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(27) 王子の為だから
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ギルバート王子の婚約者だったのは、聖女マリーナ。彼女は、ギルバート王子との婚約を解消して隣国の王子と婚約したのでした。
「王様の命令じゃ、仕方ないのよ。隣国が聖女を欲しいと言うから、政略結婚ね。子供の時に親が決めた婚約だけど、お似合いのカップルだったのに。」
そう教えてくれるのは、お城の侍女でした。幼い時から結婚すると決まっていた相手は、国の為に隣国へ嫁ぐ事になったそうです。
ギルバート王子は、時おり、首から下げた鎖を見つめている。それが、婚約指輪を掛けている物だと太は気がついていた。
「王子さまは、聖女さまを忘れられないの?」
そう聞くと、ギルバート王子は辛そうな目をした。
「幼い時から、私にはマリーナだけだった。」
忘れられないようです。太は、何とかしてあげたいと考えた。
神殿で暮らしているという聖女さま。太は会いに行ってみた。
聖女の中でも、大きな力を持つという大聖女の地位に居るマリーナ令嬢は、お忙しいようだった。
「私と隣国の王子様との婚礼は、もうすぐなのよ。急いで下さらない。私は、あの国の王妃になるんですもの。支度は、それに相応しくしたいわ。」
彼女は、自分の婚礼に夢中。その様子は、嫌々、嫁ぐようには見えなかった。
「幼い時に決められた婚約だったから、従うしかなかったのよ。王位に着けない第2王子なんて、意味ないわ。婚約が破棄されて良かった!」
反対に喜んでいるようです。第2王子の事なんか欠片も思い出さない。計算高い令嬢でした。
これは、困った。駆け落ちでもしてくれないかと甘い期待をしていた太は、庭から盗み聞きして意気消沈。
(僕に出来る事って、ないのかな。)
これ以上、打ち沈む王子を見ていられない。どうにかしたい。藁でも掴むつもりで、占いの店へ行ってみた。
「ねえ、お婆さん。」
「お姉さんと、呼んどくれ。80歳までは、娘だじょよ。」
「え、そーなの?ごめんね、お姉さん。」
「素直なのかアホなのか。」
「え、何?」
「こちらの事じゃい。で、相談の内容は?」
知り合いが別れた婚約者をわすれられない。どうにか、できないだろか。という話に、老婆は頷いて太を何故か見回した。
「ほう、いい身体だわい。」
「何で、身体なのさ?」
「こちらの事じゃい。「願いを叶える石」てのがある。」
「へー、そんなのが。何処に行けば有るの?」
「魔の森じゃわい。丁度、参加メンバーを集めておる。わしが、紹介してやろうかな。」
「本当?ありがとう!」
何と、その「願いを叶える石」を採集できる場所へ行くダンジョンのチームへ入れてもらえる事に。幸運だと、太は喜んだ。
現実とは、聞いていた物とは違ってたという事が起こりやすい。それが、太にも起こった。
「ちょっと、何するんだよ。どうして、僕を縛るの?」
紹介されたチームと待ち合わせて魔法使いに魔の森まで飛ばされる。魔力で移動した場所は、太には覚えのある処だった。捨てられたからだ。
チームの男が、いきなり、太を縄で縛り出す。
「占いの婆さんは、いい餌食を探してくれたよ。お前、召喚された勇者だよな。これから行くダンジョンの魔物は、勇者が好物なんた。誘き寄せる餌に最適だ!」
なんと、太は餌として売り渡されたのだ。騙されたと気がついた時は、もう遅い。
肩に担(かつ)がれて、ギルドの「危険、入るな!」の札とロープで塞がれているダンジョンの穴へと運ばれて行くのだった。
「王様の命令じゃ、仕方ないのよ。隣国が聖女を欲しいと言うから、政略結婚ね。子供の時に親が決めた婚約だけど、お似合いのカップルだったのに。」
そう教えてくれるのは、お城の侍女でした。幼い時から結婚すると決まっていた相手は、国の為に隣国へ嫁ぐ事になったそうです。
ギルバート王子は、時おり、首から下げた鎖を見つめている。それが、婚約指輪を掛けている物だと太は気がついていた。
「王子さまは、聖女さまを忘れられないの?」
そう聞くと、ギルバート王子は辛そうな目をした。
「幼い時から、私にはマリーナだけだった。」
忘れられないようです。太は、何とかしてあげたいと考えた。
神殿で暮らしているという聖女さま。太は会いに行ってみた。
聖女の中でも、大きな力を持つという大聖女の地位に居るマリーナ令嬢は、お忙しいようだった。
「私と隣国の王子様との婚礼は、もうすぐなのよ。急いで下さらない。私は、あの国の王妃になるんですもの。支度は、それに相応しくしたいわ。」
彼女は、自分の婚礼に夢中。その様子は、嫌々、嫁ぐようには見えなかった。
「幼い時に決められた婚約だったから、従うしかなかったのよ。王位に着けない第2王子なんて、意味ないわ。婚約が破棄されて良かった!」
反対に喜んでいるようです。第2王子の事なんか欠片も思い出さない。計算高い令嬢でした。
これは、困った。駆け落ちでもしてくれないかと甘い期待をしていた太は、庭から盗み聞きして意気消沈。
(僕に出来る事って、ないのかな。)
これ以上、打ち沈む王子を見ていられない。どうにかしたい。藁でも掴むつもりで、占いの店へ行ってみた。
「ねえ、お婆さん。」
「お姉さんと、呼んどくれ。80歳までは、娘だじょよ。」
「え、そーなの?ごめんね、お姉さん。」
「素直なのかアホなのか。」
「え、何?」
「こちらの事じゃい。で、相談の内容は?」
知り合いが別れた婚約者をわすれられない。どうにか、できないだろか。という話に、老婆は頷いて太を何故か見回した。
「ほう、いい身体だわい。」
「何で、身体なのさ?」
「こちらの事じゃい。「願いを叶える石」てのがある。」
「へー、そんなのが。何処に行けば有るの?」
「魔の森じゃわい。丁度、参加メンバーを集めておる。わしが、紹介してやろうかな。」
「本当?ありがとう!」
何と、その「願いを叶える石」を採集できる場所へ行くダンジョンのチームへ入れてもらえる事に。幸運だと、太は喜んだ。
現実とは、聞いていた物とは違ってたという事が起こりやすい。それが、太にも起こった。
「ちょっと、何するんだよ。どうして、僕を縛るの?」
紹介されたチームと待ち合わせて魔法使いに魔の森まで飛ばされる。魔力で移動した場所は、太には覚えのある処だった。捨てられたからだ。
チームの男が、いきなり、太を縄で縛り出す。
「占いの婆さんは、いい餌食を探してくれたよ。お前、召喚された勇者だよな。これから行くダンジョンの魔物は、勇者が好物なんた。誘き寄せる餌に最適だ!」
なんと、太は餌として売り渡されたのだ。騙されたと気がついた時は、もう遅い。
肩に担(かつ)がれて、ギルドの「危険、入るな!」の札とロープで塞がれているダンジョンの穴へと運ばれて行くのだった。
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