197 / 204
悪役令嬢は儀式を待つ
その日王都では貴族街や共有街だけでなく平民街でも、第一王子であるダグラスの立太子の儀式と婚約式を祝うためにさまざまな場所で宴が開かれていた。
王妃の事件が影を落としていた中での祝い事だ。
久しぶりの明るい話題に人々は喜びに溢れている。
中でもダグラスとエレナが事件の影響と国民感情に配慮して、婚約式を小ぢんまりと執り行うことにしたことが平民たちの間で好意的に思われていた。
ライアン殿下とは違い新しい王太子は自分たちのことも考えてくれている、そうとらえられたのかもしれない。
「これが終われば次は婚約式だ。緊張してるか?」
王宮の控室で、一緒に儀式の始まりを待っていた私にダグラスが聞いてくる。
「幸いといってはいけませんけれど、婚約式は王族としては異例の小ぢんまりとしたものですから大丈夫ですわ」
ダグラスはやはり王子様然とした衣装が好きではないらしく、今日もまた騎士服を基調とした服を身につけていた。
そしてその肩にはフィブラで豪奢なマントが留められている。
マントの背には精密な刺繍でグラント国の紋章が描かれていた。
立太子の儀式は大広間で行われる。
入場は基本的に下位貴族からとなっているので私が入場するのはもう少し先だろう。
婚約式で正式にダグラスと婚約するとはいえ、現時点で私はまだ一公爵令嬢でしかない。
そのため、今日は公爵家当主として参加する兄のエスコートで入場することが決まっている。
王妃の断罪によって、王妃とレンブラント家に連なる多くの家が粛清された。
当主の交代だけで済めばまだいい方で、降爵となったり取り潰しになった家もある。
それによって儀式に参加する貴族たちは以前より少ない人数となっていた。
領地を持つ貴族家を不在のままにしておくのは難しい。
これからダグラスは陛下と共にその点も考えていかなければならないだろう。
そして脅迫の罪に問われていたウェルズ家の両親は領地に生涯謹慎を命じられた。
父親は当主の座と仕事を兄に譲り、両親とも今後王都へ立ち入ることは許されない。
やったことがレンブラン家へ脅迫の手紙を送っただけとはいえ、側妃の事件の真相を知りながらその報告を怠ったのは許されざる行為だ。
本来であれば当主交代だけでは済まされないところではあるが、ウェルズ家の兄と私が事件解決に協力したこと、また、今後王太子妃になる私の親という点も踏まえての落としどころだったのだろう。
対してウェルズ家と同時に王妃断罪の場で罪を暴かれたニールセン家はこの機に廃爵となった。
実子虐待と奴隷の斡旋の罪を問われて両親と兄弟が捕らえられ、後継者となったのはレオだ。
もしレオが家を継がなければ遠縁から後継者を選ぶことになったのかもしれない。
しかしレオは一旦書類上で家を継ぎ、そしてすぐに爵位を返上した。
これによりニールセン家は伯爵家として終わりを迎えたことになる。
とうのレオはスッキリとした顔をしていたからこれで良かったのだろう。
「もうすぐ私も入場の順番がくるので行きますわね」
そう言った私の左手をダグラスが取る。
「今日でやっと正式な婚約者になれる。エレナ嬢希望の指輪がこの指に飾られるのが楽しみだ」
持ち上げられた左手の薬指にそっとダグラスの唇が触れた。
なかなか恋人同士の触れ合いに慣れない私を慣らすためか、最近のダグラスはこうやって触れてくることが増えた。
醸し出される甘い雰囲気が面映い。
「わ……私も楽しみにしていますわ」
何とか平静を保って私も答える。
一応私も成長しているのだ。
そうして何となく気恥ずかしい思いを抱えたまま、私は兄の待つ場所へ向かうのだった。
王妃の事件が影を落としていた中での祝い事だ。
久しぶりの明るい話題に人々は喜びに溢れている。
中でもダグラスとエレナが事件の影響と国民感情に配慮して、婚約式を小ぢんまりと執り行うことにしたことが平民たちの間で好意的に思われていた。
ライアン殿下とは違い新しい王太子は自分たちのことも考えてくれている、そうとらえられたのかもしれない。
「これが終われば次は婚約式だ。緊張してるか?」
王宮の控室で、一緒に儀式の始まりを待っていた私にダグラスが聞いてくる。
「幸いといってはいけませんけれど、婚約式は王族としては異例の小ぢんまりとしたものですから大丈夫ですわ」
ダグラスはやはり王子様然とした衣装が好きではないらしく、今日もまた騎士服を基調とした服を身につけていた。
そしてその肩にはフィブラで豪奢なマントが留められている。
マントの背には精密な刺繍でグラント国の紋章が描かれていた。
立太子の儀式は大広間で行われる。
入場は基本的に下位貴族からとなっているので私が入場するのはもう少し先だろう。
婚約式で正式にダグラスと婚約するとはいえ、現時点で私はまだ一公爵令嬢でしかない。
そのため、今日は公爵家当主として参加する兄のエスコートで入場することが決まっている。
王妃の断罪によって、王妃とレンブラント家に連なる多くの家が粛清された。
当主の交代だけで済めばまだいい方で、降爵となったり取り潰しになった家もある。
それによって儀式に参加する貴族たちは以前より少ない人数となっていた。
領地を持つ貴族家を不在のままにしておくのは難しい。
これからダグラスは陛下と共にその点も考えていかなければならないだろう。
そして脅迫の罪に問われていたウェルズ家の両親は領地に生涯謹慎を命じられた。
父親は当主の座と仕事を兄に譲り、両親とも今後王都へ立ち入ることは許されない。
やったことがレンブラン家へ脅迫の手紙を送っただけとはいえ、側妃の事件の真相を知りながらその報告を怠ったのは許されざる行為だ。
本来であれば当主交代だけでは済まされないところではあるが、ウェルズ家の兄と私が事件解決に協力したこと、また、今後王太子妃になる私の親という点も踏まえての落としどころだったのだろう。
対してウェルズ家と同時に王妃断罪の場で罪を暴かれたニールセン家はこの機に廃爵となった。
実子虐待と奴隷の斡旋の罪を問われて両親と兄弟が捕らえられ、後継者となったのはレオだ。
もしレオが家を継がなければ遠縁から後継者を選ぶことになったのかもしれない。
しかしレオは一旦書類上で家を継ぎ、そしてすぐに爵位を返上した。
これによりニールセン家は伯爵家として終わりを迎えたことになる。
とうのレオはスッキリとした顔をしていたからこれで良かったのだろう。
「もうすぐ私も入場の順番がくるので行きますわね」
そう言った私の左手をダグラスが取る。
「今日でやっと正式な婚約者になれる。エレナ嬢希望の指輪がこの指に飾られるのが楽しみだ」
持ち上げられた左手の薬指にそっとダグラスの唇が触れた。
なかなか恋人同士の触れ合いに慣れない私を慣らすためか、最近のダグラスはこうやって触れてくることが増えた。
醸し出される甘い雰囲気が面映い。
「わ……私も楽しみにしていますわ」
何とか平静を保って私も答える。
一応私も成長しているのだ。
そうして何となく気恥ずかしい思いを抱えたまま、私は兄の待つ場所へ向かうのだった。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
※不定期更新
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!