【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売

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悪役令嬢はレンブラント家の意図を推測する

パタン。

自分の部屋のドアを閉めて、私はホッと息を吐き出した。
なるべく人目につかないように書斎から自分の部屋まで戻ってきたおかげか、使用人にもほとんど会わなかったのは幸いだ。

ドキドキと速い鼓動を刻む心臓に手を当てる。

大変なものを、見てしまったかもしれない。

父の書斎に置かれていたレンブラント家からの手紙の束。
使用人の足音がしたから確認ができたのは一通だけだったけど、内容は穏やかではなかった。

『二つ目の月の二の舞になりたくなくば身の程をわきまえよ』

書かれていたのはたったそれだけ。
もしかすると他に手紙があって、残したのがその部分だけなのかもしれないけど……。

どう考えても何かの警告だろう。
レンブラント家から警告を受けるような、何があるというのか。

そもそもがそんな重要そうな手紙を無造作に机の上のレタートレーに置いてあること自体どうかと思うが、あの父であれば驚きはない。
というのも父は使用人を人と思っていないからだ。
ただそこにある物くらいの認識だから、彼らが何かをするとも考えていないに違いない。

使用人以外で書斎に立ち入るとすれば母か兄か私だけど、母はおそらく父同様この手紙の存在は知っているだろうし、兄はほとんど家に帰って来ていなかった。
私はといえば呼ばれない限り書斎に近づかないから父にとっては意識の範疇外だろう。

『二つ目の月』
『二の舞』
そして『身の程をわきまえろ』

父はレンブラント家を脅してでもいるのだろうか。

二つ目の月……ねぇ。
グラント国において月といえば二つ意味がある。
一つは夜空に浮かぶ、いわゆる普通の月。
そしてもう一つは国王の伴侶、つまり王妃のことだ。

グラント国では王のことを太陽に、王妃のことを月に例える慣例があるためだけど。

……。
……え。
まさか。
王妃を月と例えるのであれば、二つ目の月は二人目の妃ととらえることができる。
現国王の妃は二人。
王妃と亡くなった側妃のみだから……二つ目の月って側妃のこと!?

二の舞って、『人の失敗を繰り返すこと』だよね?

いやいやいや。
その意味でいくと、
『側妃のように死にたくなければ身の程をわきまえろ』って言ってることになるけど!!

……いったん落ち着こう。
私の勝手な思い込みかもしれないし。

でもこれはそのままにはしておけない内容だと思う。
どうしよう。
私だけで考えるには不安が大きい。

誰かに相談する?
いったい誰に?

ダグラスは……内容が内容だけに絶対に無理。
デュランとは基本的に契約と利害関係で成り立っている関係だし、情報ギルドにこのことが知られるのはまずい。

……やっぱり兄かな。
ウェルズ家に何かあれば運命共同体なわけだし。

でも兄、家に帰って来ないのよね。
かといって学園の教員棟を尋ねるには護衛が必要。
ダグラスの耳にこの話を入れるのはまずいし、レオを連れていくにはレオ自身をまだ信頼できない。

少し考えて、私は机の引き出しからレターセットを取り出すと手早く必要なことを書いた。

何が悲しくて身内に会うのにわざわざ手紙を書かないといけないのか。
そう思いながら、ウェルズ邸で至急会いたい旨を記した手紙を折りたたむと封筒に入れる。
誰に見られるかわからないから手紙には細かいことは書かなかった。

緊急性を感じてくれるといいけど。

そう思いながら、侍女のメアリを呼び至急手紙を学園にいる兄に届けるように指示を出す。
おそらく今から家の使用人が直接手紙を運ぶだろう。

……それにしても、乙女ゲームの内容を逸脱してない?
あのゲームってこんな物騒な話出てこなかったと思うんだけど!

それとも私が攻略していないルートにはそういう話もあったのか。

いずれにしてもまずは兄からの返答待ちだ。
そう思いながら、私は今後のことに思いを馳せたのだった。
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