鏡合わせのミロワール

知己

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第3章 黒髪の侠女

第11話 『女晄石狩り』の正体

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 周りの建物からゾロゾロと武器を持った男たちが姿を現し、タスクとジャンを取り囲んだ。皆一様に黒髪黒眼の風貌をしており、タスクと同じ東洋人であることは間違いないと思われる。
 
「な、何でまた臨戦態勢なんだよ……⁉︎」
「…………」
 
 困惑するジャンに対し、タスクは無言で男たちの持つ武器や着衣に視線を向けている。
 
【————我々の住処すみかに何の用だ⁉︎】
 
 出し抜けに男たちの一人が声を発したが、ジャンには相手が何を言っているのか全く理解が出来ない。
 
「……ナニ言ってんのかサッパリ分かんねえ……。今のって、アンタの国の言葉?」
 
 前に立つタスクにジャンが問いかけるも、その首はゆっくりと横に振られた。
 
「…………いや、違う……」
「えっ⁉︎」
 
 驚きの声を上げたジャンにタスクが続ける。
 
「恐らく、彼らは『神州シンシュウ人』————」
「————シ、シンシュウ人……⁉︎」
「『神州』とはこの大陸の最東端に位置する国の名だ」
「つ、つまり……アンタの国のヤツらじゃねえってことかよ……⁉︎」
「ああ。お前たちからすると同じ東洋人でも、全く別の国だ」
【何をブツクサ言っている⁉︎】
 
 今度は別の神州人が二人の話に割り込んで来た。
 
「なんかお怒りっぽいけど、言ってること分かる?」
「……筆談なら多少は分かるかも知れないが、何を言っているのかは全く分からない」
「いや、分かんねえのかよ!」
 
 教科書通りのツッコミを見せたジャンにタスクが何やら自信に満ちた顔を向けた。
 
「この場は俺に任せろ。ジャン」
「あ、ああ……」
 
 うなずいたタスクはカタナを鞘に収めたまま一歩進み出た。
 
「……ニ、ニイハオ……?」
【…………】
 
 軽く右手を上げて言葉を発したタスクだったが、神州人たちの反応は無である。
 
「黙りこんじまったぞ。なんて言ったんだ……? アニキ」
「唯一知っている神州語で『こんにちは』と言ったつもりなんだが、発音が悪かったのか……?」
「……発音の問題じゃねえと思うけど……」
 
 タスクが首をひねる中、神州人たちはヒソヒソと何やら言葉を交わし始めた。
 
你好こんにちはだと……? 俺たちを馬鹿にしてるのか……⁉︎】
【しかし、あの男は私たちと同じ東洋人のようだが……】
【けど、後ろの間抜け顔はこの国の人間だぞ⁉︎】
【あいつはとうを持ってるじゃねえか! きっと俺たちを追い出すために雇われた用心棒に違いねえ‼︎】
【せっかく手に入れた住処を奪われてたまるか!】
【でも、アイツが戻って来るまで待った方がいいんじゃ……】
【相手はたった二人だけだ! 援軍が来る前に片付けちまおう‼︎】
【そうだ、そうだ‼︎】
 
 相談がまとまったのか男たちは再び武器を構えてタスクとジャンを取り囲んだ。
 
「……結局、こうなんのかよ……」
「ジャン、何があっても銃は撃つなよ」
「え、でもよ……」
それではどうしても血が流れる。俺が相手をしよう」
 
 言葉の終わりと共にタスクの白刃が露わになったが、その刃は先ほどのゴロツキたちを倒した時のように自らの方へ向けられた。
 
「……言葉の行き違いでこんな形になってしまったが、俺にはやらなければならないことがある……! ……許せ」
【…………‼︎】
 
 刃を返して構えたタスクの立ち姿に神州人たちが気圧けおされたように動きを止めたその時————、
 
【————待ちな!】
 
 さほど大きなものではないが、何故か腹に響く声が辺りに轟いた。
 
「なんだあっ⁉︎」
 
 驚いた様子のジャンが声のした方へ顔を向けると、いつの間に現れたものか十数メートル後ろに、自らの身長を優に超える長さのヤリらしき武器を担いだ女の姿があった。
 
 歳の頃は20代前半だろうか、女は長柄の武器の端を持って穂先をタスクたちへ向けて突き出した。その細身の身体からは信じられぬほどの膂力りょりょくである。
 
【あたしがいない間に、よくも……! ウチのヤツらに何の用だい⁉︎】
「…………」
「ヤリみてえな武器を持った女……、このネエちゃんが例の『女晄石狩りハンター』か……! ……一応訊くけど、あれアンタの姉ちゃんか……?」
 
 半ば答えが分かっている質問をジャンはタスクに投げかけた。
 
「…………いいや。ここが神州人の『こみゅにてぃ』だと分かった時点で望みは薄いと思っていたが、全くの他人だ……」
「……だよなあ……」
 
 落胆する二人をヨソに神州人の男たちが『女晄石狩りハンター』に声をかける。
 
【————リンファ! コイツら、俺たちをここから追い出そうとやって来やがったんだ!】
【……そういうことなら、この『青龍戟せいりゅうげき』の餌食にしてやっても構わないね……!】
 
 仲間にリンファと呼ばれた女は、まるで小枝を扱うように超重の得物をブンブンと振り回して構えて見せた。
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