1 / 1
コロちゃんと桜の木
しおりを挟む
それはとても月のきれいな夜でした。
今日のお月様はなんだかホカホカの玉子焼きのようです。
今にもバターの香りが夜の風に乗って、コロちゃんの所まで降りてきそうでした。
なんだか今日はとってもいい夢が見られそうな気がします。
夜の風がそよそよとコロちゃんのヒゲを揺らしました。
コロちゃんが夢の旅に出ようとしていたその時、ヒゲをチョンチョンと引っ張られました。
ん~?と片目を開けると、そこには一羽のスズメさんが居ました。
「こんばんは、コロちゃん」
スズメさんは丁寧に頭を下げました。
コロちゃんは眠たい目をこすりながら、お座りをすると頭を下げました。
「こんな夜遅くにどうしたの?」
鳥たちが夜は木のゆりかごでお休みしている事をコロちゃんは知っていました。
「コロちゃんを迎えに来たのよ」
チュンと鳴くと、スズメさんは器用に首輪についたチェーンを口ばしで外しました。
お月様の照らす夜の道はキラキラ輝いていました。
空から落ちた星が地面にぶつかると、チリンと鈴のような澄んだ音が鳴ります。
「どこにいくの?」
スズメさんはチュンとだけ答えました。
魚がサンバを踊る海を渡りました。
花たちが歌う森を抜けると、そこには小さな丘がありました。
小高い丘はとっても明るく、まるでお日様が顔を出したみたいです。
そして、丘の丁度真ん中には裸の大きな木が生えていました。
その木の周りを取り囲むように、動物たちが集まっています。
「コロちゃん、こっちに来て」
振り向くと、スズメさんは木の上に登っています。
えいっ!と木によじ登り、スズメさんの隣に座りました。
周りを見ると、みんな木に登り、枝に腰を掛けています。
木の上から見た街の景色は、キラキラ輝き、空の星を写したようです。
コロちゃんはどっちが空か分からなくなってきました。
ん~と首をひねると、コロちゃんの頭に葉が落ちてきました。
見渡すと裸だった木には青々とした葉が生い茂っています。
再び、ん~と首をひねると、街の景色が遠ざかっている事に気が付きました。
木は葉っぱをつけながら、ぐんぐん大きくなり、みんなを乗せながらにょきにょき空に向かって伸びていきます。
ぐんぐん、ぐんぐん。
街が小さくなり、山が小さくなり、海が小さくなった時。
木はお月様までその幹を伸ばしました。
お月様に降りると、とってもいい匂いがしました。
バターの香りです。
コロちゃんは鼻をくんくん鳴らすと、ぱくっと一口食べました。
口の中で玉子がトロッと溶け、体全体にバターの香りが広がります。
なんだかとっても幸せな気持ちになりました。
「スズメさん。なんで僕をここに連れてきてくれたの?」
コロちゃんはスズメさんが迎えに来た理由が知りたくてしょうがありませんでした。
「コロちゃんに優しくしてもらったからよ」
ん~と首をひねりましたが、まったく心当たりがありません。
「いいの。お礼がしたかっただけなの」
スズメさんはなんだかとっても難しい事を言うと、コロちゃんは思いました。
「コロちゃんさえよければ、ずっとここに居てもいいんだよ。ここに居れば鎖で繋がれる事もないし、いつだって何処にだっていけるよ?」
それはとっても素敵な話だと、コロちゃんは思いました。
周りを見ると、みんな丸くなり眠ってしまっています。
「みんなどうしたの?」
コロちゃんはスズメさんに聞きました。
「お日様が起きる時間だから、お月様は寝るのよ。だから、ここにいるみんなも寝るの」
ふ~んとうなずくと、コロちゃんも丸くなりました。なんだかとっても眠くなってきました。うとうとしかかかったその時、コロちゃんの耳に自分を呼ぶ声がしました。
はっと顔を上げて下を見ます。
姿も形も見えませんでしたが、確かに自分を探す声が聞こえてきました。
「帰らなきゃ!」
コロちゃんは急いで木に向かって走ります。
木は桃色の花びらをちらちら散らしながら、どんどん小さくなっていきます。
コロちゃんはその木にぎゅっと目をつぶり必死にしがみ付きました。体がどんどん落ちていってしまうようでした。
名前を呼ばれて、コロちゃんは目を開けました。
優しく頭を撫でられ、茶碗にご飯を入れてもらいました。
空を見ると、お日様が顔を出しています。
目を細めたコロちゃんの首輪から、一枚の桜の花びらが落ちました。
