19 / 19
おまけ これがほんとうのえんでぃんぐ?
しおりを挟む
空は青。
やわらかな陽光の差し込む教室。
寝ぐせのようにぼさぼさな、赤毛の女子生徒が一人。
窓際の席に座って文庫本を読んでいる。
楽しげに微笑を浮かべながら、ぺらりページをめくる。
唐突に、ぷ、と吹き出した。
そっとページを戻すと、また、ぷふっと吹いた。
あははと笑いながらちょっと足をバタつかせていると、突然、後ろのドアが開いた。
「おっ、まだ帰ってないのか」
ポニーテールの女子生徒が教室に入ってきて、赤毛女子の横に立った。
ちょっと目の吊り上がった、キツイ感じに見える女子である。
「読書なんて珍しいな。なあにを読んでんだあ?」
その質問に、赤毛女子は人差し指で本にしおりをしながらポニーテールの女子を見上げる。
「知ってますかあ、ファイトモデルっていうジャンルの若い人向けの小説なんですけど」
「それいうならライトノベルだろ」
「そ、そうともいうかも知れませんが」
「いや、そうとしかいわないから。んで、どんなタイトル読んでんだよ」
ポニーテールの女子生徒は、赤毛女子の手にしている文庫本のカバーを覗き込んだ。
太った丸文字で、「いたくないっ!」とタイトルが書かれている。
文字同様に丸々と太った、オカッパ頭で黒縁眼鏡のブッサイクな詰襟制服姿の男子が二人と、ガリガリに痩せた男子が一人、どこにでもいそうな地味顔で小柄な眼鏡女子が一人、背景に女性戦士のようなシルエットが数人、というカバー絵だ。
「クラスの子に借りたんです。オタクとかそういうの、私よく分からないんですけど、でもこれ、読むとなんか笑っちゃうんですよねえ」
「へえ。……つうか、文字読めるのか? こないだ国語赤点だったろ? ひらがなカタカナのとこだけ読んで内容分かるの?」
「そ、そーっ、そうやってえっ、いま私をバカにすることに、なんの意味があるんですかあああ!」
「ムキになるなよ。ごめんごめん。冗談だってば。なに涙目になってんだよ。泣くなよ高校一年にもなってさあ」
「泣いてません。目が疲れただけです。……ちゃんと、読めてますよ。漢字もひらがなもカタカナも数字も。あと数ページで、終わりなんですから」
「おー、そっかそっか。悪かったな、読書タイムを邪魔しちゃって。そんじゃ、あたし先に帰るわっ」
ポニーテールの女子が後ろのドアから出ていって、一人に戻った赤毛の女子生徒は読書を再開。
ぺらり、ページをめくり、
時折、ぷっと吹き出しながらも、読み進め、
そして、読み終えた。
ふふ、と微笑みながら、
ぱたん
本を閉じると、
すべては、真っ暗になりました。
おしまい。
やわらかな陽光の差し込む教室。
寝ぐせのようにぼさぼさな、赤毛の女子生徒が一人。
窓際の席に座って文庫本を読んでいる。
楽しげに微笑を浮かべながら、ぺらりページをめくる。
唐突に、ぷ、と吹き出した。
そっとページを戻すと、また、ぷふっと吹いた。
あははと笑いながらちょっと足をバタつかせていると、突然、後ろのドアが開いた。
「おっ、まだ帰ってないのか」
ポニーテールの女子生徒が教室に入ってきて、赤毛女子の横に立った。
ちょっと目の吊り上がった、キツイ感じに見える女子である。
「読書なんて珍しいな。なあにを読んでんだあ?」
その質問に、赤毛女子は人差し指で本にしおりをしながらポニーテールの女子を見上げる。
「知ってますかあ、ファイトモデルっていうジャンルの若い人向けの小説なんですけど」
「それいうならライトノベルだろ」
「そ、そうともいうかも知れませんが」
「いや、そうとしかいわないから。んで、どんなタイトル読んでんだよ」
ポニーテールの女子生徒は、赤毛女子の手にしている文庫本のカバーを覗き込んだ。
太った丸文字で、「いたくないっ!」とタイトルが書かれている。
文字同様に丸々と太った、オカッパ頭で黒縁眼鏡のブッサイクな詰襟制服姿の男子が二人と、ガリガリに痩せた男子が一人、どこにでもいそうな地味顔で小柄な眼鏡女子が一人、背景に女性戦士のようなシルエットが数人、というカバー絵だ。
「クラスの子に借りたんです。オタクとかそういうの、私よく分からないんですけど、でもこれ、読むとなんか笑っちゃうんですよねえ」
「へえ。……つうか、文字読めるのか? こないだ国語赤点だったろ? ひらがなカタカナのとこだけ読んで内容分かるの?」
「そ、そーっ、そうやってえっ、いま私をバカにすることに、なんの意味があるんですかあああ!」
「ムキになるなよ。ごめんごめん。冗談だってば。なに涙目になってんだよ。泣くなよ高校一年にもなってさあ」
「泣いてません。目が疲れただけです。……ちゃんと、読めてますよ。漢字もひらがなもカタカナも数字も。あと数ページで、終わりなんですから」
「おー、そっかそっか。悪かったな、読書タイムを邪魔しちゃって。そんじゃ、あたし先に帰るわっ」
ポニーテールの女子が後ろのドアから出ていって、一人に戻った赤毛の女子生徒は読書を再開。
ぺらり、ページをめくり、
時折、ぷっと吹き出しながらも、読み進め、
そして、読み終えた。
ふふ、と微笑みながら、
ぱたん
本を閉じると、
すべては、真っ暗になりました。
おしまい。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる