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異世界と哀れな少年
第17話 タバコ
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彩香さんにマリアは連れ出され、一人マリアの帰還を待ちわびていたのだが結局マリアは現れず、現れたクロードさんに、
「マリア様ですがカンダサヤカ様と夕食をご一緒にされるそうですよ?」
と言われクロードさんに連れられて夜の会食の場所へと連れていかれた。
会食の場所へと続く廊かは相変わらず石で出来ていて、壁に空いた穴から入り込む光か足元を照らしてる。
その通路の先に見たことのある人影を見た。
山田 孝君と村田 勇治君だ。
二人は僕に気付くと一瞬隠れようとするが、僕に見られてるのに気付いて通路を向こうからこっちに向かって歩いてくる。
思えば二人にはずいぶん嫌な思いをさせられた。
人に見られない場所で殴られたり、色々強要させられたり。二人が僕を苛めなければ他のクラスメイト達から苛めを受ける事は無かったのだろう。
二人は僕と視線を合わせる事なく僕の隣を歩き去ろうとして、
「あれ?タバコは吸ってないの?」
と聞いた。
確かこの世界にもタバコはあったはずだ。
山田君は僕の方を見ずに、「あんな頭の悪いもん吸うわけねぇだろ」と言って村田君と一緒に立ち去った。
そりゃ、タバコは百害あって一理なしと言われてるけど。あんなに体からタバコの臭いをプンプンさせてたじゃん。
まさか本当に父親が吸ってたタバコの臭いなのか?
イヤイヤ、だったらなんで僕に『タバコを買ってこい』なんて言うんだよ。
二人が歩き去るのを見送って再び歩き出すと、
「タナカ様はヤマダ殿の体を見たことはありますか?」
そうクロードさんが聞いてきた。
「いえ?ありませんけど?」
僕は山田君の体に興味なんてない。
でもそういえばいつも袖の長いシャツを着ていてあまり体を出している所は見たことが無いような気がした。
「もう直ぐそこですよ」
そう言われて通された部屋は食事会と呼ぶには豪勢過ぎる部屋だった。
大きな鏡とシャンデリアがあって、、、
「じゃあこちらでお着替えを」
とクロードさんが言った。
「着替え?」
良く見ると壁には沢山の服が並んでいた。
しかしどれも白くて立派な物ばかりで、
(絶対に僕に似合わないし、、、)
でもクロードさんはニコニコしながら、「さあ!どちらでも良いのでお好きな物をお選びください!」という。
「もっと悪役っぽい服とか無いんですか?」
僕にはこういうキラキラしたアイドルみたいな服は絶対に似合わないと思う。
「そんな、ご冗談を、、」
「イヤイヤ、じやわあ逆にどんな服が僕に似合うと思います?」
と僕が真顔で言うと、「それはもう、どんなお洋服でもお似合いですよ」と言いながら一人の女性が現れ、いろんな服を僕に着せてくれたのだが、結果を言おう。
どれも似合わなかったのである。
・
「ククク」
っと笑いを堪えるクロードさんに案内されるまま廊下を歩いた。
通りすぎる人は僕を見ると二度見所か、三度見、いやガン見してくる。
「ほら!やっぱり僕に似合う服なんて1つもなかったじゃないか」
そうクロードさんに抗議すると、
「ですが、そちらの服を最後にお選びになったのはタナカ様ではないですか」
「まぁね」
どうせどんな服も似合わないのなら、思いっきり道化を演じてやろうと決めたのだ。
ご飯をご馳走になるのだ、それぐらいしてあげても良い。笑われるのは好きじゃないけど、笑わせるのは好きだし。
今僕は今までの人生の中で一番似合わない服を着ていた。
白い生地に金の刺繍が施され、所々にキラキラと光る装飾も付いている。
首回りにはフリフリが付いている。
ズボンは僕のずんぐりむっくりの体に合っておらずパツパツだ。
そして通された部屋は、いや、部屋じゃないなそこは会場だ。
これから結婚式でもするんじゃないかという華やかさで満ちていた。
その部屋は明るくシャンデリアがいくつも下がり、
またそこに居る人達も華やかに着飾っていた。
女性は皆キレイなドレスを着ていて、少ないが男性も華やかに着飾っている。
僕がその場所へと足を踏み入れると、その人達の目が一気に僕に向く。
オークとドワーフを足して2でかけた様な顔をした僕が、フリフリの王子様みたいな衣装で登場する!
一番最初に食い付いたのは国王様だ。
「クックック、その、その服を選んだのは誰だ?」
「僕ですよ。どうです?似合ってますか?」
「ガハハ!似合うじゃないか!何処の王子様かと思ったぞ!」
「そうでしょ?似合うでしょ?道化っぽい感じで」
「何を言う!道化などと、」
「いやいや、道化でしょ?国王様に手加減されて勝った僕は道化と呼ばれるのにぴったりですよ?」
僕がそう言うと国王様は嬉しそうに『ウンウン』と頷いて、
「やはりお主は王になれ!」
そう言った。
もちろん僕が『オッケー!』と言う筈が無く、「ハイハイ。そういう冗談は誰も笑わないからね」というが、
「さあ!気張れ!タナカの心を射止めた女が次の女王だぞ!」
国王様がそう言った。
その瞬間ドレスを着た女性達の間に緊張が走るのが僕にも分かる!
「なんでそうなるんですか!」
そう僕が抗議するが国王様は、
「俺はお前の今日の行動全てを高く評価する。1つは俺が戦闘で手加減していたことを理解していること。
もう1つは俺が手加減していた事をこの場で、一番お前に注目が集まるこの瞬間にそれを明らかにしたこと。
もう1つは身に合わぬ格好をして、この場で道化を演じようとした事。
そしてもう1つの理由はタナカ殿がこの場に現れた事だ」
国王様はそう言って僕の顔を真っ直ぐに見る。
「解せぬー!」
そう僕は抗議したが、
「本当に国王に成りたくなければ、こんな所に来ずに、さっさと町へ下っていたであろう。そしてそれをこの場でわざわざ『国王にはならぬ』と言いに来たのはタナカ殿の気質。コソコソしているのが苦手なのだろう。
コソコソしたり、口先だけが良く回ったり、非難してばかりの人間には国王は向かぬ。
結局全ての責任は国王に来るのでな。
その点、タナカ殿は堂々としておって良い、国王が向いとる」
マジ?!
この人正気なの?
「でも!そんなの無理っしょ!」
僕はそう言うのだけど、国王様は僕の言葉を無視して、
「しかし!一人娘のエマは想い人が居るらしくてな、スマン!タナカ殿!先程はエマと結婚しろと言ったが、違う女子でよ良いか?」
「いやいや、そもそも俺は結婚しないし!そもそも僕の話を聞いてくれ!」
「その代わりに此処にいるドレスを着た女子なら誰でも大丈夫だ!」
(えっ?まじ?美人さんばっかり、、、)
「いやいや、そうじゃなくて!」
「おじさま!」一人の女の子が大きな声を出して、「今の話に嘘や偽りは有りませんよね?」そう言った。
その子は金色の髪の毛を両サイドで纏めて縛っている。
いわゆるツインテールという髪型の女の子だ。僕より年下だろうか、少し幼い顔をしている。
「良く来たな、シャルロッテ」国王様はその子に微笑み掛けながら「もちろん今の言葉に嘘は無いぞ!」そう言う。
シャルロッテと呼ばれた女の子は 「では、エマ様はどうなられるのです?」と言った。
「様子を見て退任かの?」
その言葉に会場の中が騒然とする、そりゃそうだ。こんな場所でいきなり王女様の退任を伝えたのだから。
そして国王様は大きな声で「なので、タナカ殿が好いた女子を儂の養子として迎え、その婿としてタナカ殿に来て頂く形になる」そう言った。
「いやいや、待ってくださいよ!」と僕は言うが、
「よし!私と結婚しろ!」と利発そうな黒髪の女性が言う。
「ちょっと、落ち着いてくださいよ!良く僕の顔を見てください!こんな魔物みたいな顔の僕と結婚出来るんですか?」
「ちょっと!私はどうなるのよ?私は!」今度は耳が少し尖った小柄な女性が言う。「流石に私は養子には成れないわよ?」
「おお!レビ様!」
レビ様?
どっかで聞いたことのある名前だ、、、。
「私は?私だってタナカを狙ってるけど、王女なんて困るわよ?」
「レビ様は、第2婦人といった形で、、、」
と国王様が言うと、
「オッシャ!」
とレビ様と呼ばれた女の子は嬉しそうにガッツポーズをとった。
その女の子は幼いが可愛い顔立ちをしている。その女の子が僕を狙っていると言っているのだ。
(嘘でしょ、、、)
「落ち着きません?僕の顔をよぅく見て下さいよ」
そう僕は自分の顔を指差して言うのだが、
「あら、私は貴方の顔が好きよ?」
そうレビ様と呼ばれた女の子は顔を赤らめて言った。
(なぬー!)
僕が驚いていると、さっきの黒髪の女性が、「国王様?しつこい様ですが、タナカ様の心を射止めた者が次の王女。エマ様は退任。それで宜しいのですね?」国王様を見てそう言った。
その姿は凛としている。
「クレア、お前は本当に疑り深い」そう言ってため息を付いた。「でも、なんの引っ掛けも無いよ。言葉通りだ。エマは異世界から転移したクウジョウという男と結婚するらしいのだが、そのクウジョウには国王としての資質が無いのでな。エマには退任してもらう運びとなった。それで良かったな?エマ」
国王様がそう言って視線を向けた先には一人の女性がいた。
エマ様だ。
エマ様も着飾ってこの会場へと来ていたのだ。
相変わらずキレイな顔をしているが、下を向いたままで元気が無さそうだ。
そりゃそうだ。
僕みたいな顔をした奴と結婚しろなんて言われたら普通こうなる。むしろまともな反応と言えるだろう。
空城君と結婚したいと思うのも当然だ。
アイツは憎い事に、顔は良いし勇者だしカッコいいスキルを持ってるしな。
それに比べて僕は、ドワーフとオークを足して2で掛けた様な顔をしてるし。
持ってるスキルは『ラブホテル』という変態的なスキルだしな。
そりゃあ、空城君と結婚したいと言い出すだろう。
僕と結婚しろと言われたエマ様にはむしろ同情してしまう。
そしてエマ様は下を向いたままで何も言わないので、会場の女性達が徐々に僕を囲む様に集まってくる、
僕は後退りしながら、
「いや、僕は国王はちょっと、、、」
「いいえ、きっと素敵な国王様にお成りになりますわ」
と一人の女性が言う。
「いやいや、僕は国王には成りたくないので、、」
「そんな事を仰らないで?」
「いやいやいや、僕は異世界に来たら冒険者になるのが夢だったんですよ」
「その様なご冗談を仰って、本当にタナカ様は冗談がお好きなのね?」
「いやいやいやいや、ガチで、ガチで冒険者志望なんです」
「ウフフ、でもお城での生活も悪いものではないですよ?」
そう代わる代わる女の人が話し掛けてくる。
皆キレイな人ばかりで僕はドキドキしてしまう、そんな僕に女性達が群がり、
「ねぇ、お話ししましょ?」
「あら、タナカ様は私とお話をするのよ?」
「私もお話しさせて欲しいわ?」
そう話し掛けてくる!
(あわわ、どうしよ、どうしたらいいんだよ!)
今だかつて無い事態に僕は戸惑っていた。
~~~~~
この小説のエロシーンを『小説家になろう ノクターン』で、『異世界のご主人様とダルマな私』という名前で投稿しております。
宜しければ見てみてください。
「マリア様ですがカンダサヤカ様と夕食をご一緒にされるそうですよ?」
と言われクロードさんに連れられて夜の会食の場所へと連れていかれた。
会食の場所へと続く廊かは相変わらず石で出来ていて、壁に空いた穴から入り込む光か足元を照らしてる。
その通路の先に見たことのある人影を見た。
山田 孝君と村田 勇治君だ。
二人は僕に気付くと一瞬隠れようとするが、僕に見られてるのに気付いて通路を向こうからこっちに向かって歩いてくる。
思えば二人にはずいぶん嫌な思いをさせられた。
人に見られない場所で殴られたり、色々強要させられたり。二人が僕を苛めなければ他のクラスメイト達から苛めを受ける事は無かったのだろう。
二人は僕と視線を合わせる事なく僕の隣を歩き去ろうとして、
「あれ?タバコは吸ってないの?」
と聞いた。
確かこの世界にもタバコはあったはずだ。
山田君は僕の方を見ずに、「あんな頭の悪いもん吸うわけねぇだろ」と言って村田君と一緒に立ち去った。
そりゃ、タバコは百害あって一理なしと言われてるけど。あんなに体からタバコの臭いをプンプンさせてたじゃん。
まさか本当に父親が吸ってたタバコの臭いなのか?
イヤイヤ、だったらなんで僕に『タバコを買ってこい』なんて言うんだよ。
二人が歩き去るのを見送って再び歩き出すと、
「タナカ様はヤマダ殿の体を見たことはありますか?」
そうクロードさんが聞いてきた。
「いえ?ありませんけど?」
僕は山田君の体に興味なんてない。
でもそういえばいつも袖の長いシャツを着ていてあまり体を出している所は見たことが無いような気がした。
「もう直ぐそこですよ」
そう言われて通された部屋は食事会と呼ぶには豪勢過ぎる部屋だった。
大きな鏡とシャンデリアがあって、、、
「じゃあこちらでお着替えを」
とクロードさんが言った。
「着替え?」
良く見ると壁には沢山の服が並んでいた。
しかしどれも白くて立派な物ばかりで、
(絶対に僕に似合わないし、、、)
でもクロードさんはニコニコしながら、「さあ!どちらでも良いのでお好きな物をお選びください!」という。
「もっと悪役っぽい服とか無いんですか?」
僕にはこういうキラキラしたアイドルみたいな服は絶対に似合わないと思う。
「そんな、ご冗談を、、」
「イヤイヤ、じやわあ逆にどんな服が僕に似合うと思います?」
と僕が真顔で言うと、「それはもう、どんなお洋服でもお似合いですよ」と言いながら一人の女性が現れ、いろんな服を僕に着せてくれたのだが、結果を言おう。
どれも似合わなかったのである。
・
「ククク」
っと笑いを堪えるクロードさんに案内されるまま廊下を歩いた。
通りすぎる人は僕を見ると二度見所か、三度見、いやガン見してくる。
「ほら!やっぱり僕に似合う服なんて1つもなかったじゃないか」
そうクロードさんに抗議すると、
「ですが、そちらの服を最後にお選びになったのはタナカ様ではないですか」
「まぁね」
どうせどんな服も似合わないのなら、思いっきり道化を演じてやろうと決めたのだ。
ご飯をご馳走になるのだ、それぐらいしてあげても良い。笑われるのは好きじゃないけど、笑わせるのは好きだし。
今僕は今までの人生の中で一番似合わない服を着ていた。
白い生地に金の刺繍が施され、所々にキラキラと光る装飾も付いている。
首回りにはフリフリが付いている。
ズボンは僕のずんぐりむっくりの体に合っておらずパツパツだ。
そして通された部屋は、いや、部屋じゃないなそこは会場だ。
これから結婚式でもするんじゃないかという華やかさで満ちていた。
その部屋は明るくシャンデリアがいくつも下がり、
またそこに居る人達も華やかに着飾っていた。
女性は皆キレイなドレスを着ていて、少ないが男性も華やかに着飾っている。
僕がその場所へと足を踏み入れると、その人達の目が一気に僕に向く。
オークとドワーフを足して2でかけた様な顔をした僕が、フリフリの王子様みたいな衣装で登場する!
一番最初に食い付いたのは国王様だ。
「クックック、その、その服を選んだのは誰だ?」
「僕ですよ。どうです?似合ってますか?」
「ガハハ!似合うじゃないか!何処の王子様かと思ったぞ!」
「そうでしょ?似合うでしょ?道化っぽい感じで」
「何を言う!道化などと、」
「いやいや、道化でしょ?国王様に手加減されて勝った僕は道化と呼ばれるのにぴったりですよ?」
僕がそう言うと国王様は嬉しそうに『ウンウン』と頷いて、
「やはりお主は王になれ!」
そう言った。
もちろん僕が『オッケー!』と言う筈が無く、「ハイハイ。そういう冗談は誰も笑わないからね」というが、
「さあ!気張れ!タナカの心を射止めた女が次の女王だぞ!」
国王様がそう言った。
その瞬間ドレスを着た女性達の間に緊張が走るのが僕にも分かる!
「なんでそうなるんですか!」
そう僕が抗議するが国王様は、
「俺はお前の今日の行動全てを高く評価する。1つは俺が戦闘で手加減していたことを理解していること。
もう1つは俺が手加減していた事をこの場で、一番お前に注目が集まるこの瞬間にそれを明らかにしたこと。
もう1つは身に合わぬ格好をして、この場で道化を演じようとした事。
そしてもう1つの理由はタナカ殿がこの場に現れた事だ」
国王様はそう言って僕の顔を真っ直ぐに見る。
「解せぬー!」
そう僕は抗議したが、
「本当に国王に成りたくなければ、こんな所に来ずに、さっさと町へ下っていたであろう。そしてそれをこの場でわざわざ『国王にはならぬ』と言いに来たのはタナカ殿の気質。コソコソしているのが苦手なのだろう。
コソコソしたり、口先だけが良く回ったり、非難してばかりの人間には国王は向かぬ。
結局全ての責任は国王に来るのでな。
その点、タナカ殿は堂々としておって良い、国王が向いとる」
マジ?!
この人正気なの?
「でも!そんなの無理っしょ!」
僕はそう言うのだけど、国王様は僕の言葉を無視して、
「しかし!一人娘のエマは想い人が居るらしくてな、スマン!タナカ殿!先程はエマと結婚しろと言ったが、違う女子でよ良いか?」
「いやいや、そもそも俺は結婚しないし!そもそも僕の話を聞いてくれ!」
「その代わりに此処にいるドレスを着た女子なら誰でも大丈夫だ!」
(えっ?まじ?美人さんばっかり、、、)
「いやいや、そうじゃなくて!」
「おじさま!」一人の女の子が大きな声を出して、「今の話に嘘や偽りは有りませんよね?」そう言った。
その子は金色の髪の毛を両サイドで纏めて縛っている。
いわゆるツインテールという髪型の女の子だ。僕より年下だろうか、少し幼い顔をしている。
「良く来たな、シャルロッテ」国王様はその子に微笑み掛けながら「もちろん今の言葉に嘘は無いぞ!」そう言う。
シャルロッテと呼ばれた女の子は 「では、エマ様はどうなられるのです?」と言った。
「様子を見て退任かの?」
その言葉に会場の中が騒然とする、そりゃそうだ。こんな場所でいきなり王女様の退任を伝えたのだから。
そして国王様は大きな声で「なので、タナカ殿が好いた女子を儂の養子として迎え、その婿としてタナカ殿に来て頂く形になる」そう言った。
「いやいや、待ってくださいよ!」と僕は言うが、
「よし!私と結婚しろ!」と利発そうな黒髪の女性が言う。
「ちょっと、落ち着いてくださいよ!良く僕の顔を見てください!こんな魔物みたいな顔の僕と結婚出来るんですか?」
「ちょっと!私はどうなるのよ?私は!」今度は耳が少し尖った小柄な女性が言う。「流石に私は養子には成れないわよ?」
「おお!レビ様!」
レビ様?
どっかで聞いたことのある名前だ、、、。
「私は?私だってタナカを狙ってるけど、王女なんて困るわよ?」
「レビ様は、第2婦人といった形で、、、」
と国王様が言うと、
「オッシャ!」
とレビ様と呼ばれた女の子は嬉しそうにガッツポーズをとった。
その女の子は幼いが可愛い顔立ちをしている。その女の子が僕を狙っていると言っているのだ。
(嘘でしょ、、、)
「落ち着きません?僕の顔をよぅく見て下さいよ」
そう僕は自分の顔を指差して言うのだが、
「あら、私は貴方の顔が好きよ?」
そうレビ様と呼ばれた女の子は顔を赤らめて言った。
(なぬー!)
僕が驚いていると、さっきの黒髪の女性が、「国王様?しつこい様ですが、タナカ様の心を射止めた者が次の王女。エマ様は退任。それで宜しいのですね?」国王様を見てそう言った。
その姿は凛としている。
「クレア、お前は本当に疑り深い」そう言ってため息を付いた。「でも、なんの引っ掛けも無いよ。言葉通りだ。エマは異世界から転移したクウジョウという男と結婚するらしいのだが、そのクウジョウには国王としての資質が無いのでな。エマには退任してもらう運びとなった。それで良かったな?エマ」
国王様がそう言って視線を向けた先には一人の女性がいた。
エマ様だ。
エマ様も着飾ってこの会場へと来ていたのだ。
相変わらずキレイな顔をしているが、下を向いたままで元気が無さそうだ。
そりゃそうだ。
僕みたいな顔をした奴と結婚しろなんて言われたら普通こうなる。むしろまともな反応と言えるだろう。
空城君と結婚したいと思うのも当然だ。
アイツは憎い事に、顔は良いし勇者だしカッコいいスキルを持ってるしな。
それに比べて僕は、ドワーフとオークを足して2で掛けた様な顔をしてるし。
持ってるスキルは『ラブホテル』という変態的なスキルだしな。
そりゃあ、空城君と結婚したいと言い出すだろう。
僕と結婚しろと言われたエマ様にはむしろ同情してしまう。
そしてエマ様は下を向いたままで何も言わないので、会場の女性達が徐々に僕を囲む様に集まってくる、
僕は後退りしながら、
「いや、僕は国王はちょっと、、、」
「いいえ、きっと素敵な国王様にお成りになりますわ」
と一人の女性が言う。
「いやいや、僕は国王には成りたくないので、、」
「そんな事を仰らないで?」
「いやいやいや、僕は異世界に来たら冒険者になるのが夢だったんですよ」
「その様なご冗談を仰って、本当にタナカ様は冗談がお好きなのね?」
「いやいやいやいや、ガチで、ガチで冒険者志望なんです」
「ウフフ、でもお城での生活も悪いものではないですよ?」
そう代わる代わる女の人が話し掛けてくる。
皆キレイな人ばかりで僕はドキドキしてしまう、そんな僕に女性達が群がり、
「ねぇ、お話ししましょ?」
「あら、タナカ様は私とお話をするのよ?」
「私もお話しさせて欲しいわ?」
そう話し掛けてくる!
(あわわ、どうしよ、どうしたらいいんだよ!)
今だかつて無い事態に僕は戸惑っていた。
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