今日のお月様はなんだかホカホカの玉子焼きのようです。
今にもバターの香りが夜の風に乗って、コロちゃんの所まで降りてきそうでした。
なんだか今日はとってもいい夢が見られそうな気がします。
夜の風がそよそよとコロちゃんのヒゲを揺らしました。
コロちゃんが夢の旅に出ようとしていたその時、ヒゲをチョンチョンと引っ張られました。
ん~?と片目を開けると、そこには一羽のスズメさんが居ました。
「こんばんは、コロちゃん」
スズメさんは丁寧に頭を下げました。
コロちゃんは眠たい目をこすりながら、お座りをすると頭を下げました。
「こんな夜遅くにどうしたの?」
鳥たちが夜は木のゆりかごでお休みしている事をコロちゃんは知っていました。
「コロちゃんを迎えに来たのよ」
チュンと鳴くと、スズメさんは器用に首輪についたチェーンを口ばしで外しました。
お月様の照らす夜の道はキラキラ輝いていました。
空から落ちた星が地面にぶつかると、チリンと鈴のような澄んだ音が鳴ります。
「どこにいくの?」
スズメさんはチュンとだけ答えました。
魚がサンバを踊る海を渡りました。
花たちが歌う森を抜けると、そこには小さな丘がありました。
小高い丘はとっても明るく、まるでお日様が顔を出したみたいです。
そして、丘の丁度真ん中には裸の大きな木が生えていました。
その木の周りを取り囲むように、動物たちが集まっています。
「コロちゃん、こっちに来て」
振り向くと、スズメさんは木の上に登っています。
えいっ!と木によじ登り、スズメさんの隣に座りました。
周りを見ると、みんな木に登り、枝に腰を掛けています。
木の上から見た街の景色は、キラキラ輝き、空の星を写したようです。
コロちゃんはどっちが空か分からなくなってきました。
ん~と首をひねると、コロちゃんの頭に葉が落ちてきました。
見渡すと裸だった木には青々とした葉が生い茂っています。
再び、ん~と首をひねると、街の景色が遠ざかっている事に気が付きました。
木は葉っぱをつけながら、ぐんぐん大きくなり、みんなを乗せながらにょきにょき空に向かって伸びていきます。
ぐんぐん、ぐんぐん。
街が小さくなり、山が小さくなり、海が小さくなった時。
木はお月様までその幹を伸ばしました。
お月様に降りると、とってもいい匂いがしました。
バターの香りです。
コロちゃんは鼻をくんくん鳴らすと、ぱくっと一口食べました。
口の中で玉子がトロッと溶け、体全体にバターの香りが広がります。
なんだかとっても幸せな気持ちになりました。
「スズメさん。なんで僕をここに連れてきてくれたの?」
コロちゃんはスズメさんが迎えに来た理由が知りたくてしょうがありませんでした。
「コロちゃんに優しくしてもらったからよ」
ん~と首をひねりましたが、まったく心当たりがありません。
「いいの。お礼がしたかっただけなの」
スズメさんはなんだかとっても難しい事を言うと、コロちゃんは思いました。
「コロちゃんさえよければ、ずっとここに居てもいいんだよ。ここに居れば鎖で繋がれる事もないし、いつだって何処にだっていけるよ?」
それはとっても素敵な話だと、コロちゃんは思いました。
周りを見ると、みんな丸くなり眠ってしまっています。
「みんなどうしたの?」
コロちゃんはスズメさんに聞きました。
「お日様が起きる時間だから、お月様は寝るのよ。だから、ここにいるみんなも寝るの」
ふ~んとうなずくと、コロちゃんも丸くなりました。なんだかとっても眠くなってきました。うとうとしかかかったその時、コロちゃんの耳に自分を呼ぶ声がしました。
はっと顔を上げて下を見ます。
姿も形も見えませんでしたが、確かに自分を探す声が聞こえてきました。
「帰らなきゃ!」
コロちゃんは急いで木に向かって走ります。
木は桃色の花びらをちらちら散らしながら、どんどん小さくなっていきます。
コロちゃんはその木にぎゅっと目をつぶり必死にしがみ付きました。体がどんどん落ちていってしまうようでした。
名前を呼ばれて、コロちゃんは目を開けました。
優しく頭を撫でられ、茶碗にご飯を入れてもらいました。
空を見ると、お日様が顔を出しています。
目を細めたコロちゃんの首輪から、一枚の桜の花びらが落ちました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる