36 / 40
第一章
第36話 魔石レース⑤
しおりを挟む
転移ゲートを抜けて転移すると、僕は見知らぬ通路へと出ていた。後方にはただ壁があり、前方には扉が見える。扉の横には例によって木の札が貼ってあり、こう書かれていた。
~第二の関門『格好の的』~
避けるか、防御するか、あるいは切り払うか
(……『的』か。的が関係する罠といえば、よくあるあれ系かな……)
僕はなんとなく、この先に待ち受けているものを想定しながら扉を開けた。すると、そこはがらんとした大きな部屋になっていて、前方にはさらに奥へ進むための扉が見えた。部屋は空っぽで障害物のようなものは特に見当たらなかった
――ただ、部屋の壁や天井には『無数の小さな穴』が空いていた。僕は、この穴が意味するものについては既に見当がついていた。
「……【罠察知】」
僕は罠を見つけるためのスキルを発動する。すると、僕は感覚的に、この部屋のどこに罠が仕掛けられているか、そしてそれがどんな罠かを理解した。
――罠が仕掛けられている場所は『この部屋の床全て』で、罠の仕掛けは『穴から飛び出してくる矢』だった。……つまり、この部屋の床は、踏むと壁や天井から踏んだ者に対して無数の矢が射出されるようになっていたのだ。どの床の部分を踏むかによってどこから矢が放たれるかは変わり、中には踏むと壁一面から矢が射出される部分もあった。
(『避けるか、防御するか、あるいは切り払うか』ね……。この中なら…………『切り払う』、かな)
避けるのは不可能ではないだろうけど、壁一面から射出される矢はさすがに避けようがないし、結局切り払ってしまうことになる気がする。
防御は【魔力障壁】を展開すれば特に問題なく矢を防げそうだけど、第一関門で微妙に魔力を消費してしまったので、魔力はできれば温存しておきたい。切り払いなら【受け流し】の範疇だし、【受け流し】で消費する精神力はとても低い。
そんなわけで僕は飛んでくる矢はすべて切り払って進むことにした。
「――【受け流し】」
僕は【受け流し】を発動すると青の刃を抜き、一歩を踏み出す。部屋内部の床を踏むと、左右の壁から複数の矢が僕に向かって一斉に射出された。
――でも、特に問題はない。
僕は青の刃で全てを切り払った。
「よし、この調子でいこう」
僕目がけて飛んできた矢は全て切り払ってその辺に散らばっている。
僕はそのまま【受け流し】を発動しつつ、できるだけ矢が射出されない床の部分を選んで歩いていく。歩くたびに矢が発射されるけど、その矢は全て切り払われ、僕に届くことはなかった。
……そして気がつけば、僕は部屋の奥の扉の前まで来ていた。
(……ふー、第二関門はこれで終わりか。第一関門に比べたら全然大したことないかも……)
僕は少しは出遅れを挽回できたかなと思いつつ、扉を開ける。すると、そこは例によって通路になっていて、奥には転移の魔法陣が見えた。
僕は急いで魔法陣へと向かい、転移した。
……僕は気がつけば、僕は第一関門を突破したあとのホールと似たような部屋へと来ていた。ただ、周りには誰の気配もなかった。第二関門は結構早く突破したはずだけど、まだまだ他の冒険者たちには追いついていないということだろうか。
(まぁ、あれぐらいの罠ならほとんどの人は楽に突破してるよね……)
僕は急いで、前方に見えている転移ゲートへと向かった。次は第三関門だ。
――転移ゲートを抜けると、僕は小さな足場の上へと立っていた。足場は人一人が立つのでやっとぐらいだった。周囲の状況を確認すると、四方は壁で囲まれていて、前方に先に進むための扉が見える。ただし、橋のようなものは何もなく扉と僕が立っている足場の周りには底なしの真っ黒な闇が広がっている。落ちたら多分、レース脱落だろうと僕は思った。
(さて……どうしたものか。何か仕掛けがあると考えるのが普通だけど……)
僕はとりあえず【具現化:弓矢】で弓矢を具現化し、その辺に矢を放ってみた。見えない足場を疑っての行動だったけど、矢は真っ黒な闇に吸い込まれていくだけで、特に見えない足場があるわけではなかった。
(見えない足場ではないのか……。となると、怪しいのは壁かな?)
