伊織さんと夏希君

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毒を食らわば貴方まで

毒を食らわば貴方まで

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いつだったか。
何でも今売れ筋な作家を集めて一つのお題に纏わる短編を書く、という聞くからに煩わしい話を、変態担当が持ってきたことがある。



いくらニート出身とはいえ、小説家として身を立てる以上、好き嫌いで物語を書くなんて贅沢ができねぇってことぐらい俺も分かってるわけで。

その上、ちょうどその頃の『庵夏樹』は、奴曰く『凄く重大な分岐点に立っていた』らしい。


つまりその短編が『庵夏樹』の命運を握ってたと言っても過言じゃねぇってわけ。


ますますもって断ることが出来るはずないそいつを、でも俺は最初から蹴るつもりだった。


別に何かが気にくわないとかそういうわけじゃねぇし、企画も内心面白そうだとは思ってた。

それでも、あの変態が『恋愛にしても書き直さないから!!』と泣きついてきても、俺は書かなかった。


違うな、書けなかったんだ。


企画のお題は『高校の先輩後輩』



……俺には高校時代の記憶がない。


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