異世界人と竜の姫

アデュスタム

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第1章 フェンリル

07 神殺し

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・・2日目・・

  朝目覚めて上を向く。
「知らない天井……か。ふう。まさかこのセリフを言うことがくるとはな……」
 横を向いて窓を見た。
 カーテンの隙間から柔らかな日差しが室内を明るく照らしている。その隙間から見える風景は昨日のままだった。
「……やっぱり夢じゃなかった。ここは、異世界なんだ」
 少し物思いにふけるが気を取り直し身体を起こす。
「なんとかなるさ……たぶん。……。さて、起きるか」
 そう呟くと勢いよくベッドから降りると両手を上に上げて伸びをする。
「う~ん。ふう」
 手足の関節を動かしてほぐしているとドアをコンコンとノックする音がした。
「おはようございますコースケ様」
 と専属侍女のミュゼリアの声がした。
「ちょっと待って。今開ける」
 ポリポリと頭をかきながらドアの鍵を開けミュゼリアを室内に入れた。
「おはようございますコースケ様。よくおやすみになられましたか?」
「おはようミュゼ。ああ、よく寝たよ。ベッドもふかふかですぐに寝付いたんで疲れもとれた」
「それはよかったです。さ、顔を洗ってきてください。朝食の準備をいたします」
「ああ」
 洗面所に行き歯を磨き顔を洗う。この世界にも歯ブラシはあったが歯磨粉とかはなかったがけっこうきれいに磨けた。
 そしてミュゼリアが用意してくれた食事を採り、今日どうしたらいいか尋ねるとエプロンのポケットからなにやらメモを取り出した。
「はい。えーとですね。本日は私が城内を案内させていただきます。そして昼食は城内の食堂で採っていただきます。そこは一般の者が使う食堂でいろんな方がおられるんですよ」
「いろんな人?」
「はい。私たち侍女やお掃除の方、騎士団の方々に魔法師隊の方々とか。多種多様の種族の方々がおられるんですよ」
「多種多様の種族?」
「はい。私たち竜族とか、えーと、精霊族とか翼人族とかですね。あとは異族間に生まれた亜人とかですかね」
「へえ、そうなんだ。俺のいた世界には人間以外の種族はいなかったから楽しみだ」
「そうなんですか、コースケ様の元の世界には人族しかいなかったんですか?竜族とか精霊族とか亜人もですか?」
 大きく目を見開いて口に手を当てるミュゼリア。
「ああそうだよ。それらの種族は空想の中ではいたけど実際には存在しない種族だよ。だからここに来て人以外の種族を見てびっくりするやらうれしいやらで」
 といって頭をかいた。
「そうなんですか。人族以外がいない世界なんて私には考えられないですけど」
 そう言って顎に人差指をあてた。
「えーとそれから午後の予定ですけど。昼食のあとは再び城内をご案内させていただきます。そして夕食は昨夜同様陛下との会食となっております。以上が本日の予定となっておりますが何かご質問はございますでしょうか?」
 功助に向き直ると軽く頭を下げた。
「うんわかった。午後からの…、いやその前に、今日の夜の会食は誰が来るの?」
「まだわかりません。お昼過ぎになればその人のところに連絡がきますので。王妃様が決められるそうなんですがその日のひらめきで決めるってこの前言っておられました」
「そうなんだ。それと、できれば午後からの予定はシオンと遊ぶことにしてもらえないだろうか?」
「姫様とですか?たぶん可能だとは思いますが、バスティーア様にお尋ねしてきます」
ちょっと待っててくださいねといって足早にー部屋を出て行った。
 待つことしばし、再びドアをノックする音がしてミュゼリアが帰ってきた。
「お待たせしました。バスティーア様から了承を得ましたので午後からは姫様と拝謁することとなりました」
「ありがとうミュゼ」
「いえいえ。ではそろそろ城内の案内をさせていただきますがよろしいでしょうか?」
「うん。よろしくお願いします」
 ミュゼリアが部屋のドアを開け功助が廊下に出ようとした時。
 ’ガウゥゥゥゥッ!!’
 それは獣の咆哮か。この巨大な城まで震えさせたけたたましい声に功助とミュゼリアは振り返る。そして窓の近くまで行くと恐る恐る外を見た。ここから約200メートルほど離れた林の一画からそいつは生えていた。生えていたという表現はかなりおかしいが、そう、生えているように見えた。その林の一画には縦に空間の裂け目があった。その裂け目からそいつは獣の首から先だけを出していた。
 少し離れているからここからだとよく見えないが大きさはライオンとか虎ぐらいだろうか。漆黒の体毛に覆われたそれはその裂け目から這い出そうとしているようだ。
「あれは?」
 ミュゼリアを見ると両手で口を押えガタガタと震えていた。
「ミュ、ミュゼ。大丈夫か?」
「は、はい……。で、でもなんであれが……あんなところから……」
 再び窓の外を見ると何人もの騎士や兵士が集まってきているところだった。あの咆哮が聞こえたのだろう続々とやってくる。
 青く輝く鎧をつけたハンスの所属している青の騎士団、黒いローブを着た魔法師の人たち、緑色の鎧を付けた騎士、そして数多くの兵士。それらが続々とあの獣の周りに集結している。
 獣は身体をくねらせ早く裂け目から出ようとしているようだ。頭と前足が外に出ているように見える。
 外に出してはなるものかと剣や槍、弓で攻撃している騎士たち。しかしそれらの攻撃はことごとく跳ね返され獣にはまったく効いていないように見える。
 魔法攻撃も同じようで物理攻撃よりは多少効いてはいるようだがたいしたダメージはないようだ。
「な、なあミュゼ。あの獣はなんなんだ?」
「あ、あれはフェンリル。神殺しのフェンリルです。あ、あんな恐ろしい魔獣が…。でもなんか小さいような…」
 あれがフェンリルなのかと黒い獣を見つめる功助。確かシオンベールを襲ったのもフェンリルだと思い出す。窓の向こうに視線を戻しよくその顔を見ると眉間から左頬にかけて傷があった。
「き、傷がある!あ、あいつは、あいつがシオンを…」
「恐らくそうだと思います。あのフェンリルが姫様を襲ったのだと。でもなんであんなところから出てきたのか。フェンリルにはそんな魔法は使えなかったと思うんですが」
 兵士たちがバラバラに攻撃していたが徐々にその攻撃方法がまとまってきた。いわゆる陣形というのだろうか。前衛に剣士、その後ろには長槍、そして魔法攻撃隊、弓部隊、そして後方には治癒術師。
 剣士が数名で襲いかかり長槍部隊が追従する。弓や魔法攻撃で援護しまた剣士が突っ込む。とヒットアンドアウェイをしかけている。
 しかし目に見えてのダメージは与えることはできていないようだ。
「ちょっと行ってくる」
「は?」
 そう言うと功助は部屋の外に飛び出し、廊下を走り出した。
「コ、コースケ様。待ってくださーい!」
 走るためにスカートを少したくし上げたミュゼリアが追いかけてきてあっと言う間に追いつかれた。
「は、早いなミュゼ」
「はい。これでも脚力には自信あるんですよ」
 と笑みをこぼした。
 功助は無意識にチラッと下を見た。そこにミュゼリアの白く健康的な素足が目に入った。走るためにスカートをたくし上げたのだろう膝の少し上まで白い足が露わになっていて少しドキッとした。
 見られたことに気付いたのだろうミュゼリアはお転婆娘のようにニコッと笑った。
「にゃはははは。以前にも同じようなことをしてミーシェスカ侍女長に怒られたことがあるんですよ。黙っててくださいねコースケ様」
 と赤い舌をペロッと出した。
「ああ。わかったよ。内緒にしとく」
「ありがとうございます。で、コースケ様。どこに行かれるのですか?」
「フェンリルのところ」
「へ?そ、それはやめた方がいいかと…」
「いや。行く」
「で、でも…」
「行く」
「し、しかし…」
「行く」
「…わかりました。お供いたします」
「え?別にミュゼは行かなくても……」
「行きます」
「でも」
「行きます」
「しかし」
「行きます」
「……わかったよ、二人で行こう」
「はい」
 二人はスピードをあげて城の外に向かって走った。

 城の外に出るとまだたくさんの人たちが城の反対側に向かって逃げていた。
 城内でもたくさんの人たちが逃げていたがまだ城の外にもこんなにたくさんの人たちがいたとは思わず少し狼狽した。しかしその避難行動の落ち着きさに驚いた。
 下級の騎士や兵士が誘導していてなかなかの避難行動になっている。功助は避難訓練とかしてるのかなと場違いなことを考えてしまい自分の頬をパチンと叩いた。
「行くぞミュゼ」
「はい」
 二人は避難する人たちをかわしフェンリルのいる林の方に再び駈け出した。
 あと少しというとこで前方に隠れるように木と木の間に立つ数人の人影を見つけた。
ミュゼリアも気づいたのだろう、お互い不思議に思い徐々にスピードを落として近くにあった何かの銅像の陰に隠れた。
「誰でしょうか?」
「わからない…、いや待てよ、あれってあの、えーとガマガエルじゃなくて、えーと」
「あっ!あれは!あの車に乗っている方、あの方はフログス伯爵です」
 そう言って指を差した方向にはあの人力車のようなものに乗ったブクブクのフログス伯爵がいた。
「そうだそうだ、フログス伯爵だ。でも何してんのかな。思わず隠れたけど」
「そうですね。そうだ効いてみましょうか」
「聞くって誰に?」
「ふふふ。すみませんコースケ様。ちょっと静かにしててくださいますか」
 そう言うとミュゼリアは髪の中にその細い指を差し入れるとかわいらしい耳をだした。そして掌を当てて聞き耳をたてた。目を瞑り耳に集中し時折眉間を寄せたと思えば目を見張り伯爵たちを睨んでいる。
 少しの間そうしてると城の方向から声がした。こちらに向かって走ってくるのは避難誘導の兵士だった。
「フログス伯爵ではありませんか。そのようなところで何をされてるのですか。ここは危険ですお早く非難願います」
 振り向いた伯爵たちはチッと舌を鳴らすと非難する旨を兵士に告げた。
「わかった。すぐに避難する。お前もここから先には行くな。これより先には誰もおらぬ故」
「そうですか。しかしまだ一般人がいるやもしれませんので…」
「案ずるなこれより先には確かに誰もおらぬ。安心するがよい」
 伯爵のお付きの者がそういった。
「しかし」
 兵士が確認に行こうとすると次は伯爵が声を出した。
「お前はこのフログスのいうことが信じられぬのか。大丈夫だと申しておるであろう」
「はっ。申し訳ございません。それでは自分と共に避難願います」
「うむ。わかった」
 そういうと一行は城の方に避難していった。フログスの鞭が奴隷を叩く音を残して。
 そして功助たちは銅像の影から一行を見送った
 フログス伯爵たちのいたところを見ると、その向こうの方に木々に見え隠れしてフェンリルの姿とそれと戦う騎士たちの姿が見えた。
「でミュゼ。何が聞こえた?」
 眉間に皺を寄せているミュゼに尋ねた。
「はい。実に腹立たしく、怒りに我を忘れそうです。こんなに他人を憎悪したことは初めてです」
 ミュゼリアは胸の前で拳を握りわなわなと震えている。
「どうしたんだ?何を話していたあいつらは」
「はい。あのフェンリルも姫様の人竜球を壊したのもフログス伯爵の策略です」
「なんだって!?」
 思わず大きな声を出してしまう。ミュゼリアも涙を流し唇を噛んでいる。
「…それで、あいつらは何て?」
「はい」
ミュゼリアは涙を拭き先ほどのフログス伯爵たちの会話を話出した。

「なぜだ、なぜ今フェンリルが出現したのだ。まだ6日も早いではないか!これではワシらの計画が水の粟ではないか!何をしていたのだダンニン殿は!」
「はっ。お怒りごもっともでございます。でもご心配不要です。現在あのフェンリルを再び亜空間に戻す術式を展開中ですので間もなくこの場から消えることでしょう」
「それは真なのだな。今あのフェンリルに何かあれば何もかも無駄になるのだぞ」
「はっ。承知しております」
「なら良いのだが。……。6日後には竜化したシオンベールが凶暴化する。そしてあのフェンリルを呼出させこの白竜城を我らがものとするのだ。わかっておるな」
「はっ。そのために我らはフログス様に仕えております」
「ふふふふふ。今に見ておれ。あのシオンベールのワシを見下して見る卑しい目よ。婚姻を申し込んでおるのに断りよって。ただそこらにいるなんの約にもたたぬ動物たちをなぶり殺しにしたり、使用人の女たちを辱めたりしただけのことであろうに。卑しい動物や使用人をどうしようが自由であろうに。そんなとるに足らぬ者たちに情をかけるとはたわけた女よ」
「そうでございます。フログス様を拒絶するとは愚かな女です」
「おぬしもそう思うであろう。あのフェンリルにシオンベールを襲わせうまく人竜球を壊すことができた時はさすがのワシも跳びあがってしもうたわ。おかげでまた膝を痛めてしもうた。これもまたシオンベールのせいじゃ。憎さが増したわ。ぐわははは」

 そのあと兵士が来たので会話はそれだけになったようだ。
「畜生め。あのガマガエル野郎。そんなことしたらシオンが怒るに決まってるだろがバカかあのガマガエルは。しかし腹竜なあいつら」
「そうですよコースケ様。どうしましょうか?すぐにバスティーア様に報告しましょうか」
「いやちょっと待って。ここから先に兵士を行かせなかったことが気になる。行ってみるかミュゼ」
「えっ、そうですね。わかりました行きましょう」
 そして二人は騎士たちとフェンリルとの戦場に向かって走りだした。

 約50メートルほど走ったところで功助は妙な違和感を感じた。
「あれ?なんだこれは」
「どうしたんですかコースケ様」
 急に立ち止まった功助に気付いたミュゼリアは戻ってきて功助の顔を覗き込んだ。
「ん?なあミュゼ。何か感じないか?」
「へ?何かとは何ですか?私には何も感じないんですが」
 首を傾げ周りを見るミュゼリア。
「ちょっと待ってて」
 功助は少し後に戻るとまたゆっくりと前に進んだ。
「ここ。ここになんかエアーカーテンのようなものがある」
「えあかあてん?」
「あっ、えーと、空気の壁のようなものがあるんだけど」
 ここ、ここと功助は手のひらでそのエアーカーテンのようなものを叩いた。
「どこですか?ここ?」
ミュゼリアが功助の示したところに手の平を向けるがわからないようだ。
「えー…。ん…?これ…かな…?…なんとなくわかるような…わからないような…」
「そっか?俺にははっきりわかるんだけどな。なんなんだろこれ」
 首を傾げるミュゼリアだがもしかしてと功助を見る。
「もしかしてそれって結界じゃないでしょうか」
「結界?」
「はい。フログス伯爵のお付きの方が言ってましたけど、亜空間に戻す術式を展開中だと。それがその術式を保護もしくは起動させるための結界ではないでしょうか」
「そうか結界か…。うん、「そうかもな。ということはこの結界をたどっていけばもしかしたら魔法師が見つかるかもしれないな」
「うーん。見つかるかもしれませんが、たぶん見つからないのではないかと「
 と人差指を顎に当てて考えるミュゼリア。
「なんで?」
「亜空間への裂け目を作り出すには相当の魔力が必要のはずです。おそらく5人や10人の上級魔法師が必要でしょう。しかし上級の魔法師ともなれば数は少なく集めるのはほぼ不可能だと思われます。その代替として恐らく魔石が使われてるのだと推測します。魔石だとまだ上級魔法師を集めるよりは容易ですからね。まあ魔石といえどもフェンリルを亜空間に戻すほどの魔力がたまっているものは少ないと思いますが。魔力が溜まってる魔石を数多く集めればなんとかなるのではないかと思います」
「魔法や魔石のことはまったくわからないけど、ミュゼが言うならそうなんだろうな。ということは、その魔石か魔道具を壊せばフェンリルは逃げられないということだな」
「そうなると思いますが…。でも…」
「でも?」
 ミュゼリアの不安に揺れる瞳が功助を見る。
「亜空間に逃げられないということはこのまま戦わなければならないということですよね。戦って勝てるんでしょうか…」
 功助は遠くに聞こえるフェンリルの咆哮と兵士たちが戦っている剣の音を聞きながらこう言った。
「たぶん倒せると思う。さっきミュゼはあのフェンリルを見たときに小さいかもって言っただろ」
「は、はい。確かに言いました。あの個体は小さいです。本来ならフェンリルは10メムは下らないはずです」
「メム?長さの単位かなそれって」
「はい。そうですが…」
「まあいいや。で、その小さいフェンリルなら恐らく倒せるんじゃないかと俺は思うんだけど、どう思う?」
 また顎に人差指を当てて考えるミュゼリア。
「うーん。倒せるのではないかと私も思いますが…」
「よし。となれば早速魔道具をぶっ壊しに行くぞ。そして兵士たちの加勢に行くぞ。俺がどれだけ戦えるかわからないけど」
 と口にしたとたん功助は’あれ?’」と自分の言葉に驚いた。
 なぜ加勢すると言ったのか、なぜ戦うと言ったのか。この異世界に来た昨日の草原でシオンベールに追いかけられ空高く放り上げられそして地面に落下し激突した。だが傷一つもなかった。それがなぜなのか、なぜそんな力が自分にあるのか、もしかしたら自分に凄い力が目覚めたのか。わからない。わからないけど、もし自分にそんな力が、誰かを助けることができる力があるなら、それを使って助けたい。でも、自分にできるのか、どうすればいいのか。
「はい!わかりました。魔具をぶっ壊しましょう!そして白竜軍に加勢しましょう!やってやりましょうコースケ様!私、フログス伯爵を絶対許しません!」
 胸の前で拳を握るミュゼリア。
 功助はミュゼリアの強いまなざしを見て心の中で苦笑する。
 そうだ、自分にできることをしよう。功助の心は決まった。
「よし!そうと決まればこの結界をたどっていくぞ」
「はい」
 功助たちはこのエアーカーテンのような結界を確認しながら魔石か魔道具かわからないが捜索を開始した。
 捜索をし始めて5分。何かの銅像の台座に仕掛けられていた魔道具を見つけ出した。ちなみに何かの銅像はフログス伯爵が寄贈したというカエルの銅像だった。趣味が悪いと評判らしい。
 その魔道具は円筒形をしていて仲は空洞でソフトボール大の魔石がその筒の中に浮いている。振っても叩いてもその魔石は出てこずで、仕方ないので功助の拳で筒を破壊した。その瞬間エアーカーテンのような結界は少し弱まったようだ。
 それから4つほど同じ形の魔道具を破壊した。そのうち2つはミュゼリアが破壊した。もう徹底的に粉々にそして白い灰になるまで焼き尽くした。そしてとうとう結界が消えたのを確認した。ちなみにあとの4つの魔道具が隠されていたのはやはりカエルやイモリの銅像だった。ミュゼリアはついでとばかりカエルの銅像もぶっ壊し「ふんっ!くたばれ!」と捨て台詞をはいた。よっぽど腹に据えかねてるようだ。
「あっ。わかりました今。結界が消えた時にかすかな魔力の波動を感じました」
「よし。これで結界は消えた。あとはフェンリルを倒すだけだ。さあ行くぞミュゼ」
「はい、わかりました。行ってフェンリルを倒しましょう」
 功助とミュゼリアは再度駈け出した。
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