僕は壁に何らかの仕掛けがあると見て、【罠察知】を発動した。
(……反応あり、あそこか)
僕は反応があった壁の一部分を見た。……よくよく見てみると、その部分だけ微かに色が周りと違っていた。【罠察知】によると、この部分はスイッチのようなものになっているらしい。僕は弓矢でその部分を狙い、軽く矢を放った。すると、矢はその部分にあたる寸前で何らかの見えない壁に当たり、下に落ちていった。
(障壁……か?)
僕は今度は力いっぱい弓を引き絞り、本気で矢を放つ。
ガキィン!!
矢は再度見えない障壁によって防がれ、下に落ちていく。
(なるほど、そういう……)
でも、ただの障壁なら破るのは難しいことじゃない。僕は【魔力の矢】で矢に魔力を充填し、放つ。
ドガアアアアアン!
障壁は容易く破られ、壁の一部が吹き飛んだ。すると、ゴゴゴゴ!と音を立てて部屋の扉の下から足場が僕の方まで伸びてきた。伸びてきた足場はガチャンと僕の足場と連結するとそれ以降は何も起こらなかった。
僕は慎重に伸びてきた足場の上を進んだ。扉の前まで来ると急いで扉を開け、先に進む。
「ふぅ……これで第三関門も突破か」
僕は先の通路に入るとほっと胸を撫で下ろした。ふと横を見ると、木の札が貼り付けられていて、そこにはこう書かれていた。
~第三の関門『道は開ける』~
ただし、遠距離攻撃がないとどうしようもない場合もある
(…………遅っ!)
というか、こういうパターンもあるのか……。
ただ、確かにあのスイッチは遠距離攻撃でないと押すことはできなそうだし、近距離攻撃しかできない冒険者はここで脱落ということになるのだろうか? やっぱりこのダンジョンの製作者はちょっと嫌らしい感じがするなぁと僕は思った。
僕はそのまま通路を抜け、次の転移の魔法陣へと入った。
~第二の関門『格好の的』~
避けるか、防御するか、あるいは切り払うか
(……『的』か。的が関係する罠といえば、よくあるあれ系かな……)
僕はなんとなく、この先に待ち受けているものを想定しながら扉を開けた。すると、そこはがらんとした大きな部屋になっていて、前方にはさらに奥へ進むための扉が見えた。部屋は空っぽで障害物のようなものは特に見当たらなかった
――ただ、部屋の壁や天井には『無数の小さな穴』が空いていた。僕は、この穴が意味するものについては既に見当がついていた。
「……【罠察知】」
僕は罠を見つけるためのスキルを発動する。すると、僕は感覚的に、この部屋のどこに罠が仕掛けられているか、そしてそれがどんな罠かを理解した。
――罠が仕掛けられている場所は『この部屋の床全て』で、罠の仕掛けは『穴から飛び出してくる矢』だった。……つまり、この部屋の床は、踏むと壁や天井から踏んだ者に対して無数の矢が射出されるようになっていたのだ。どの床の部分を踏むかによってどこから矢が放たれるかは変わり、中には踏むと壁一面から矢が射出される部分もあった。
(『避けるか、防御するか、あるいは切り払うか』ね……。この中なら…………『切り払う』、かな)
避けるのは不可能ではないだろうけど、壁一面から射出される矢はさすがに避けようがないし、結局切り払ってしまうことになる気がする。
防御は【魔力障壁】を展開すれば特に問題なく矢を防げそうだけど、第一関門で微妙に魔力を消費してしまったので、魔力はできれば温存しておきたい。切り払いなら【受け流し】の範疇だし、【受け流し】で消費する精神力はとても低い。
そんなわけで僕は飛んでくる矢はすべて切り払って進むことにした。
「――【受け流し】」
僕は【受け流し】を発動すると青の刃を抜き、一歩を踏み出す。部屋内部の床を踏むと、左右の壁から複数の矢が僕に向かって一斉に射出された。
――でも、特に問題はない。
僕は青の刃で全てを切り払った。
「よし、この調子でいこう」
僕目がけて飛んできた矢は全て切り払ってその辺に散らばっている。
僕はそのまま【受け流し】を発動しつつ、できるだけ矢が射出されない床の部分を選んで歩いていく。歩くたびに矢が発射されるけど、その矢は全て切り払われ、僕に届くことはなかった。
……そして気がつけば、僕は部屋の奥の扉の前まで来ていた。
(……ふー、第二関門はこれで終わりか。第一関門に比べたら全然大したことないかも……)
僕は少しは出遅れを挽回できたかなと思いつつ、扉を開ける。すると、そこは例によって通路になっていて、奥には転移の魔法陣が見えた。
僕は急いで魔法陣へと向かい、転移した。
……僕は気がつけば、僕は第一関門を突破したあとのホールと似たような部屋へと来ていた。ただ、周りには誰の気配もなかった。第二関門は結構早く突破したはずだけど、まだまだ他の冒険者たちには追いついていないということだろうか。
(まぁ、あれぐらいの罠ならほとんどの人は楽に突破してるよね……)
僕は急いで、前方に見えている転移ゲートへと向かった。次は第三関門だ。
――転移ゲートを抜けると、僕は小さな足場の上へと立っていた。足場は人一人が立つのでやっとぐらいだった。周囲の状況を確認すると、四方は壁で囲まれていて、前方に先に進むための扉が見える。ただし、橋のようなものは何もなく扉と僕が立っている足場の周りには底なしの真っ黒な闇が広がっている。落ちたら多分、レース脱落だろうと僕は思った。
(さて……どうしたものか。何か仕掛けがあると考えるのが普通だけど……)
僕はとりあえず【具現化:弓矢】で弓矢を具現化し、その辺に矢を放ってみた。見えない足場を疑っての行動だったけど、矢は真っ黒な闇に吸い込まれていくだけで、特に見えない足場があるわけではなかった。
(見えない足場ではないのか……。となると、怪しいのは壁かな?)
僕は壁に何らかの仕掛けがあると見て、【罠察知】を発動した。
(……反応あり、あそこか)
僕は反応があった壁の一部分を見た。……よくよく見てみると、その部分だけ微かに色が周りと違っていた。【罠察知】によると、この部分はスイッチのようなものになっているらしい。僕は弓矢でその部分を狙い、軽く矢を放った。すると、矢はその部分にあたる寸前で何らかの見えない壁に当たり、下に落ちていった。
(障壁……か?)
僕は今度は力いっぱい弓を引き絞り、本気で矢を放つ。
ガキィン!!
矢は再度見えない障壁によって防がれ、下に落ちていく。
(なるほど、そういう……)
でも、ただの障壁なら破るのは難しいことじゃない。僕は【魔力の矢】で矢に魔力を充填し、放つ。
ドガアアアアアン!
障壁は容易く破られ、壁の一部が吹き飛んだ。すると、ゴゴゴゴ!と音を立てて部屋の扉の下から足場が僕の方まで伸びてきた。伸びてきた足場はガチャンと僕の足場と連結するとそれ以降は何も起こらなかった。
僕は慎重に伸びてきた足場の上を進んだ。扉の前まで来ると急いで扉を開け、先に進む。
「ふぅ……これで第三関門も突破か」
僕は先の通路に入るとほっと胸を撫で下ろした。ふと横を見ると、木の札が貼り付けられていて、そこにはこう書かれていた。
~第三の関門『道は開ける』~
ただし、遠距離攻撃がないとどうしようもない場合もある
(…………遅っ!)
というか、こういうパターンもあるのか……。
ただ、確かにあのスイッチは遠距離攻撃でないと押すことはできなそうだし、近距離攻撃しかできない冒険者はここで脱落ということになるのだろうか? やっぱりこのダンジョンの製作者はちょっと嫌らしい感じがするなぁと僕は思った。
僕はそのまま通路を抜け、次の転移の魔法陣へと入った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
579
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる