56 / 64
(24) 迎えが来た
しおりを挟む
太は朝の食卓にソロリと座って母親を見た。何時もは説教してくるのに、何も言わない。泣き腫らした顔で無言だ。
「太、何も言うな。いいな。」
小声で耳打ちする父親。溺愛している弟が離婚していた。何の相談も無く。かなりの衝撃だったらしい。母親は別れた妻も可愛いがっていたし。
(芙蓉さん、どーすんの。お母ちゃんは?)
どうせ、分かる事なのに。黙って、居なくなる気だったのか。やりそうな人だ。何とかしなくちゃ、僕が!
父親と母親が出勤すると、太は部屋を飛び出した。
結局、夜は眠れなかった芙蓉。美女たちが作ってくれた朝食も手をつけられなかった。心配そうに見られると、余計に気が沈む。
(本当、僕って駄目な人間なんだ。姉さんを泣かせてしまったし。)
自分さえ居なくなれば、皆が傷つかない。甘い考えだったんだと、今になって気がついた。遅いけど。
「芙蓉にいさんーー!」
そっとしておいてほしいのに、邪魔をしに来たのは可愛い甥っ子。
「ね、行こう。お母ちゃんに謝りに!」
そう言って、腕を引く。止めてくれ、そんな気にならないんだ。それをやると、全部を話さないといけなくなる。
どうして、離婚する気になったのかって。
「出来ない、ふーちゃん。」
「何でだよ、出来るって!」
一生懸命、説得する少年。芙蓉は泣きたくなった。1人で立っているだけで精一杯なんだ。誰かの事なんか考えてられない。
ビューーーン!
ベランダから、飛び込んでくるロングドレスの若い女。髪を振り乱して、リビングを滑るように走る。
「離れなさい、クソオヤジ!」
ガブリエルが、前に立ちはだかる。魔法の呪文に、魔女は動けなくなった。だが、次が飛び込んでくるのだ。
「お前たちには用は無い。渡せ、その子を!」
「何なの?太くんが、狙いなのね。渡すもんですか。クソオヤジ!」
エリザベスが、剣を向ける。剣が炎を上げて、魔女を切り捨てた。すると、ベランダに男が現れたのだ。
「やはり、手にあまるか。頼りにならないな、私がやるしかないようだ。」
それは、黒厳だった。魔女が太を手に入れるというから任せてみれば、この有り様。情けない。
黒厳の革靴が、ゆっくりとリビングのフローリングを踏みしめる。
「さあ、太くん。私と行こう。」
太は、怯えて芙蓉にしがみつく。何なのだろう、この人は。僕を呼んでるけど頭がおかしいんだ。
エレンが、叫んだ。
「駄目だわ、魔法が効かないわ。彼と太くんが共鳴してる。一緒なのよ!」
どうしてなのか、黒厳と太の波動が呼び合っているのだ。ガブリエルは、懸命に呪文を唱え続けた。
「クソオヤジ、クソオヤジ、クソオヤジ!魔法が役に立たないのよ!」
同じであれば、一心同体である。太を守って黒厳を攻撃する事は出来な。魔法がガードされていた。
太の体が浮き上がる。吸い込まれるように、黒厳の腕へと飛び込んだ。太は、救いを求めた。
「助けて、芙蓉にいさん!」
芙蓉は立ち上がって、黒厳に走り寄ると太を奪おうとする。だが、弾かれて壁へ飛ばされるのだ。黒厳は、せせら笑う。
「この子は、私の物なのだ。誰も邪魔は出来ない!」
そして、ベランダへと歩き姿を消した。太を腕に抱いて。ガブリエル達は、立ちすくむ。自分たちの無力さに打ちのめされながら。
太が救いを求めるのを目にしながら、助ける事が出来なかった。
「太、何も言うな。いいな。」
小声で耳打ちする父親。溺愛している弟が離婚していた。何の相談も無く。かなりの衝撃だったらしい。母親は別れた妻も可愛いがっていたし。
(芙蓉さん、どーすんの。お母ちゃんは?)
どうせ、分かる事なのに。黙って、居なくなる気だったのか。やりそうな人だ。何とかしなくちゃ、僕が!
父親と母親が出勤すると、太は部屋を飛び出した。
結局、夜は眠れなかった芙蓉。美女たちが作ってくれた朝食も手をつけられなかった。心配そうに見られると、余計に気が沈む。
(本当、僕って駄目な人間なんだ。姉さんを泣かせてしまったし。)
自分さえ居なくなれば、皆が傷つかない。甘い考えだったんだと、今になって気がついた。遅いけど。
「芙蓉にいさんーー!」
そっとしておいてほしいのに、邪魔をしに来たのは可愛い甥っ子。
「ね、行こう。お母ちゃんに謝りに!」
そう言って、腕を引く。止めてくれ、そんな気にならないんだ。それをやると、全部を話さないといけなくなる。
どうして、離婚する気になったのかって。
「出来ない、ふーちゃん。」
「何でだよ、出来るって!」
一生懸命、説得する少年。芙蓉は泣きたくなった。1人で立っているだけで精一杯なんだ。誰かの事なんか考えてられない。
ビューーーン!
ベランダから、飛び込んでくるロングドレスの若い女。髪を振り乱して、リビングを滑るように走る。
「離れなさい、クソオヤジ!」
ガブリエルが、前に立ちはだかる。魔法の呪文に、魔女は動けなくなった。だが、次が飛び込んでくるのだ。
「お前たちには用は無い。渡せ、その子を!」
「何なの?太くんが、狙いなのね。渡すもんですか。クソオヤジ!」
エリザベスが、剣を向ける。剣が炎を上げて、魔女を切り捨てた。すると、ベランダに男が現れたのだ。
「やはり、手にあまるか。頼りにならないな、私がやるしかないようだ。」
それは、黒厳だった。魔女が太を手に入れるというから任せてみれば、この有り様。情けない。
黒厳の革靴が、ゆっくりとリビングのフローリングを踏みしめる。
「さあ、太くん。私と行こう。」
太は、怯えて芙蓉にしがみつく。何なのだろう、この人は。僕を呼んでるけど頭がおかしいんだ。
エレンが、叫んだ。
「駄目だわ、魔法が効かないわ。彼と太くんが共鳴してる。一緒なのよ!」
どうしてなのか、黒厳と太の波動が呼び合っているのだ。ガブリエルは、懸命に呪文を唱え続けた。
「クソオヤジ、クソオヤジ、クソオヤジ!魔法が役に立たないのよ!」
同じであれば、一心同体である。太を守って黒厳を攻撃する事は出来な。魔法がガードされていた。
太の体が浮き上がる。吸い込まれるように、黒厳の腕へと飛び込んだ。太は、救いを求めた。
「助けて、芙蓉にいさん!」
芙蓉は立ち上がって、黒厳に走り寄ると太を奪おうとする。だが、弾かれて壁へ飛ばされるのだ。黒厳は、せせら笑う。
「この子は、私の物なのだ。誰も邪魔は出来ない!」
そして、ベランダへと歩き姿を消した。太を腕に抱いて。ガブリエル達は、立ちすくむ。自分たちの無力さに打ちのめされながら。
太が救いを求めるのを目にしながら、助ける事が出来なかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
53
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる