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はじめまして、ねーちゃん。(1)
しおりを挟む母さんは雨の日がきらいだった。
雨の日の母さんは、まるで別の人みたいだった。
「雨が大嫌いで、太陽が好きなの。」
晴れた朝には決まって、母はそう言って笑っていた。
どんなに夜中から降り始めても、
母さんは雨が降り出すとぱちっと目を覚ます。
そして、干してもいない洗濯物を何度も確認しては
早く、早く
と何かを怖がって泣いていた。
雨が降るからいけないんだ、とか
貴方がアメオトコだから、とか
父さんに繰り返し叫んでいた。
父さんは、母に怒鳴られても、殴られても
決まって笑っていた。
謝りながら、なだめながら、悲しそうに笑っていた。
ある日、父さんが仕事に行っている間に
雨が降り出し、母さんが洗濯物を濡らしてしまった。
それを見て固まる母さんを励ましたくて
『母さん、』
と声をかけた。
そうしたら、母さんはゆっくり振り返って
「そっか....」
と納得したように話しはじめた。
興奮した表情で、早口に。
「そっか、どうりであの人を殴っても雨が止まないはずだわ....
そっか....そっか....アメオトコを間違ってたんだわ....」
『母さん?』
「恭也のせいだったんだっ!」
そう言って、母さんがオレに拳を向けた時の表情は
憎悪と、拒絶と、涙となってながれる
14年間のオレへの愛だった。
そっか、やっとわかったよ父さん。
アンタがどんなに殴られてもずっとしてた変な顔
すごく、すごく、悲しそうな笑顔をしてた父さんの気持ち。
オレが居なくなれば母さん、笑ってくれるか?
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