34 / 90
悩みとは
しおりを挟む
「そうね。まず言えることは、ベラルド卿はあなたのことをとても心配していたということね」
私がそう言うとレグルスくんが弾かれたように顔を上げた。
「そんなはずは!」
「ないって?」
私の言葉を否定するレグルスくんに対してこちらから問いかける。
「それは……」
私の言葉に驚くということは、この親子はコミュニケーションが足りていないということだ。
お互いが何を思い何を考えているか、それは言わなければわからない。
「あなたはじぶんの気持ちをベラルド卿に理解してもらえるようにちゃんと伝えたのかしら?」
「父は俺の言葉なんて聞いてくれません」
そう言ったレグルスくんはかなり頑なな表情だ。
おそらく私自身が年的にベラルド卿に近く、どちらかという親目線だからかベラルド卿寄りの感覚になっているのかもしれないけど。
言葉を尽くさなくてもわかって欲しい、というのは難しいよねぇ。
「差し障りなければお二人の間の問題を聞いても?」
私はその理由をだいたい知っている。
今日ベラルド卿から聞いたばかりだからだ。
ただ、ここで私からそのことに触れれば、おそらく彼は心を閉ざすだろう。
誰だって自分の知らないところで自分の話をされるのは嫌だろうから。
ましてや私はレグルスくんにとっては今日初めて会った相手なわけだし。
「まったく関係のない相手の方が話しやすい場合もあると思うわよ?」
私の呼び水のような言葉にうつむいていたレグルスくんが顔を上げた。
「俺は宰相よりも騎士になりたいんです」
うんうん。
それはベラルド卿も言っていたわね。
「仕事を家として継いでいくというのは理解しています。でも俺は宰相にはなりたくない」
「なぜなのか理由を聞いても?」
「俺には向いていないと思うからです」
私にしてみれば苦手意識とかで自分に制限をかけてしまうのはもったいないなと思う。
できないと思っていたことができるようになったり、苦手だったことがやり続けるうちに得意になることだってあると思うからだ。
だけどそれと同じくらい、好きなことややりたいことがあるのならそちらの方面へ進んだほうがいいと思う気持ちもある。
好きこそものの上手なれ。
そんな言葉があるくらい、好きなものを突き詰めていく情熱や熱意は何にも勝る能力だと思うからだ。
だから、彼が宰相の職を継ぎたくない理由が『苦手』だからなのか、それともそれ以上に『騎士になりたい』という思いからなのかは重要だと思った。
私は自分用に入れた紅茶のカップを手に取ると一口飲む。
その間に考えをまとめながら、レグルスくんの様子を観察した。
彼は彼でいまだ自分の中で葛藤しているのかもしれない。
眉間に刻まれた皺がそれを物語っている気がした。
「それに……」
さて何て答えようか。
そう思って考えを巡らせていると、レグルスくんが口を開いた。
「それに、俺よりも宰相の仕事に向いている奴がいるんです」
……ん?
別の理由が出てきたぞ。
そう思いながら彼の言葉を待つと、こちらを見るレグルスくんと目が合った。
彼の目は真剣だった。
決してただ単に嫌だとか苦手だとか、それだけではない苦悩が透けて見えて、私はその理由を聴くべく姿勢を正した。
私がそう言うとレグルスくんが弾かれたように顔を上げた。
「そんなはずは!」
「ないって?」
私の言葉を否定するレグルスくんに対してこちらから問いかける。
「それは……」
私の言葉に驚くということは、この親子はコミュニケーションが足りていないということだ。
お互いが何を思い何を考えているか、それは言わなければわからない。
「あなたはじぶんの気持ちをベラルド卿に理解してもらえるようにちゃんと伝えたのかしら?」
「父は俺の言葉なんて聞いてくれません」
そう言ったレグルスくんはかなり頑なな表情だ。
おそらく私自身が年的にベラルド卿に近く、どちらかという親目線だからかベラルド卿寄りの感覚になっているのかもしれないけど。
言葉を尽くさなくてもわかって欲しい、というのは難しいよねぇ。
「差し障りなければお二人の間の問題を聞いても?」
私はその理由をだいたい知っている。
今日ベラルド卿から聞いたばかりだからだ。
ただ、ここで私からそのことに触れれば、おそらく彼は心を閉ざすだろう。
誰だって自分の知らないところで自分の話をされるのは嫌だろうから。
ましてや私はレグルスくんにとっては今日初めて会った相手なわけだし。
「まったく関係のない相手の方が話しやすい場合もあると思うわよ?」
私の呼び水のような言葉にうつむいていたレグルスくんが顔を上げた。
「俺は宰相よりも騎士になりたいんです」
うんうん。
それはベラルド卿も言っていたわね。
「仕事を家として継いでいくというのは理解しています。でも俺は宰相にはなりたくない」
「なぜなのか理由を聞いても?」
「俺には向いていないと思うからです」
私にしてみれば苦手意識とかで自分に制限をかけてしまうのはもったいないなと思う。
できないと思っていたことができるようになったり、苦手だったことがやり続けるうちに得意になることだってあると思うからだ。
だけどそれと同じくらい、好きなことややりたいことがあるのならそちらの方面へ進んだほうがいいと思う気持ちもある。
好きこそものの上手なれ。
そんな言葉があるくらい、好きなものを突き詰めていく情熱や熱意は何にも勝る能力だと思うからだ。
だから、彼が宰相の職を継ぎたくない理由が『苦手』だからなのか、それともそれ以上に『騎士になりたい』という思いからなのかは重要だと思った。
私は自分用に入れた紅茶のカップを手に取ると一口飲む。
その間に考えをまとめながら、レグルスくんの様子を観察した。
彼は彼でいまだ自分の中で葛藤しているのかもしれない。
眉間に刻まれた皺がそれを物語っている気がした。
「それに……」
さて何て答えようか。
そう思って考えを巡らせていると、レグルスくんが口を開いた。
「それに、俺よりも宰相の仕事に向いている奴がいるんです」
……ん?
別の理由が出てきたぞ。
そう思いながら彼の言葉を待つと、こちらを見るレグルスくんと目が合った。
彼の目は真剣だった。
決してただ単に嫌だとか苦手だとか、それだけではない苦悩が透けて見えて、私はその理由を聴くべく姿勢を正した。
715
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜
禅
恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。
だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。
自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。
しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で……
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています
※完結まで毎日投稿します
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる