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第六章 追憶の魔船
第七十九話 闇対闇の対峙
しおりを挟む目の前には人型の異様な相貌をした魔物がいた。
「な、なんだ、あの化物は?」
「あれが、ドラゴスキュラの本体が進化した姿か?」
ヒョウが思わず、驚嘆して声音を上げる。
誰の目にも、一瞬のうちに強敵だと悟った。
だが、レヴェルだけは違った。勝てる、そういった余裕のある顔つきをしていた。
「超状進化! おお、力が満ち溢れる。この姿になったのは古代にお前と戦ったとき以来だ、死霊騎士、いや、アオンよ」
ドラゴスキュラは手を大の字に広げながらいった。
自信に満ち溢れている。可也の瘴気を発していた。
ファイが剣を構え直し、口を開いた。
「超状進化? ふざけるな。どうなっても、俺は負けない」
そういった矢先だった。
ファイと少し離れた場所で、宙から徐々に降下し、地面に死霊騎士は足をついて、兜を手で抱えた。
「ほう、ぐぬぬ、頭がまだ痛む。魔骨兜を制御できぬ。ドラゴスキュラめ、最後の術を展開させたか。だが、我の敵ではない。もう一度、石の中に眠らせてやろうぞ」
「ほざけ、アオン、くらぇー、獄斬刃砲!」
「まずい、みんな跳べ!」
DWWWOOOOOOOOON!
ドラゴスキュラは一瞬のうちに魔闘気を爆発させ、技を解き放った。
辺り一面が爆発的な熱量の一撃で火の海と化した。地盤が抉れ、溶け爆ぜる。
この凄まじい一撃をファイたちは躱し、次の一撃に備え構えた。
誰の目にも苦渋の色が満ちた。
「くそ、なんて破壊力だ。さっきよりもパワーが上がってる」
「あれが、奴さんの最終形態だろうぜ。だが、それを打ち斃す」
ファイの言葉にヒョウが剣を構えながら言った。
隣にキュラが瞬速移動で舞い降りてきた。
「私もいる。ここは力を合わせて、奴を斃すぞ、ファイ」
「キュラ様。ああ、そうだな、レギンのおっさん、それにレヴェルさん、総力戦だ」
「坊主、油断するなよ。奴は一瞬のスキをついて、あの強烈な破壊砲をぶっぱなすぞ」
レギンが頬の汗を拭いながらいったときだった。
レヴェルが魔剣の段平を裏返し、振り被った。
「みなよ、俺についてこい。俺が奴のエナジーをもう一回、吸い取ってやる」
いうと、レヴェルはドラゴスキュラの方に駆け、ジりりと間合いを詰めていく。
そのときだった。
「ぐぬぬ、魔骨兜(デスボーンヘルム)め、頭が痛む、ググ、制御できぬ」
「死霊騎士が苦しんでいる? 今のうちだ、オリヴィエさんを助ける」
一瞬、死霊騎士を一瞥し、オリヴィエさんの方にファイは駆けた。
レギンが割って入ってきた。
「まて、坊主、奴がそうはさせてくれないようだぜ」
「フハハ、泣き言はそれくらいにしとくんだな。この姿になるとね、理性なんて、我は制御できなくなるのだよ」
「なんて、オーラだ」
ドラゴスキュラが宙を浮遊しながら、隙があらば、襲い来る間合いまでじっくり詰めてきていた。
だが、ドラゴスキュラは何を考えているのか次の攻撃に移らなかった。
間合いはもうない。どっちも動けずの状態だった。襲い掛かれば、対処できなければいかにファイたちであろうと、強力な一撃で死に至る可能性もあった。
「古代昔にアオンにはこの姿で負けたが、今回の超状進化は昔のままではないのだよ。魔王アガスラーマ様の力により、魔力が桁外れに上がっているのだよ」
「なに!」
「これがどういうことだか、わかるか? お前たちは死ぬしかないということだ」
ドラゴスキュラがそういったときだった。
レヴェルがギラリと眼光を放った。
「減らず口が過ぎる野郎だ、もっかい寝んねしてな」
一瞬のうちだった。レヴェルが宙にジャンプし、魔剣を振り被った。
「闇剣(ダークブレイド)!」
瞬足にレヴェルが放った闇の刃靭はドラゴスキュラを真向から迎え撃った。
しかし、前とは違い、これに動じるドラゴスキュラでもなかった。
「なんのこれしきのこと」
ドラゴスキュラは上手く、第一撃を躱した。
しかし、レヴェルもそれは見越していた。
すぐさま、次の攻撃に移っていた。レヴェルの手に闇の魔闘気が集まり、瞬間的に爆発した。
「お構いなしにいくぞ! そうれ、連撃だ!」
レヴェルはドラゴスキュラに、次々と音速のダークブレイドの刃靭を何撃も繰り出し、ぶつけていく。
だが、レヴェルのこの攻撃でさえ、ドラゴスキュラは上手く紙一重で、次々躱す。
しかし、躱されたとしても、攻撃をできないように、足止めはできていた。
だが、闇の魔闘気をレヴェルは使っていた。
ファイがその異変に気付いた。
「レヴェルさん、あなた身体が!」
「血か。わかっているさ、だが、最終的に奴を仕留めれば、エナジーが戻る。俺はそれで生きれるさ」
レヴェルは血を垂らしながらも、攻撃の手を未だやめなかった。
苦しそうにみえる。しかし、レヴェルには余裕がまだあった。
ドラゴスキュラがニヤリと躱しながら不敵な笑みをみせた。眼光を光らせる。
「フハハ、死ぬ方が早いのじゃないか。闇の魔剣士よ、手負いでは我のスピードについてこれぬぞ」
「もらったぁ」
「なに、消えた?」
ダークブレイドを放つのをやめ、レヴェルはドラゴスキュラがついてこれないくらい、速く瞬速移動で消えた。
ドラゴスキュラが顔を左右に振り、急いでレヴェルの居場所を探そうと躍起になっていた。そのときだった。
「ここだ!」
「しまったぁ!」
レヴェルは魔剣を翳し、ドラゴスキュラの斜め前、上から現れ、大きく肩を振り被った。
レヴェルのこの一撃は、簡単にドラゴンなどの首を飛ばせるくらいの切れ味はあった。
だが、相手は超状進化をした伝説の魔物だった。
並大抵の相手ではない。ドラゴスキュラは冷淡な笑みを浮かべた。
見切られていた? いや、ドラゴスキュラの察する能力が、レヴェルより速かった。
「獄腕撃!」
DOWOOOOOOON!
なんと、頭に斬りこむ瞬間に、ドラゴスキュラは自身の肩を魔剣で斬らせ、身を呈して、腕から獄腕撃をレヴェルにお見舞いした。
それを真面にレヴェルは喰らった。生きているのか。
レヴェルにぶつかった瞬間、ドラゴスキュラの一撃で大爆発が起きた。
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