『聖女子学園の境界線 ― 鏡の中の乙女と真実』

あやてぃ

文字の大きさ
6 / 6

放課後の残照と、秘めやかな夜 〜愛の形をなぞって〜

しおりを挟む
聖女子学園の門を去る日、賢人の目に焼き付いた光景があった。
「本当に行っちゃうんだね……彩香ちゃん、ううん、賢人さん」
親友だったサキは、そう言って寂しげに微笑んだ。魔法が解け、中身も外見も30歳の男に戻った賢人の正体を知った時、彼女はひどく驚いたが、最後には「あなたが幸せなら、それでいいよ」と笑ってくれた。
サキに見送られ、賢人は「彩香」という青春の幻影を学園に残し、平日のスーツに身を包む日常へと帰っていった。

二つの世界の狭間で

平日は、書類に追われる会社員。週末は、愛する恋人を出迎える一人の男。
賢人とティナの「遠くて近い」交際は、世間の常識を飛び越えたところで続いていた。
ある土曜の夜。賢人の一人暮らしのマンションの部屋で、二人はグラスを傾けていた。窓の外には都会の夜景が広がり、室内には心地よいジャズが流れている。
「ティナ、あのさ……」
賢人は、手元のグラスを見つめたまま喉の奥に溜まっていた言葉を振り絞った。
「あの事件の時……君が酷い目に遭わされそうになった時のことが、ずっと頭から離れないんだ。君を傷つけたあの男(賢人)は許せない。でも……あの時、無力に震えていた君の姿が、どうしようもなく俺の情動を煽るんだ」
賢人は自嘲気味に笑い、ティナを真っ直ぐに見つめた。
「最低だよな。でも、今の俺の力で、君を力尽くで支配してみたい。……"プレイ"のような形で、君をめちゃくちゃにしてみたいんだ」

赦しと、甘美な服従

ティナは静かにグラスを置いた。あの日の記憶は、今でも彼女の深層心理に冷たい影を落としている。だが、目の前にいるのは自分を地獄から救い出してくれた、世界で唯一信頼できる男だ。
「……賢人。君は、自分の内側にある『牙』を怖がっているのかい?」
ティナは立ち上がり、賢人の膝の間に割り込むようにして座った。
「あの時の恐怖を、愛で上書きしてほしい。君が望むなら、私は喜んで君の獲物になろう。……愛があるなら、私はどんな形に汚されても、君だけのものだよ」
彼女は賢人の大きな手を自分の首筋へと導き、挑発するように瞳を潤ませた。

闇の中で溶け合う記憶

「……後悔しても、知らないよ」
賢人の声が低く沈み、一瞬にして「捕食者」の眼差しに変わった。
彼はティナの細い首を片手で掴み上げ、ソファへと押し倒す。かつての華奢な「彩香」では決して出せなかった、男特有の質量と圧力がティナを圧迫した。
「やめて……放して……っ」
ティナがわざと漏らした、怯えたような掠れ声。それが賢人の理性を完全に焼き切った。
無理やり服を捲り上げ、肌を晒させ、抵抗する体を力で抑え込む。卑劣な悪徳教師がしようとした行為を、今は深い愛と信頼というフィルターを通して、二人の愛の儀式としてなぞっていく。
「ティナ、君は俺のものだ。誰にも渡さない……」
賢人の荒い吐息と、ティナの切ない喘ぎが重なり合う。
恐怖と快感の境界線が曖昧になり、あの日のトラウマは、賢人の熱い体温によって、二人だけの甘美な秘密へと昇華されていった。
魔法が解けたあとの世界で、二人は歪な、けれど誰よりも純粋な「愛の形」を刻み続けていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました

九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」 悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。 公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。 「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」 ――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ
恋愛
 初夜の最中。王子は死んだ。  犯人は誰なのか。  妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。  12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...