47 / 127
第二章 本部編
45 狼の獣人・ルディ
しおりを挟む
俺を置いて言い合いをしているレオとクマの獣人アーサー。
出会って間もないアーサーだが確実にレオで苦労していることが彼の目の下の大きなクマから伺える。熊だけに……
レオみたいな男が机に向かって仕事をする姿なんて想像もつかないし、やったとしても確実に手直しが必要な書類になるに決まっている。
それでも隊長を務められているということは、戦闘面においてとても優秀なのだろう。
自由な上司をもつと部下も大変だなとアーサーに同情の目を向けている間も二人の言い争いは続いていた。
「せめて部下の訓練には顔をだせ!」
「えーめんどくさい、俺がいなくてもアイツら優秀だから大丈夫だって」
「少しは隊長らしいことしろ!」
「カリカリすんなって老けるぞ」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「ま、まさか、俺か!!」
「白々しい演技はやめろ」
言い争いは収まるどころかどんどん白熱していく。上司と部下の言い争いを見せられるために、俺は此処に呼ばれたのだろうか、だったら今直ぐにでも帰りたい。
「あのー、俺帰ってもいいか……」
俺の言葉にようやく俺がいることを思い出したのか、レオもアーサーも驚いた顔でこちらを向く。
「すまない、お客さんの前ではしたない姿をお見せして」
「いえいえそんな、気持ちはなんとなくわかるので……」
申し訳なさそうに謝罪してきたアーサーだが俺のフォローの言葉に目を潤ませて感動している。この人も随分苦労しているようだ。俺とアーサーの心が通じた瞬間だった。
そんな俺たちの気持ちなど全く知る由もない人物が若干一名この空間にいる。そいつは俺たちの顔を交互に見るとつまらなそうな顔をする。
「なんだよ俺をおいて二人で仲良くなっちゃってさー」
「そーだな、お前よりかは仲良くなれそうだ」
「はあ~、昨日あんなことしておいてよくいうよ」
「あんなこと?」
「聞きたいか? アーサー」
「な、なんでもないですから!」
不機嫌になったレオにここぞとばかりに仕返しの言葉をかけてやったら、とんでもないことを言おうとしたので必死に止める。
冗談でも言っていいことと悪いことがある。
せっかくレオの苦労を分かち合える人物に出会えたのに、昨日のことを話したら確実に引かれるに決まっている。
変人ばかりの魔法軍の本部内でまともな知り合いは貴重である。
アーサーは俺の反応に首を傾げ、俺は必死に誤魔化す。そんな俺をレオは笑って見ていた。恥というものを知らないのだろうかこいつは……
俺は話を逸らそうと気になっていた質問をレオにする。
「そんなことより、俺にアーサーを紹介したかったからここへ呼んだのか?」
「まぁ、アーサーを紹介したいのもあったけど、他にも」
──ガチャ
レオの話の途中で部屋の扉が開き誰かが部屋に入ってきた。どちらも耳と尻尾が生えているため獣人であることがわかる。
一人は俺より10センチほど身長が低く尖った耳に大きなふさふさな尻尾、銀色の髪が特徴的だ。
もう一人は、俺よりもかなり小さく見るからに子どもだ。こちらも尖った耳に細く長い尻尾、藍色の髪をしており首には鈴のついたチョーカーをしている。
「なんのようだよレオ!」
「どうしたの?あれ、だれだれ~?」
銀髪の少年はすこぶる不機嫌そうだが、対照的にちびっこはテンションが高く俺を見つけるとこちらに寄ってきた。
「おー、悪いな、お前たちに紹介したいやつがいたんだ!」
そう二人に向かってレオが言う。紹介したいやつというのはもしかして俺のことだろうか。
「紹介するよ!昨日知り合ったサタローだ!」
やはり俺のことだったらしい、レオは俺の肩に手を乗せて笑顔で俺の紹介をした。
俺の名前に銀髪の少年はピクリと反応を示し、俺の方へズカズカと歩いてきて真正面で止まると俺の顔を睨み見つめる。
鋭い目つきで怖い、垂れ目のおかげか若干その怖さは薄れてはいるものの確実に俺を威嚇している目つきだ。
「お前もしかしてギル副団長が連れ帰ったっていう……」
「え、うんそうだけど……」
睨みながら喋り始めた少年にビビりながら答える。そんなことよりも彼の歯が俗に言うギザ歯でめちゃめちゃ怖い。これ噛まれたら確実に食い千切られる。
「サタローとか言ったな、ギル副団長に気に入られてるからって調子に乗んなよ!」
「は、はあ……」
なんのこっちゃわからないが、とりあえず返事をしておいた。反論して逆らいでもしたら噛まれかねないからな。
今もなお俺を睨み上げ威嚇している少年に、誰か助けてくれと心の中で思っていると、俺の思いが通じたのか少年の首根っこを掴み俺から離してくれた。
「こら! 初対面で威嚇しない!!」
「ふん! 新人のくせにギル副団長に媚び売るから脅しただけだ!」
「脅すな!」
助けてくれたのはアーサー、やはり良い人だ。
俺のことを紹介したレオは首根っこを掴まれた少年を見てケラケラと笑っている。
「すまないサタロー、こいつは狼の獣人のルディだ」
「ルディはギルのこと大好きだからなー、ギルと仲のいいサタローに嫉妬してんだよ」
「ギル副団長がお前みたいな弱っちぃやつと仲良くなるわけねぇ!!」
首根っこを掴まれても懲りずに俺を威嚇してくる狼の少年ルディ。
なるほどねギルのことが大好きなのか、そう思うとなんだか可愛く見えてくる。ギルとは仲良くしているというか俺のことをよくしてくれているだけだから、心配いらないんだけどね。
あの様子だと俺が何を言っても逆効果だろうから黙っておこう。
出会って間もないアーサーだが確実にレオで苦労していることが彼の目の下の大きなクマから伺える。熊だけに……
レオみたいな男が机に向かって仕事をする姿なんて想像もつかないし、やったとしても確実に手直しが必要な書類になるに決まっている。
それでも隊長を務められているということは、戦闘面においてとても優秀なのだろう。
自由な上司をもつと部下も大変だなとアーサーに同情の目を向けている間も二人の言い争いは続いていた。
「せめて部下の訓練には顔をだせ!」
「えーめんどくさい、俺がいなくてもアイツら優秀だから大丈夫だって」
「少しは隊長らしいことしろ!」
「カリカリすんなって老けるぞ」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「ま、まさか、俺か!!」
「白々しい演技はやめろ」
言い争いは収まるどころかどんどん白熱していく。上司と部下の言い争いを見せられるために、俺は此処に呼ばれたのだろうか、だったら今直ぐにでも帰りたい。
「あのー、俺帰ってもいいか……」
俺の言葉にようやく俺がいることを思い出したのか、レオもアーサーも驚いた顔でこちらを向く。
「すまない、お客さんの前ではしたない姿をお見せして」
「いえいえそんな、気持ちはなんとなくわかるので……」
申し訳なさそうに謝罪してきたアーサーだが俺のフォローの言葉に目を潤ませて感動している。この人も随分苦労しているようだ。俺とアーサーの心が通じた瞬間だった。
そんな俺たちの気持ちなど全く知る由もない人物が若干一名この空間にいる。そいつは俺たちの顔を交互に見るとつまらなそうな顔をする。
「なんだよ俺をおいて二人で仲良くなっちゃってさー」
「そーだな、お前よりかは仲良くなれそうだ」
「はあ~、昨日あんなことしておいてよくいうよ」
「あんなこと?」
「聞きたいか? アーサー」
「な、なんでもないですから!」
不機嫌になったレオにここぞとばかりに仕返しの言葉をかけてやったら、とんでもないことを言おうとしたので必死に止める。
冗談でも言っていいことと悪いことがある。
せっかくレオの苦労を分かち合える人物に出会えたのに、昨日のことを話したら確実に引かれるに決まっている。
変人ばかりの魔法軍の本部内でまともな知り合いは貴重である。
アーサーは俺の反応に首を傾げ、俺は必死に誤魔化す。そんな俺をレオは笑って見ていた。恥というものを知らないのだろうかこいつは……
俺は話を逸らそうと気になっていた質問をレオにする。
「そんなことより、俺にアーサーを紹介したかったからここへ呼んだのか?」
「まぁ、アーサーを紹介したいのもあったけど、他にも」
──ガチャ
レオの話の途中で部屋の扉が開き誰かが部屋に入ってきた。どちらも耳と尻尾が生えているため獣人であることがわかる。
一人は俺より10センチほど身長が低く尖った耳に大きなふさふさな尻尾、銀色の髪が特徴的だ。
もう一人は、俺よりもかなり小さく見るからに子どもだ。こちらも尖った耳に細く長い尻尾、藍色の髪をしており首には鈴のついたチョーカーをしている。
「なんのようだよレオ!」
「どうしたの?あれ、だれだれ~?」
銀髪の少年はすこぶる不機嫌そうだが、対照的にちびっこはテンションが高く俺を見つけるとこちらに寄ってきた。
「おー、悪いな、お前たちに紹介したいやつがいたんだ!」
そう二人に向かってレオが言う。紹介したいやつというのはもしかして俺のことだろうか。
「紹介するよ!昨日知り合ったサタローだ!」
やはり俺のことだったらしい、レオは俺の肩に手を乗せて笑顔で俺の紹介をした。
俺の名前に銀髪の少年はピクリと反応を示し、俺の方へズカズカと歩いてきて真正面で止まると俺の顔を睨み見つめる。
鋭い目つきで怖い、垂れ目のおかげか若干その怖さは薄れてはいるものの確実に俺を威嚇している目つきだ。
「お前もしかしてギル副団長が連れ帰ったっていう……」
「え、うんそうだけど……」
睨みながら喋り始めた少年にビビりながら答える。そんなことよりも彼の歯が俗に言うギザ歯でめちゃめちゃ怖い。これ噛まれたら確実に食い千切られる。
「サタローとか言ったな、ギル副団長に気に入られてるからって調子に乗んなよ!」
「は、はあ……」
なんのこっちゃわからないが、とりあえず返事をしておいた。反論して逆らいでもしたら噛まれかねないからな。
今もなお俺を睨み上げ威嚇している少年に、誰か助けてくれと心の中で思っていると、俺の思いが通じたのか少年の首根っこを掴み俺から離してくれた。
「こら! 初対面で威嚇しない!!」
「ふん! 新人のくせにギル副団長に媚び売るから脅しただけだ!」
「脅すな!」
助けてくれたのはアーサー、やはり良い人だ。
俺のことを紹介したレオは首根っこを掴まれた少年を見てケラケラと笑っている。
「すまないサタロー、こいつは狼の獣人のルディだ」
「ルディはギルのこと大好きだからなー、ギルと仲のいいサタローに嫉妬してんだよ」
「ギル副団長がお前みたいな弱っちぃやつと仲良くなるわけねぇ!!」
首根っこを掴まれても懲りずに俺を威嚇してくる狼の少年ルディ。
なるほどねギルのことが大好きなのか、そう思うとなんだか可愛く見えてくる。ギルとは仲良くしているというか俺のことをよくしてくれているだけだから、心配いらないんだけどね。
あの様子だと俺が何を言っても逆効果だろうから黙っておこう。
129
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる