短編集

天川 古雨

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ハマさんとおきつねさん

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…………戦争が長い戦いが終わった……

私は左半身が焼けて醜い見た目となった

こんな姿でも家族は受け入れてくれるのだろうか……


…………私は絶望した

故郷は焼かれ荒れ果てていた

昔にあった我が家

通りかかる人に言われた


「あら、ハマさん……帰ってきていたのね……無事に戻ってきて良かったわね……
……ハマさんの御家族は
1か月前の大空襲によって亡くなられたわ……
遺体は見つかっててご遺骨は私の家に安置しているから……落ち着いたら……」

母さん……ミヨ……アキヲ……

自分の母、妻と息子は死んでいた……

私はなぜこの国を守ったのだろうか……

家族を守れず醜くなり思うように左半身を動かせなくなって……

……小さな頃にミヨと来た丘にくる

夕方の涼やかな風……

「母さん……ミヨ……アキヲ……今から傍に行くからなぁ……」

私は涙を流して木に縄を括りつけて
それを首にかけて
岩から足を外そうとした

「旦那さん、そんなとこで何しとん?」

「えっ……?」

何故かミヨの声が聞こえた

「み、ミヨ……?」

そこには死んだミヨがいた

「み、ミヨ!ミヨ!ミヨ……!
す、すまない、私が……もっと早くに帰ってれば……!お前らと一緒にしねたものを……!!!!!」

私は手にかけてた縄を外し
上手く動かない左半身を引きずって
ミヨに縋る

「旦那はん………アタシはミヨではないです」

「で、ではだ……!?き、キツネ!?」

「旦那はん、ようおかえりになりました
この【ヨミコ】どんなに待ち遠しかったか……」

私の前には信じられぬ光景が浮かんでいた

ヨミコと名乗る九尾の女が現れた……

今まさに狐に化かされてる……

「旦那はん……暖かいおうちとお夕飯、
用意しておるけぇ一緒帰りましょ」

私は何故か足が動く

「……旦那はん……左半身大丈夫?
アタシが支えるけぇささ、どうぞ」

私はヨミコの言葉通りに動く

「や、やめろ……狐……わ、私は……」

「……ごめんなぁ、旦那はん……
怖いとは思いますけども
アタシは旦那はんに恩返しがしたいだけで、旦那はんを取って食おうという訳では無いんです……」

「じゃ、じゃあ、なぜ母さんとミヨとアキヲを護ってくれなかったんだ……」

「……アタシは旦那はんに恩返しがしたいんです……旦那はんの家族はアタシには関係ありません、さぁ、旦那はん……新しいお家についたよ……暖かいご飯も……旦那はんが好きなのが……」

私は上手く動かない左半身を強く動かそうとして体勢を崩してしまった

「……旦那はん……」

「……私は!私は恩返しなどいらない!!!!!ただ、ただ私は家族と……!!!!家族を守るために……!!!!あぁああぁ……!!!!!!!」

「旦那はん……暖かいご飯食べましょ
すぐには忘れられんと思いますが……
幸せになりますから……ね……?」

「ち、近づくな化け物!!!!!!」

「……旦那はん……」

ヨミコはにっこりと笑うと後ろの尾が
私の腕を強く掴み折る

「……あっ……!!!がっ……!!!!」

あまりの痛さにやけた時以上の
動悸が走る

「……旦那はん……?ほら、暖かいご飯食べましょ?痛いでしょ?心も……体も……
アタシは旦那はんに救われて欲しいんです、旦那はんだけに救われて欲しいんです……
覚えとりますか?旦那はん……
アタシを救ってくれた時のこと
あの時みたいにアタシも旦那はんの事を救いたいんよ……」

ヨミコの闇のような
目に吸い込まれそうになる

呼吸がしずらい……
あ、あぁ……死のうとはしてたが……
こんな形で死ぬのは……はぁ……はぁ……

「……旦那はん……さぁ」

「あ……あ……す、すくっ……て……くだ……
さ、い……」

くすっとヨミコは笑うと
私をすいっともちあげて
家の中に入った

綺麗な服に着替えさせられて

暖かい飯が私の前に並ぶ

先程までの痛さはなんとやら……
もそもそと飯を口に運ぶ

「旦那はん美味しい?」

「…………」

私はこくっと頷く

「良かったぁ……初めて作ったけぇ
喜んでくれるか分からんかったから……」

涙が流れてくる……

私は一生この妖狐に囚われたまま
生き地獄を味合わなければいけないのかと……

「……旦那はん……旦那はん……」

ヨミコの尾はゆらゆらと揺れていた……


-------------------------

「……ハマさん……!ハマさん……!」

町は大騒ぎ

ハマさんはこの町では有名な人で
みんなの人気者でもあった

儂はハマさんとは昔からの友である

ハマさんの御家族が亡くなったと聞き
一人の女性がハマさんの嫁様と仲良かったために遺骨を預かっており1ヶ月間彼が帰ってくるまで気にはかけていたが

ハマさんがいつまで経っても
取りに来ないということで
1週間……私たちは山の中を探していた

まさかあの人が首を吊って……

「あまり考えたくは無いが……
ご遺体は探さないとな……」

まだ気力がある若者で山を探す

そういえば彼は昔々に
それはとても綺麗なキツネを救った
という話があった

この山には昔から妖狐伝説がある
それがホントなら……

「ハマさんはもしかしたら妖狐に囚われたのかもしれん……」

そう思わなければならないほどに
捜査は難航した

2ヶ月後……

「…………ハマさん?」

左半身は焼けていてもしっかりと分かった

「ハマさん!ハマさんじゃないか!」

彼は綺麗な服を纏っており
幸せそうな顔をしていた

「あぁ、お久しぶりです、すみません迷惑をかけたみたいで……」

ハマさんはニコッと笑った
その笑顔は作られたような……

「あ、あのハマさん……」

「すみません、ヨミコが来たようです」

「旦那はん~あら、そちらのお方は……」

儂はゾッとした……
寺の次男で跡を継ぐことも無いから
家を出て酒屋を営んでいたが……

こんなゾッとしたのは初めてだった……

「ミヨコと申します、旦那はん共々よろしくお願いします~では!」

「じゃあまた……」

儂にはどうすることも出来ん……

ハマさんは永遠にあの妖狐に囚われたまま
になってしまうのだろうか……?

儂は……ハマさんのご遺族の遺骨を
ハマさんの家の墓に埋葬してもらった……

---------------

「これがこの町にある妖狐伝説?
結構最近の感じの話ね」

「ハマさんって人は今もその妖狐が作ったマヨイガで妖狐と生きてるらしいよ」

「怖いなぁ~……親切心で助けたら
ずっと囚われてしまうなんて」

「ほんとにね~……私たちも気をつけなきゃ!」

「どう気をつけんの!?」

「そりゃ気合い……?」

「気合いでどうにかなるもんかね?」

「そういえば私、最近ハマって苗字を聞いたような……」

「偶然じゃない?というかハマから始まる人なんて多いでしょ」

「あ!チャイムなっちゃった!
そういえば新しい先生って名前なんだっけ?」

「確か浜せんせ……あっ!」

-----END------
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