっていた。


アイカには何でも話せるのに、ミカにはそれができなかった。
「こんな話をしても受け入れられない」そうした心理的なブレーキが働いた。



・・・合わない・・・


心がそう告げていた。
フミは自分でも冷たいと思ったが、事実そうなのだった。


できれば、学校で雑談をするだけの関係でいてほしかった・・・。





「こんなふうにふたりで帰ったことって、無かったよね」



「うん」



学校からの帰り道、ふたりの会話はミカから一方的に話すだけだった。
それは以前と変わらない形だったが、フミは空々しくて仕方なかった。




「私、学校と塾と家をぐるぐる回ってるだけのような気がして、
高校生活を楽しめていない気がしてるの」



フミはミカがそうした生活に疑問を感じているとは思っていなかった。
それが少しだけフミの興味を引いた。



「フミは独り暮らし大変だと思うけど、
演劇部の上演を観に行ったりして、楽しいこと見つけてるでしょ?」


確かにそうだったが、「楽しいこと」と言われて心のなかで
思わず苦笑いしてしまった。



「ミカは何かしてみたい?」


少しだけ期待していてみた。



「・・・ん~難しいなぁ・・・勉強でいっぱいいっぱいだから・・・」



フミは「やっぱり」と思った。

ミカにも彼女なりの「変わりたい」という気があるのだろうが、
それはフミにしてみれば、低回ていかいしているようにしか思えなかった。



(・・・・・・・・・)


ミカの取りめの無い話に相槌あいづちを打っていると、
ついつい忘れてしまっていることがあった。




「あー着いた着いた!」


ミカはひとり喜んだ。
ふたり揃って、アパートの階段を登る。




・・・ガチャ・・・



部屋の鍵を開けながら、
一瞬のうちにあの光景が通り過ぎていった。


あのときの鍵。

あのとき慌てたこと。


ウソから始まったこれまでのこと。




(・・・・・・・・・)


後悔しても現実は現実だった。
時間は確実に流れていた。



「んーっ、ここがフミの部屋かぁ~」


小さな玄関から一歩入って、うれしそうに見回した。
ミカが部屋に上がることは、これが初めてだった。


その言葉にフミは我に返る。
サトシと初めて会ったとき、ミカが立ち会った以来のことだった。



「ね、ねっ、これ一緒に食べようよ」


ミカは気を利かせて、クッキーの詰め合わせを持って来ていた。
家にあった誰かのお土産らしかった。



「わわっ、ありがと・・・お茶入れてくるね」


フミはキッチンに用意に行った。



「へぇ、フミってPC持ってたの?」


ミカは通された部屋で声をあげた。



(・・・あ、しまっ・・・)



サトシの私物だった。












(つづく)
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