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第5章 首都へ
第24話 タスクの葛藤
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次の目的地が首都・ロワゴールに決まり、買い出しに出たジャンを見送ったタスクは部屋を出て中庭へと足を進めた。
さほど大きくないホテルである。部屋の外に見える階段を降りると、黒髪の美女と一羽のハヤブサが楽しそうに戯れている姿が眼に映った。
黒髪の美女はまるで少女のように頬を上気させ、宙を舞うハヤブサを一心不乱に追いかけている。
タスクの脳裏で雛鳥だったシュウと戯れる姉・キョウカの幼い姿が重なる。
「姉————ミロワ」
タスクに声を掛けられたミロワは笑顔を見せて歩み寄った。
「たすく」
「じっとしていろ」
タスクは懐から手拭いを取り出し、ミロワの汗ばんだ額を拭ってやった。子供の頃は逆にキョウカがこうして稽古を終えた自分の汗を拭いてくれたものだ。
姉が妹に変わってしまったようでタスクが複雑な心境になった時、ミロワが白い歯を見せた。
「ま……また、あぃがと」
「…………ああ」
寂しげな表情を浮かべたタスクが近くのベンチに腰を下ろすと、それを見たミロワもちょこんと横に座る。
「…………」
うつむいてなにやら考え込むタスクの様子に気付いたミロワは下から覗き込むようにして見つめてくる。
「たすく……?」
「……すまん、なんでもない」
口ではそう言いながらも辛そうに額に手を当てるタスクにミロワも悲しげに眉を下げた。
「あたま、い、たい……?」
「……めろ……」
「ん……?」
「————やめろッ!」
突然声を荒げて立ち上がったタスクの剣幕にミロワがビクッと身体を震わせる。
「…………姉上の顔で……、姉上の声で……、俺を惑わせないでくれ……ッ」
「……たすく」
ミロワが心配そうにタスクの肩に触れると、タスクはその手を掴んでグイッと顔を近付けた。
「————お前は姉上なのか、そうじゃないのか、いったいどっちなんだ⁉︎」
「…………ッ」
「答えろ! 偽者ならば、なんの目的で俺の前に現れた!」
「ピィィィッ!」
「なんだ、シュウ————ッ⁉︎」
責めるようなシュウの鳴き声にタスクが反応すると、
「……い、いたい……!」
「あ……!」
タスクに力一杯掴まれた腕の痛みにミロワが苦悶の声を上げた。我に返ったタスクは腕を放してうなだれる。
「……すまん……! こんなことをするつもりじゃなかった……!」
タスクが再びベンチに腰を下ろして頭を抱えると、その肩にそっと触れるものがあった。
「……ごめん、なさい……」
「謝るな……、悪いのは俺の方だ……!」
「…………」
ミロワはゆっくりと首を振って、うなだれるタスクの頭を優しく撫でる。
「たすく、いいこ……」
「…………ッ‼︎」
肩を震わせたタスクはその手を振り払うことなく、ミロワの思うままにさせた。
◇
————3時間後、戻ってきたジャンが目撃したのは中庭のベンチに座って仲良くサンドイッチを頬張るタスクとミロワの姿であった。
「なんだよー……、人に買い物させといてお前らはのんきにランチタイムかよ。俺は昼メシまだだってのに……!」
「すまん、ジャン。お前の分も買ってきている。そら」
「…………」
ジャンは口元を尖らせながらもタスクからハムとチーズのサンドイッチを受け取った。早速サンドイッチを一口かじったジャンは、モグモグと咀嚼しつつタスクとミロワを交互に見回す。
「俺が……んぐ、出てる間……、なんかあったのか?」
「…………いや」
眼を逸らしてタスクが答え、ミロワは自分のハムをシュウに与える。
「しゅう、おい、しい……?」
「ピッ!」
タスクの様子にジャンは何か言いたげな表情を浮かべたが、再びサンドイッチにかじりつく。
「……ふーん。まあ、いいや。それより食い終わったら早えとこチェックアウトだ。スゲえモンを見せてやるよ」
「————ジャン、これは……!」
タスクの驚きの表情と声を堪能するようにジャンは得意げに腕を組んで何度もうなずいた。
ホテルの前に停まっているゼフィール号の側車が屋根付きの2列シートへとヴァージョンアップしていたのである。
「感謝しろよー? ワガママなアンタのために高いカネ払って改造してやったんだぜ?」
「……ああ、感謝する。だが、元手は俺が獲った『晄石』を売ったものだろう?」
「ま、そうだけどな」
眼を合わせたタスクとジャンが同時に笑みを浮かべると、興味深そうに眺めていたミロワが奥のシートに乗り込んだ。
「へへっ、ミロワちゃんも気に入ってくれたみてえだな」
「行こう、ジャン。運転を頼む」
続いてタスクが乗り込むと、ジャンはいつものゴーグルスタイルになり進化を遂げたゼフィール号にまたがった。
「人もハヤブサもバイクも燃料満タン! 行き先は首都・ロワゴール! 飛ばすぜ、お前ら‼︎」
かくして三人と一羽は次なる目的地へと進路を取った————。
さほど大きくないホテルである。部屋の外に見える階段を降りると、黒髪の美女と一羽のハヤブサが楽しそうに戯れている姿が眼に映った。
黒髪の美女はまるで少女のように頬を上気させ、宙を舞うハヤブサを一心不乱に追いかけている。
タスクの脳裏で雛鳥だったシュウと戯れる姉・キョウカの幼い姿が重なる。
「姉————ミロワ」
タスクに声を掛けられたミロワは笑顔を見せて歩み寄った。
「たすく」
「じっとしていろ」
タスクは懐から手拭いを取り出し、ミロワの汗ばんだ額を拭ってやった。子供の頃は逆にキョウカがこうして稽古を終えた自分の汗を拭いてくれたものだ。
姉が妹に変わってしまったようでタスクが複雑な心境になった時、ミロワが白い歯を見せた。
「ま……また、あぃがと」
「…………ああ」
寂しげな表情を浮かべたタスクが近くのベンチに腰を下ろすと、それを見たミロワもちょこんと横に座る。
「…………」
うつむいてなにやら考え込むタスクの様子に気付いたミロワは下から覗き込むようにして見つめてくる。
「たすく……?」
「……すまん、なんでもない」
口ではそう言いながらも辛そうに額に手を当てるタスクにミロワも悲しげに眉を下げた。
「あたま、い、たい……?」
「……めろ……」
「ん……?」
「————やめろッ!」
突然声を荒げて立ち上がったタスクの剣幕にミロワがビクッと身体を震わせる。
「…………姉上の顔で……、姉上の声で……、俺を惑わせないでくれ……ッ」
「……たすく」
ミロワが心配そうにタスクの肩に触れると、タスクはその手を掴んでグイッと顔を近付けた。
「————お前は姉上なのか、そうじゃないのか、いったいどっちなんだ⁉︎」
「…………ッ」
「答えろ! 偽者ならば、なんの目的で俺の前に現れた!」
「ピィィィッ!」
「なんだ、シュウ————ッ⁉︎」
責めるようなシュウの鳴き声にタスクが反応すると、
「……い、いたい……!」
「あ……!」
タスクに力一杯掴まれた腕の痛みにミロワが苦悶の声を上げた。我に返ったタスクは腕を放してうなだれる。
「……すまん……! こんなことをするつもりじゃなかった……!」
タスクが再びベンチに腰を下ろして頭を抱えると、その肩にそっと触れるものがあった。
「……ごめん、なさい……」
「謝るな……、悪いのは俺の方だ……!」
「…………」
ミロワはゆっくりと首を振って、うなだれるタスクの頭を優しく撫でる。
「たすく、いいこ……」
「…………ッ‼︎」
肩を震わせたタスクはその手を振り払うことなく、ミロワの思うままにさせた。
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————3時間後、戻ってきたジャンが目撃したのは中庭のベンチに座って仲良くサンドイッチを頬張るタスクとミロワの姿であった。
「なんだよー……、人に買い物させといてお前らはのんきにランチタイムかよ。俺は昼メシまだだってのに……!」
「すまん、ジャン。お前の分も買ってきている。そら」
「…………」
ジャンは口元を尖らせながらもタスクからハムとチーズのサンドイッチを受け取った。早速サンドイッチを一口かじったジャンは、モグモグと咀嚼しつつタスクとミロワを交互に見回す。
「俺が……んぐ、出てる間……、なんかあったのか?」
「…………いや」
眼を逸らしてタスクが答え、ミロワは自分のハムをシュウに与える。
「しゅう、おい、しい……?」
「ピッ!」
タスクの様子にジャンは何か言いたげな表情を浮かべたが、再びサンドイッチにかじりつく。
「……ふーん。まあ、いいや。それより食い終わったら早えとこチェックアウトだ。スゲえモンを見せてやるよ」
「————ジャン、これは……!」
タスクの驚きの表情と声を堪能するようにジャンは得意げに腕を組んで何度もうなずいた。
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「……ああ、感謝する。だが、元手は俺が獲った『晄石』を売ったものだろう?」
「ま、そうだけどな」
眼を合わせたタスクとジャンが同時に笑みを浮かべると、興味深そうに眺めていたミロワが奥のシートに乗り込んだ。
「へへっ、ミロワちゃんも気に入ってくれたみてえだな」
「行こう、ジャン。運転を頼む」
続いてタスクが乗り込むと、ジャンはいつものゴーグルスタイルになり進化を遂げたゼフィール号にまたがった。
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