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悪役令嬢は進言する
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あの気を揉んだ夜の翌日、宣言した通り多くの証拠とともにレオは無事に戻ってきた。
そして王妃の私室でどんなやり取りがあったかを私は詳しく聞くことはしなかった。
それが正しい対応だったかどうかはわからない。
あったことを聞かれたいのか聞かれたくないのか。
それは人によって違うと思うから。
レオが言ってきた時には何も言わずに受け入れると決めている。
「やはり……か」
兄の声に私は机の上に広げられた書類を見た。
証拠類を兄の部屋の応接用の机に広げ、兄と私とダグラス、そしてレオが書類の確認をしていた。
机の上には数々の証拠と共にウェルズ家からレンブラント家に宛てられた手紙が乗せられている。
内容は想像していた通りの物だ。
曰く、側妃殿下が毒殺だったことを知っている。
そして策を弄したのが貴家であるとの確信を得ているがどうされるか。
というようなものだった。
端的に言ってしまえば脅しである。
もちろん側妃毒殺の証拠はないからレンブラント家がしらばっくれれば追求することは難しい。
それでも後ろ暗いところのある家であればあるほど後顧の憂いは摘み取ってしまいたいと考えるのかもしれない。
この手紙のやり取り以後に私が過去の事件を嗅ぎ回っていたのだから、レンブラント家には両親と私が同じ思惑で動いていると思われたのだろう。
「お兄さま、前々から申し上げていましたけれど早急に当主の交代をするべきだと思いますわ」
「……そうだな」
「修了式の時までには必要書類をすべてそろえ、この機会に両親を排してお兄さまが当主に立つべきです。陛下にも事前に申し開きをしておいた方がいいと思いますわ」
そうしなければ王妃の罪を追求する際に共倒れしかねない。
過去の事件の真相を知りながらそのことを秘匿し、秘密裏にレンブラント家を脅していたと思われたら目も当てられないからだ。
それよりは両親の罪を兄と私が追求し、白日のもとに晒すことによって家としての潔白を証明した上で許しを求めた方がいい。
そして側妃事件の解明に関しての協力が認められればお咎めは両親限定のものとなり、当主交代をもって家への追求をかわすことができるだろう。
ここで重要なのは事件の真相究明に兄と私が協力していたという事実だ。
自ら両親の罪を問い、家としての自浄能力を示さなければならない。
そのためにも事前の根回しは必須となる。
完全にコネを利用することになるけれど、ここはダグラスにも協力してもらおう。
「今回の貢献度を考えれば考慮してもらえるはずだ」
ダグラスとしてもそこに異存はないらしい。
ウェルズ家はグラント国の公爵家だ。
貴族社会でのバランスを考える上でも簡単に潰すわけにはいかない。
となれば、当主交代は落とし所としてちょうどいいだろう。
「書類は早急にそろえる。陛下への謁見は可能だろうか?」
「影を通して陛下のご意向を確認しておこう」
ウェルズ家の対応はこれで決まった。
「ニールセン家の方はどうしますの?」
私の言葉に、レオの体がピクリと反応する。
「もちろんこの機会に過去の罪を含めて追求するつもりだ」
ダグラスの言葉を聞いてふと思う。
「レオ、あなたはニールセン家の跡を継ぐ権利がありますわ。今回の件で現在家に連なる者たちは罪を問われるでしょう。ウェルズ家と同様、事件解決に貢献したレオは当主交代に伴ってニールセン家を継ぐことができますわよ」
そう。
たとえ正妻の子ではなかったとしても、レオが当主の子であることには変わりない。
そこは正式に認知されているし書類上も彼はニールセン家の第三子だ。
「レオはどうしたいのです?」
とはいえ、私にとって一番重要なのはレオの気持ちだ。
もしレオが家を継ぎたいというのであればそうなるように協力するが、もし家を潰したいのであればそれはそれでありだと思っている。
「僕は……もうあの家に縛られたくない」
レオが自身の出自が判明してからも本名の『レオンハルト』ではなく『レオ』と名乗り続けていたことからも、その答えはわかっていたように思う。
「一番大事なのはレオの気持ちですわ。レオがそう望むのであれば、心のままに、ですわよ」
そう言った私の言葉に、レオは微かに微笑んだ。
そして王妃の私室でどんなやり取りがあったかを私は詳しく聞くことはしなかった。
それが正しい対応だったかどうかはわからない。
あったことを聞かれたいのか聞かれたくないのか。
それは人によって違うと思うから。
レオが言ってきた時には何も言わずに受け入れると決めている。
「やはり……か」
兄の声に私は机の上に広げられた書類を見た。
証拠類を兄の部屋の応接用の机に広げ、兄と私とダグラス、そしてレオが書類の確認をしていた。
机の上には数々の証拠と共にウェルズ家からレンブラント家に宛てられた手紙が乗せられている。
内容は想像していた通りの物だ。
曰く、側妃殿下が毒殺だったことを知っている。
そして策を弄したのが貴家であるとの確信を得ているがどうされるか。
というようなものだった。
端的に言ってしまえば脅しである。
もちろん側妃毒殺の証拠はないからレンブラント家がしらばっくれれば追求することは難しい。
それでも後ろ暗いところのある家であればあるほど後顧の憂いは摘み取ってしまいたいと考えるのかもしれない。
この手紙のやり取り以後に私が過去の事件を嗅ぎ回っていたのだから、レンブラント家には両親と私が同じ思惑で動いていると思われたのだろう。
「お兄さま、前々から申し上げていましたけれど早急に当主の交代をするべきだと思いますわ」
「……そうだな」
「修了式の時までには必要書類をすべてそろえ、この機会に両親を排してお兄さまが当主に立つべきです。陛下にも事前に申し開きをしておいた方がいいと思いますわ」
そうしなければ王妃の罪を追求する際に共倒れしかねない。
過去の事件の真相を知りながらそのことを秘匿し、秘密裏にレンブラント家を脅していたと思われたら目も当てられないからだ。
それよりは両親の罪を兄と私が追求し、白日のもとに晒すことによって家としての潔白を証明した上で許しを求めた方がいい。
そして側妃事件の解明に関しての協力が認められればお咎めは両親限定のものとなり、当主交代をもって家への追求をかわすことができるだろう。
ここで重要なのは事件の真相究明に兄と私が協力していたという事実だ。
自ら両親の罪を問い、家としての自浄能力を示さなければならない。
そのためにも事前の根回しは必須となる。
完全にコネを利用することになるけれど、ここはダグラスにも協力してもらおう。
「今回の貢献度を考えれば考慮してもらえるはずだ」
ダグラスとしてもそこに異存はないらしい。
ウェルズ家はグラント国の公爵家だ。
貴族社会でのバランスを考える上でも簡単に潰すわけにはいかない。
となれば、当主交代は落とし所としてちょうどいいだろう。
「書類は早急にそろえる。陛下への謁見は可能だろうか?」
「影を通して陛下のご意向を確認しておこう」
ウェルズ家の対応はこれで決まった。
「ニールセン家の方はどうしますの?」
私の言葉に、レオの体がピクリと反応する。
「もちろんこの機会に過去の罪を含めて追求するつもりだ」
ダグラスの言葉を聞いてふと思う。
「レオ、あなたはニールセン家の跡を継ぐ権利がありますわ。今回の件で現在家に連なる者たちは罪を問われるでしょう。ウェルズ家と同様、事件解決に貢献したレオは当主交代に伴ってニールセン家を継ぐことができますわよ」
そう。
たとえ正妻の子ではなかったとしても、レオが当主の子であることには変わりない。
そこは正式に認知されているし書類上も彼はニールセン家の第三子だ。
「レオはどうしたいのです?」
とはいえ、私にとって一番重要なのはレオの気持ちだ。
もしレオが家を継ぎたいというのであればそうなるように協力するが、もし家を潰したいのであればそれはそれでありだと思っている。
「僕は……もうあの家に縛られたくない」
レオが自身の出自が判明してからも本名の『レオンハルト』ではなく『レオ』と名乗り続けていたことからも、その答えはわかっていたように思う。
「一番大事なのはレオの気持ちですわ。レオがそう望むのであれば、心のままに、ですわよ」
そう言った私の言葉に、レオは微かに微笑んだ。
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