『聖女子学園の境界線 ― 鏡の中の乙女と真実』

あやてぃ

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鏡の中のシンデレラ 〜30歳、女子高生(JK)の距離感にドギマギする〜

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目が覚めた瞬間、視界の高さが違っていた。
「……え?」
こぼれ出たのは、聞き慣れた自分の低い声ではなく、鈴を転がすような高い声。慌てて駆け込んだ洗面所の鏡に映っていたのは、仕事に追われていた30歳の自分ではなく、透き通るような肌と大きな瞳を持つ、見知らぬ美少女の姿だった。
「嘘だろ……。あ、いや、嘘でしょう……?」
心の奥底で「可愛い女の子になりたい」と願い続けてきた賢人(けんと)の祈りが、どういうわけか神様に届いてしまったらしい。

ゼロ距離の洗礼

混乱が収まらぬまま、賢人は「彩香(あやか)」という名門「聖女子学園」の転校生として、新しい生活をスタートさせることになった。
紺色のセーラー服、揺れるプリーツスカート。そして、教室に入った瞬間に襲ってきたのは、男社会ではあり得ない「ゼロ距離」の洗礼だった。
「彩香ちゃん、おはよー! 今日も髪サラッサラだね!」
後ろから不意に抱きついてきたのは、クラスメイトのサキだ。背中に当たる柔らかい感触と、首筋に触れる吐息に、賢人の心臓は破裂しそうになる。
「あ、サキ、おはよう。えっと、ちょっと近いかな……?」
「えー? 何言ってるの、普通でしょ!」
サキはそう言って、さらにギュッと彩香(賢人)の腕を組み、頬をすり寄せてくる。手をつないで廊下を歩き、休み時間には一つのスマホを顔を突き合わせて覗き込む。女の子同士の当たり前すぎる「密着」に、賢人は内心パニックになりながらも、憧れていた世界の一部になれている幸福感に包まれていた。

「王子」との遭遇

そんなある日の昼休み。校庭の大きな樫の木の下で、賢人はその人に出会った。
「……君、新入りさん? 迷子かな」
声をかけてきたのは、銀髪に近いプラチナブロンドをなびかせた、ハーフの先輩・ティナだった。彫刻のように整った顔立ちに、どこか憂いを帯びた瞳。彼女は女子校でありながら、その凛々しさから「学園の王子」と呼ばれ、絶大な人気を誇っていた。
「あ……えっと……」
「ふふ、顔が赤いよ。暑いのかい?」
ティナが優しく微笑み、彩香の火照った頬を大きな手で包み込む。その瞬間、賢人の胸に雷が落ちたような衝撃が走った。30年間、男性として生きてきた時には一度も感じたことのない、胸が締め付けられるような熱い感情。
(これ……恋だ。俺、いや私、この人に恋しちゃったんだ)

友情と、近づく鼓動

それからの賢人は、サキという強力な味方を得て、恋する乙女として走り出した。
「彩香、ティナ先輩が向こうから来るよ! ほら、甘えてきな!」
サキに背中を押され、彩香は勇気を出してティナに歩み寄る。共通の趣味である読書をきっかけに、少しずつ二人の時間は増えていった。
夕暮れの図書室。並んで座る二人の距離は、あと数センチで肩が触れ合うほどに近い。
「彩香ちゃんは、不思議な子だね。時々、すごく大人びた目をする」
ティナが彩香の肩にそっと手を回し、自分の方へと引き寄せる。
「……先輩に、追いつきたいって思ってるからかもしれません」
「……可愛いことを言うね」
ティナの腕に包まれ、そのいい香りに包まれながら、賢人は心の中でそっと誓った。
30歳の「賢人」ではなく、恋する女子高生「彩香」としての、新しい物語が今、幕を開けたばかりだった。
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