伊織さんと夏希君

mito

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Your dreathing is like a cradlesong

Your dreathing is like a cradlesong

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「……ん……?」




視界が、薄暗い。


瞬きを何度かして、回りを見渡す。
見慣れた天井、家具。起き上がる、ってことは僕は床にあおむけになっていたらしい。


上半身を立てると、かけられていた毛布が落ちる。格好は本当に日曜日のラフな格好。


ふるふると頭を振る。ぼんやりとした頭が僕が寝ていたんだろう、ということを教える。でも、どこからが夢だったんだろう。現実だろう。


切ない気持ちだけが残っていて、泣きたくなる。
あれが、夢だったらいいのにって思う気持ちと。
あれが現実になることを考えた時に、こんな気持ちをまた体験しなきゃいけないのかって。


少しだけ、時間をかけて、落ち着くまでぼぅっとしていた。

頭が働いてきて、やっぱり全部夢だったんだろうなって納得する。


夏希くんがそんな僕の話を聞こうとしてくれる、なんてありえないし。

あんなに素直に夏希くんの結婚とか言う話を受け入れる自分はあり得ない。


それに、まだ秋の初めだったのに、もう紅葉が散ってたし。
あまりに自分の大好きなものが揃いすぎてる。



「ってか時間……!」


外は夜。
いつから寝てたのか、思い出せないけど。
っていうかどうして寝ちゃったのか、今日何やってたかの情報処理が追いついてないんだけど!


夏希くんのご飯、とか思って立ち上がろうとして、気づく。



僕が寝ていたのは、リビングの、ソファの前の床。


夏希くんは、そのソファの上で、眠ってた。



「……」



なんというか、言葉が見つからない。

徐々に思い出してきた。
そうだ、先に寝ちゃったのは夏希くんだ。

昨日までの大嵐とは打って変わって、今日はよく晴れていて。次の作品の話をしながら(そういえばこれのテーマが結婚だった……)夏希くんがうとうとし出して。


今急いでる締切もなかったし、気づかないふりをしていたら、案の定彼は眠ってしまった。

僕の前ではちっとも寝る姿を見せようとしなかった昔を思い出しながら、その横顔を見ていたのだけれど、いつの間にか自分も彼の寝息に誘われるまま寝てしまったらしい。

最近、忙しかったからな……
思っていた以上に、体に疲れがたまっていたようだ。


僕にかけられていた毛布は、僕が夏希くんにかけたもの。


つまり夏希くんは一度起きて、僕にこれをかけて、また眠りについたに違いない。



あの夢のせいだろう。
嬉しいのに、切ない。
嬉しいのに、悲しい。

失う日がくる、その思いが先立つ。


毛布をそっと夏希くんにかける。起きるかなって思ったけれど、夏希くんも疲れがたまっているのか、安らかな寝息が続く。


そのソファの横に、また仰向けになって目を閉じた。


繰り返される音だけに耳を集中して、願う。



Your dreathing is like a cradlesong
(貴方の寝息を子守唄に)

(せめて夢では幸せなままでいさせてと)


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