バニラ(仮)

mito

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つーか、ほなも日滝久遠も、俺にそれ言ったところでどうしようもないんだけど。
俺は部外者に等しいし、……あーまぁ、倉田に言ったら速攻火に油を注ぐ感じなのは目に見えてるけど。

でも俺を間に挟むったって、倉田本人は俺の隣にいて、一緒に話を聞いてるわけで。



「おま、またほなで遊びよったん!?」



当然こうなるに決まってる。
めんどくせぇから、頼むから俺の居ない所でやってくんないかな、君たち。



「遊んでません、俺、そういうのやめました」


すっぱり言った日滝久遠の視線は強かった。

俺が土手で同じことを尋ねた時、間髪入れず分からないと言った日滝久遠は、そこにはいなかった。


コイツ、本当に今回のを最後にしようとしてるのか。



今更ながらに、そのことに気づく。いくら言葉で言われたところで、やっぱり俺は日滝久遠はそのまま女泣かせを続けるだろう、そんな予想を持っていたらしい。


……いや、待てよ。
でもコイツさっき、ほなとは付き合ってねぇって言ったよな。



俺に映画の見方指導なんてのを頼んできたのは、「最後にしたい彼女」と普通に映画を見たいから、って話だった。と思う。


そして今週、日滝久遠はほなと映画を見に来てた。俺と入った喫茶店にも入ってきた。


矛盾してないか。




「倉田さん」


日滝久遠が倉田を呼ぶ。


「なんや」


聞くからに刺々しい今にも掴みかかっていきそうな倉田の声に動じることもなく、日滝久遠は言葉をつづける。


「さっきの喫茶店で、妹さんが倉田さんを待ってます。倉田さんには彼女が事情を説明してくれます」

「なんやそれ、お前なめとんのか。妹に説明させて、てめぇは逃げようってか、あ?」

「おい、倉田……」

流石に切れすぎだろう、お前と諌めようと思ったところで、少しも臆した様子ない日滝久遠が俺の言葉を遮った。

「倉田さん、今は俺と大地さんと二人にしてもらえませんか」


本当に少しも悪気とか言い訳しようとかそういうのが感じられなくていっそ清々しいぜ、日滝久遠。



「俺と妹さんは付き合ってません。前にも言いましたけど、俺妹さんとはやってませんし、友達だからこれからも絶対そういう関係にはなりません。誓えます」



真剣な表情で言い募る日滝久遠に、倉田が一瞬焦った表情を見せて、それからそっと俺を覗き込むように見上げた。

俺も当然倉田を見下ろした。
当然だ。



今、なんつったよ、日滝久遠。
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