天使と悪魔

猫幸世

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天使と悪魔

第9話

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上空を飛びながら杖で凛の居場所を探しているとソウの前に凛が現れた。

立ち止まりソウが険しい顔で見つめると凛が口を開いた。 

「姿が変わりましたね」

「君も姿が変わったな普通の身なりになってる…身なりだけは…」

「身なりだけ」

「心はリンそのものだ、悪い心を持っている」

「俺に用事があるんでしょ、何ですか?」

「わかるだろ」

「蒼さんは渡さない、陽菜にそう伝えてください」

そう言って凛が背を向けるとソウは杖で黒い羽と白い羽の光線を放ち威嚇した。

「……」

「俺の命を奪う気ですか」

背を向けたまま凛が口にするとソウが口を開いた。 

「陽菜は悲しむかもしれないが、お前が悪い心を捨てないと言うなら俺はお前の命を奪って蒼を陽菜の元に連れていく」

「おもしろい」

そう言って振り返ると凛も手から黒い羽の光線を放ち威嚇した。

「悪い心を捨てるつもりないみたいだな」

「せっかく蒼さんを手に入れたのに手放すわけないだろ」

そう言って凛が手から再び黒い羽の光線を放つとソウは杖で光線を防ぎ上空の戦いが始まった。  

その頃、蒼は自宅のベッドで眠っていた。  

ー夢の中ー 

「ここはどこだ?」

草原の中を立ったまままわりを見渡していると白一色の長い髪に長い服そして背中に白い羽が生えた女性天使ヒナが現れた。

「天使?」

蒼がじっと見つめると黒一色の長い髪に長い服そして背中に黒い羽が生えた男性悪魔ソウが現れると蒼は驚いた。 

「あの男性、俺にそっくりだ」

「ソウ」

「ヒナ」

見つめ合いその後、口づけを交わすヒナとソウを蒼がじっと見つめていると女性天使のリンが現れた。 

「天使と悪魔が愛し合うなんて汚らわしい」

「リン、どうしてここに」

ヒナとソウが目を向けるとリンが叫んだ。 

「ヒナとソウが掟を破った皆、出てきて」

リンの合図と共に男性悪魔のイツキとレンと女性天使のウタが現れ戦いが起こり天使と悪魔が消滅すると蒼は夢の中から目を覚まし身体を起こした。

「凛が…」

ベッドからおりると蒼の姿が黒一色の長い髪に長い服そして背中に黒い羽が生えた姿に変わった。

その後、蒼は壁に近づき手を向けると力を送り穴を開けた。 

その瞬間、陽菜と詩と樹と蓮が居る陽菜の寝室の壁に穴が開いた。 

「何だろ」

「近づくと危険だよ」

穴に近づく陽菜に詩が声をかけると陽菜は無言で穴に手を向けた。 

その時、陽菜の姿が白一色の長い髪に長い服そして背中に白い羽が生えた姿に変わった。

驚いた顔で詩と樹と蓮が見つめると陽菜は穴から離れ詩に向かって口を開いた。 

「蒼さんが来る」

「え…」

「詩」

陽菜が口にしようとしたその時、樹が口を開いた。 

「誰か来る」

樹の言葉と同時に陽菜と詩と蓮が穴に目を向けると蒼が穴から現れた。

「……」

蒼が目を向けると陽菜が口を開いた。 

「記憶がないと聞いてたんですが」

「夢の中で天使と悪魔が消滅した出来事を見たよ」

「蒼さん」

「天使のリンが愛し合う天使のヒナと悪魔のソウの中を引き裂き掟を破ったと言って天使と悪魔を戦わせ消滅させた」 

「凛が繰り返そうとしている」

「止めないと」

「ソウさんが凛と会ってる」

「令和時代の凛を助けられるのは俺と陽菜さんだけだ」

「……」

無言で陽菜が頷くと詩が口を開いた。 

「陽菜、危険じゃないのか」

「詩、すぐ戻るから樹さんと蓮さんとここに居て」

「無事に戻ってこいよ」

「……」

優しく微笑みながら陽菜が頷くと蒼が口を開いた。  

「陽菜さん、行きましょう」

「はい」

返事をすると陽菜と蒼は穴に近づき入っていくと並んで歩いた。 

それから暫くして陽菜が足を止めると声をかけた。 

「蒼さん」

「……」

名を呼ばれ足を止めると蒼は振り返り目を向けた。

「どうしたんですか?」

「今、話すべきじゃないけど伝えたくて…無事に解決したら俺と付き合ってください」

「……」

無言で陽菜に近づくと蒼は陽菜を抱きしめ口を開いた。 

「天使のヒナさんと悪魔のソウさんの分まで幸せになろう」

そう言って陽菜をギュっと抱きしめその後、陽菜の顔を見つめると口づけを交わした。 

そして陽菜と蒼は上空で戦っているソウと凛の元に急いだ。 
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