菊の華

八馬ドラス

文字の大きさ
16 / 16
第二章~昔話に華が咲く~

星野麗華は遊びたい

しおりを挟む
~小学5年生 夏~

私、星野麗華には赤井菊という幼馴染がいる。帰るときはいつも一緒だし休みの日もどっちかの家に行って遊ぶこともある。だけど、学校の休み時間のときはいつも別々。私は周りの友達と教室でしゃべったり、図書室に行って占いの本を借りてはみんなでやってみたりとかなりのインドア派、きくちゃんはいつも外で男子に混ざってドッヂボールとかやってるアウトドア派。だから休み時間のときだけは一緒にいない。寂しくないといえばうそになるけど、きくちゃんは外で遊ぶ方が楽しいみたいだからそれでいいかなと思ってる。でもあるときーー。

「麗華、たまには外で遊ぼうぜ」

きくちゃんの方から遊びに誘ってきた。誘われるのは嬉しいけど、正直外で遊ぶのはあまり得意ではない。動いてもすぐに疲れちゃうからついていけなくなる。

「でも、私そんなに動けないから。ボール遊びとかは~...」
「うーん、そっかぁ」

きくちゃんは腕を組んであきらかに考えてますってポーズで考えてると、なにか思いついたのかパっと顔を上げた。

「じゃあ走ってみよう!」
「えっ?」

急に走ると言われてどういうことかわからなかった。

「なんで走るのよ~?」
「走ってればそのうち動けるようになるだろ。だったらみんなと遊べるようになる」

だから外出ようといわんばかりにきくちゃんは見つめてくる。

「ん~、わかったよ走るよ~...」

押しに押されて行くことになってしまった。すごい自信はない。
外に出ると溶けてしまうのではないかというほど暑かった。ニュースでも本場の夏がやってきたというのを言っていたのを思い出した。外ではすでに男子が外で遊んでいてよく遊べるなというちょっとした感心と私もこれからこの中を走るのかという絶望感に包まれていた。

「よし、とりあえず校庭の端っこから反対側まで走ってみよう」
「え~~...」

早速ハードルが高かった。

「よーい、どん!」
「あっ、ちょっとまってよ~」

まだ心の準備もできていないのにきくちゃんがスタートしたから私も走ることになった。私が校庭の半分を過ぎたころにはきくちゃんは反対側までゴールしていた。そして私のほうに手を振ってこっち~と声をかけてきた。きくちゃんの方に向かって走って、何とかゴールすることができた。ゴールしたころには息も絶え絶え汗もだらだら、立ってるのがやっとの状態だった。

「よし、じゃあまた向こうに走って戻ろう」
「また走るの~...せめてもうちょっと休んでからにしようよ~」
「ん、そうか。じゃあそっちの木の下に座ろう」

校庭にはいくつか大きな木が立っていて休み時間ぐらいのときだと影がちょうどいい広さになってるから座ってる人がたまにいる。やっと休めると座ってみると日差しは避けられた分ましだがまだ暑かった。

「そういえば、なんで、私を、外にさそ、ったの~?」

息を整えてからでも遅くないけど、気になってたから聞いてみた。

「あー、えっとー」

恥ずかしがっているのか少し顔をそむけて答えた。

「ほら、あたしらって休み時間のときはあまり一緒にいないだろ。一緒に遊べたらいいなぁと思っても麗華は外で遊ばないから、走れば体力もつくしそれから一緒に遊べるようになるかなって」

「体力がつくのはわかるけど、その割には一人で走ってったよね~?もう少し寄り添ってくれたっていいでしょ~?」

少しだけ元気になったから意地悪をいってみた。このぐらいは言う権利はある。

「悪かったよ...麗華のことちゃんと考えてやれなかった...」

ホントに悪いと思ってるときの顔だ。ほんとにきくちゃんは不器用なんだから。

「ほんとにもう。次からはちゃんと私のことも考えてよね~」
「うん、わかった...って次?また走ってくれるのか?」
「きくちゃんが私のために考えてくれたんだから、たまには走るよ~、今度は自分のペースも考えながらね」

今は全然追いつかないけど、いつかきくちゃんを追い抜きたい。そして驚かせてやるんだ。それで一緒に外で遊びたたい。私は芽生えたこの想いを叶えるために走ると決めた。

「じゃあもう少しだけ走ろう~...」

ふらっ........バタッ!

「麗華?...麗華!」

ーーーーーーー

気づいたときには保健室にいた。どうやら立ち上がった時にひどい立ち眩みにあったらしい。そのあときくちゃんが私を背負って保健室まで走ったそうだ。まああの暑さだったからね。外に慣れてない私だったら少し全力疾走しただけでもかなりきついだろう。きくちゃんは私が目覚めるまで保健室のベットのそばにいてくれたらしく、起きた時に説明してくれた、すごい泣きながら。起きてくれたことの安心と、こうさせてしまったのは自分のせいだという感情がぐちゃぐちゃになってるみたいで「よかったー!」と「ごめんなさ~いっ」を交互に言っていた。ずっと泣いてるきくちゃんの頭を軽くなでて落ち着かせようとした。
「大丈夫だから、もう泣かなくていいよ~」
そういうときくちゃんは私に抱き着いて「ごめんなさ~い」といってより一層大きく泣いてしまった。
そのあと学校を早退して家でずっと休んだ。きくちゃんがあんなに泣いてるの久しぶりに見たなぁ。明日会ったときは心配かけたこと謝らなくちゃ。それでまた、一緒に走って...。

ーーーーーーーーー

~現在~

「ん~~~...昔の思い出が夢に出てくることってホントにあるんだね~...」

麗華は朝目覚めて、見た夢の感想を呟いた。寝起きで少しだるい体を動かしカーテンを開けて、隣に住んでいる幼馴染のことを考えていた。

「あれから頑張って、私のほうが速くなっちゃったね~。って聞こえるはずもないか~」

朝あったら今度は面と向かって言ってやろ。そう思いながら軽く準備を済ませ一階のリビングに行った。

「ママおはよ~う!朝すごい夢見たの~!」
「おはよう。どんな夢見たの?」
「きくちゃんとの思い出~」

~続く~
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

隅枝 輝羽
2023.05.07 隅枝 輝羽

Twitterで見かけてきました!
花の名前が文の中に散りばめられていて綺麗。
菊と麗華の距離感にキュンキュンしました。

続きが楽しみです。お気に入り登録しました〜

2023.05.07 八馬ドラス

この度は読んでくれてありがとうございます。花の名前を使うのは少しこだわっている部分なのですごい嬉しいです。これからも頑張ります!

解除

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。