上 下
24 / 200
第十章 復活されし魔神

第百二十五話-5 超弩弓作戦

しおりを挟む

アザレはアジトの建物に戻ってきており、階段を急いで駆け上がっていった。


 アジトの部屋の入り口付近でテアフレナが出迎えてくれた。



 アザレは何か聞きたいのか、テアフレナに慌てながら早急にいった。


「テアフレナ、あの意思疎通のアイテムはないか」


 テアフレナは、何のことかわからず、怪訝な面持ちで言った。


「魔法羽ですか。キュラと私が懐に一つずつ、いつも持っています」


 テアフレナが首を傾げた。


 続けて言葉を紡いだ。


「キュラは緊急事態のために常時もっていますよ」


「よし、では、テアフレナ、キュラと早急に連絡を取ってくれ」


「わかりました」


 アザレの言葉を聞くと、テアフレナは魔法羽を懐からとって魔力を使い実行に移した。


 そのころ、戦場では死闘が続いていた。


 かなりの建物が完全に破壊されていた。


 キュラが急いでファイにいった。


「ファイ、右に飛べ」


「わかった」


 紙一重で巨人の凄まじいパンチをファイは躱した。


 パンチの衝撃で地面が割れ、えぐれた。


 そのときだった。


「(キュラよ、わしじゃ、アザレじゃ)」


「これは意思疎通、魔法羽か」


 キュラは巨人と距離を取り、魔法羽を引き出した。


 アザレの声は、テアフレナの魔力を通じ、キュラの脳内に聞こえていた。


「(きこえるか、キュラよ、巨人をうまくいけば、仕留める方法があるぞ)」


「どういうことだ、アザレ副将軍」


「(城などを破壊するときに用いられる、弩弓がこのティアランタ防衛軍にあるのじゃ)


「まさか?」


 キュラが驚いた顔つきをした。


 アザレは自信たっぷりな声で言う。


「(それを、巨人にぶつける)


