異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第一章 転移編

11 緊張

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「じゃあ私のテントに行こうか」

 そう言ったアルフレッドは、俺の手を取り目的のテントまで歩き始めた。後ろを振り返るとパスカルはニコニコと笑顔で俺に手を振り、ギルバードはなんだか複雑そうな顔をしていた。



◇◇◇



 連れてこられたのはいくつかあるテントのうちの一つで、見た目は何の変哲もないテントだった。しかし、中に入ってびっくり中は、どこかの屋敷の一室のように広く綺麗だった。
 電気も通っており、電球のオレンジ色の光がほんのりと部屋を照らしている。
 外観の大きさと内装の広さが違う気がするがきっと魔法なのだろう。そう言うのを何かの映画で見たことがある気がした。

 どうやらここは、アルフレッド専用のテントのようだが、なぜテントに寝泊まりしているのだろうか。彼らがどんな存在なのか俺はまだ知らないことに今更気づいた。

 今それを聞くのは野暮だと思い口を開きはしなかった。そんなことを考える余裕が自分にあることに少し驚いている。

「サタロー?」

「ひゃい!」

「……中に入らないのかい?」

 いきなり名前を呼ばれて声がうわずってしまう。
 前言撤回だ。余裕があるのではなく緊張し過ぎて現実逃避しようとしていただけだった。その証拠にテントの入り口から全く動いていなかったことにアルフレッドに声をかけられるまで気が付かなかった。

 アルフレッドは俺のように緊張している様子はなく、まるで自分の部屋に帰ってきたかのようにリラックスしている。
 上着を脱いでベッドに座り、きっちりと首元まで締められていたボタンを外している。そんな単純な動作でさえ絵になってしまうのだから罪な男である。

「おいでサタロー」

 彼は自分が座っているベッドの隣を手で叩き俺にそこに座るよう促す。俺は手と足が同時に動いていることにも気づかないほど緊張しながらアルフレッドの隣に座った。

「緊張してるかい?」

「は、はい!」

「ふふ、私もだよ」

「え、アルフレッドさんも緊張してるんですか?」

 表情にも動作にも緊張している様子が全く見られなかったが彼も緊張しているらしい、そういう風に振る舞っていたのだろうか。
 それとも俺を不安にさせないようにするための言葉なのだろうか。

「もちろん緊張しているよ」

 そう言ったアルフレッドは、俺の手を掴み自分の胸に俺の手を当てる。心臓の鼓動は少し早い気がするが、そんなことよりも逞しい胸の感触に俺の心臓が脈打つのを感じる。

 わざとやっているのだろうかと思うほど、アルフレッドの行動一つ一つが俺の鼓動を早める。
 俺は本当に彼に抱かれるのだろうか、今もまだ現実を受け入れられなくて長い夢でも見ている気分だ。

「サタロー」

 アルフレッドの心地よい声が俺の耳に流れ込んだと同時に、もはや三度目となるアルフレッドの唇の感触がした。

「んん、ぅん──はぁ」

 口を離すといつのまにか俺が締めていたネクタイと着ていたワイシャツのボタンが外されていた。息をするので精一杯だった俺は全く気づけなかった。

 アルフレッドは俺の肩を掴みそっと後ろに押す、俺はその力に従ってベッドに倒れ込んだ。
 アルフレッドの手が俺の顔の横に置かれ、俺を見下ろしている。つまり俺はアルフレッドを見上げているわけだが、彼の表情はライトの影になりうまく見ることはできなかった。だが、普段の穏やかなものではなく余裕のない表情をしているように見えた。

 自分は今からこの男に抱かれるのだと段々と実感が湧く。キスの先を想像するだけで鼓動がますます速くなる。
 
 前世でキスすらしたことのなかった俺はもちろんセックスなんて縁もゆかりもなかったわけで童貞だった。
 しかし今から失われるのは童貞ではなく処女である。
 友人に告白したということは少なからず彼とのそういう行為も想像していたわけで、俺は抱く側なんだと勝手に思っていた。

 結局そこまで辿り着くことはなかったが、俺の身長は178cmと普通の男性の身長よりも幾分か高かった。帰宅部だったから高いだけの頼りない男ではあったが……。だから高い方が攻めなんだと勝手に解釈していたし、男としては好きな人は抱きたいものである。

 しかし今から、この目の前のイケメン男に抱かれるわけだ。イケメンでカッコいいが彼のことをほとんどというか何も知らないわけで……見た目も中身もとても魅力的だが好きかと言われるとわからない。
 高い方が受け理論からいくと俺なんかよりだいぶ身長が高いアルフレッドに抱かれるのに異論はないのだが……。

 抱かれる側とはこんなに怖いものなのだろうか、女の子ってこんな思いをしているのか?
 俺はこの鼓動の速さが期待ではなく恐怖から来るものなんだと感じ始める。

「アルフレッドさん……お、れ」

 怖くなった俺はアルフレッドに助けを求めるように彼の腕を掴む。掴んだ手も発した声も言い訳できないほどに震えていた。

「怖いかい?」

「は……い」

 死ぬのが怖かったのにやるのも怖いってわがまますぎる俺の言葉に嫌な顔ひとつせずに、落ち着かせるように優しく俺を抱きしめてくれた。



◇◇◇


 
 どのくらい抱きしめていてくれただろうか、緊張と恐怖で冷え切っていた俺の体が彼の温もりでだいぶ落ち着いてきた。
 俺は一呼吸置き、彼に声をかける。

「アルフレッドさん、もう平気です」

「アル」

「え?」

「アル……そう呼んでくれないか? アルフレッドさんなんてなんだか余所余所しいだろ」

 彼は俺から体を離すとそう言った。確かに長いし言いづらいけれど、この状況でその要求は結構ハードルが高い。

「ほら、呼んでみて」

 少し意地悪な表情で彼は催促してきた。

「……ア、ル」

「うん、バッチリだよ」

 まるで恋人同士の会話みたいで体がむず痒い。

 そういえばさっきまでの恐怖心が全くなくなっていることに気づいた。これもアルのテクニックのうちだったのだろうか、それとも天然で言っているのだろうか。

 彼のことを全然知らない俺にはわからなかった。

 
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