「弩弓で倒すというのか」


「(一か八かじゃ。ただ、一回撃つと次発射するのに、かなりの時間を要する。それに巨人の動きを止めておくこと
も重要だ)」


「なるほどな、動かれるとだめだということか」


 キュラの表情に少しだけ笑みが浮かんだ。


 そして、魔法羽に魔力を宿しながらキュラはいった。


「よし、アザレ副将軍、それを使用してくれ」


「(通達しておく。準備ができ次第、また連絡する)」


 アザレがそういうと、魔法羽のテレパシーは止まった。


 キュラはニヤリと不敵な笑みをもらした。


「なるほどな、アザレ殿も頭を使ったな」


「どうしたのですか、キュラ様」


 キュラの言葉を不思議に思ったのか、近くにいたエリューが声音を上げた。


「いや、エリュー、奴を倒せるやもしれん」


「どういうことですか」


 エリューは首を傾げた。


 そして、キュラは号令を全員にかけた。


「ファイ、ヒョウ、一旦、撤退だ」


「どういうことです、キュラ様」


 ファイが妙な顔をした。


 しかし、キュラの思惑には、アザレの作戦で形勢を逆転できる余地が生まれていた。


☆☆


 キュラたちは身を隠し街角の路地で形勢をみていた。


 ヒョウが重い口を開いた。


「なるほどな、城攻略用の弩弓を」


「やつは、力は凄いが、移動速度が遅いのが救いだ」


「あのスピードなら、建物を壊されるのも最小に抑えられる」


 キュラの作戦をきき、ファイたちが頷いた。


「そうと決まったら実行だ」


 ファイがそういうと、再び身を戦場に乗り出した。


 そして、キュラが言った。


「ファイ、ヒョウ、エリュー、奴を防衛軍司令部がある建物の大通りに誘導してくれ。そこで、奴の動きを止める」


「わかりました」「了解だ」


「では、いくぞ」


 いうと、みな作戦通りに動き出した。


 エリューは空を飛んで好機を伺っていた。




☆☆






 ファイが巨人の真正面から挑発的なポーズをとっていった。


「へ、巨人さんよ、こっちだ、見えねーのか、うすのろ」


巨人が向き直り、怒り狂った。


「ぐぬぬ、我を侮辱するのか。握り殺してやる」


 巨人が大通りに入った。


 それをヒョウも横みた。


「(奴さんはきたか、よし、どうにか足止めを)」


「(弩弓の位置は、恐らくあの、真正面の司令部の高台。だとすると、この大通りで奴を止めることができれば、当たる確率は高い)」


 ヒョウは熟考していた。


 そして、剣を構え視線をファイに向けた。


「ファイ、奴が逃げれないように俺が氷でゲートを作る。それまでどうにか食い止めてくれ」


「なるほどな、おう、いいぜ」


 きくと、ファイはまた前にでて挑発のポーズをとった。


「おーい、うすのろ、こっちだ。きこえねーのか」


「おのれぃ、まてぇ、握り殺してやる」


 ファイが後ろに逃げる。


 巨人も移動速度が遅いながらも追いかけていく。


 そのとき、エリューが空に浮かび、剣幕を光らせていた。


「ふぅ、ファイさんたちの戦いをみていて、わかったわ。皮膚はいくらしても切れない。だけど、皮膚からは人間と同じように神経の感覚があるはず」


「なら、だめでもやるしかない」


 その瞬間だった。


 エリューもためらいがあったのだろうが、仕掛けた。


 もうすでに魔法は詠唱してチャージしていた。


「やぁああぁ、フレアメテオ」


「な、なにぃ、燃える」


 なんと広範囲に炸裂するはずのフレアメテオを範囲を絞り、巨人の顔だけに炸裂させた。


 巨人の顔が炎でもえる。


 それは一向に消えようとしない。


「ぐああああ、熱い、熱い、息ができぬ、顔が」


 巨人の獰悪な甲高い声が地響きのように響いた。


「なるほどな、顔を燃やして、巨人の呼吸を止めたんだな、やるなエリュー」


 ファイがそういった矢先だった。


 エリューが攻勢に出た。


「まだまだぁ」


「やああぁ、ファイヤーウェーブ!」


 炎魔法、アータル系レベル3にあたる魔法だ。


 炎がウェーブし、波を打って巨人の顔に炸裂する。


 それをエリューは何発も叩き込んだ。


「があぁぁ、熱い、息が、息ができぬ」


 巨人は顔を抑え、炎を振り払おうとし、その場に沈み込んだ。


「やった、屈みこんだ。動きを止めた」


 この瞬間を見逃さなかった。


「今だ、アザレ!」


「よし、防衛軍長官頼む!」


「狙い、前方30度、超弩弓うてー」


DOWWOOOOOOONN!


「な、なに」


「ぐあはぁあぁぁツ」



 凄まじいスピードで飛んできた、弩弓は、巨人の胸を貫き、巨体事、後ろにあった建物に大きな音を立て、貫きめりこんだ。


 その場にいた誰もがこの衝撃に口を閉じた。


「なんて、強さだ、巨人の胸を貫通した」


「ぐ、ぐはぁ、我の無敵の装甲が、ぐはぁ」


 建物に串刺しになった巨人は憔悴しきっていた。


 もう余力が残っていない。


「魔界の巨人がこれしきのことで、これしきのことで」


「がはぁ」


 巨人タイアスは血反吐を吐いて、下を向いた。


 これが最期の断末魔となっていた。


「やったか、」


「建物に串刺しに」


「とどめだ」


 ファイが近寄って剣で切ろうとした。


 しかし、キュラが割って入った。


「ファイ、もういい、首を落とした、死んでいる」


 その制止したときだった。


 ウィードとサリアが片付いたのか、駆け寄ってきた。


「遅くなりました。どうにかリザードマン部隊を殲滅し、一体これは?」


 ウィードが巨人の馴れの果てをみて、びっくりした。


「これは、ティアランタの超弩弓? 一体だれが」


 ウィードはこのエトワル出身だ。帝国にいるため、武器は一通りは、知っていたのだ。


 キュラが言葉をつづった。


「ウィード様、サリアさん。アザレが機転を利かせてくれたのです」


「魔界の巨人も鋼鉄以上の破壊力をもった力と衝撃には耐えきれなかったんだろうぜ」


「よかった、全員無事だな。アジトに帰還するぞ」




 ファイの言葉をきいたキュラがそういうとアジトへ向かった。
































☆☆
遅い時間でも読んでくださっている方、ありがとうございます。
読んでくださっている方がいる限りこの物語は続きます。
また晩にお会いしましょう。
気に入ってもらえたらお気に入りお願いします。
しおりを挟む

処理中です...