上 下
192 / 200
第八章 堕天使レビが遺したもの

第百一話 疾風迅雷の雷撃!

しおりを挟む



キュラは疾風怒濤の勢いで、ゴエティアに向かっていく。
「カマキリムカデ、くるならこい。私が相手になってやる」
 凄まじいスピードで駆け、キュラはゴエティアの懐に飛び込んだ。

「いくぞ」
 キュラがゴエティアの胴体上らへんにスピードを付けてジャンプした。
 次の瞬間!

「やああぁッ『疾風雷神撃』」

DWOOONN!

 ムカデ胴体のおどろとした手足を斬っていく。
 その凄まじいスピードの上に雷光と稲光が生じていた。
 手足を何十にも斬っていく。
 ゴエティアは斬られた痛さで大きな体を震わせた。
 だが、敵に容赦なく、キュラは猛攻を仕掛けた。

「まだまだぁッ」
 手足を雷光の斬撃で切り、大きく後ろへ飛び退いた。
 ゴエティアの鼓動が聞こえる。

「GUWWOON!」
 凄まじい轟音の声音もいざ知らず、瞬時にキュラは両手に魔法力を発生させた。
 これは、魔法か?

 次の瞬間、凄まじいスピードの魔法が瞬撃した!
「雷風波(サンダーウェーブ)! 連撃!」
 雷(シャイニング)系の雷魔法だ。レベル3にあたる。
 雷の波動のエネルギーが雷のエネルギーとスパークを生じ、次々とゴエティアに炸裂していく。
 ゴエティアの雄叫びが木魂する。
 雷魔法はすかさず、何十発も撃ち込まれた。

 雷のエネルギーが拡充して、爆発が生じた。
 旋風が衝撃で巻き起こった。
 だが、キュラは手を緩めなかった。

「やあぁぁッ、もう一撃!」
 そういい、魔法を解き、ゴエティアの懐に剣を構え突っ切っていく。
「これでどうだぁ!」
 次の瞬間、キュラの一撃が勝機を決した。
「魔法剣ライジングスラッシュ!」

DWOONN!

 キュラの魔法剣の剣技だ。スパークが飛び散り、それはゴエティアの胴体にまともに炸裂した。
 血飛沫が飛んだ。
 余りの展開の速さに面子は息を呑んだ。
 キュラはまだ余裕だった。

 怪我を治してもらっていた、ウィードはこの一連の模様をずっと見遣ってぼそりと声音をあげた。
「すごい、さすがソレイユ最強の魔法剣士だ」

「へ、さすがキュラ様じゃねーかよぉ」
 ファイもこのキュラの猛攻に感心していた。
 キュラの表情には余裕が見えるが、相当の魔法力を使ったのは目に見えていた。

「はぁ、はぁ、どうだ!」
 キュラがそういい、気合声をあげると、砂塵が収まりだした。
 収まり始めるとやつの身体がみえた。

「グヲオオオン!」
 ゴエティアが咆哮をあげた。

 なんと、ゴエティアの身体が二つに切り落とされていた。
 それでもなお、ゴエティアの上半身は宙に浮いていた。

「奴の胴体を真っ二つに斬った!」
「やったぁ、やったぁ、キュラ様ぁ~」
 ニミュエが飛び跳ねた。ボンにも笑みがみえる。
 テアフレナはだが、冷静だった。
「まだ、あれくらいじゃだめよ、魔界の魔物よ、頭が生きてるうちじゃ」
 そういったときだった。

 ゴエティアの切り口がもごもご動き出した。
 そして、一瞬のうちにまた下半身が再生した。
 全くの無傷に見える。

「な、斬った胴体からまた胴体が?」
 レイティスが唸った。

 キュラもそれを一瞥し、苦笑いした。
「くそ、なんて手強い奴だ。フレアメテオで動きを止めて、私のほぼ全力に近い突撃でも無傷なんて、魔界の怪物め、くそ」
「キュラ様、嘆くことはねーぜ、みろ、無傷のように見えても奴も生物だ。体力が落ちてきてるようだぜ、動きが鈍くなった」
 ファイが指さしていったときだった。

 近くにいたヒョウが動いた。
「今なら躱せまい! この時を待っていたぞ」
 そういい、キュラの右側から、奥の方へ、飛び跳ねた。
 ジャンプした状態で複雑な技の陣容を取っていく。
 この技の陣容はもしや?

「死ね、魔界の怪物、二度と目があけれないようにしてやる」
 ヒョウが空中でそういった矢先だった。
「ヒョウ、躱せ、奴の光る体毛だ!」
 ファイが急いで横やりを入れた。
 光る体毛が、ヒョウに発せられていく。

 ゴエティアも体力を失っており警戒していた。
 光る体毛は、幾度となく発せられた。
 限りがない。
「ちぃ、勘のいい奴だ」
 ヒョウがうまく躱しながらそういったときだった。
「風魔弾(ウィンドブリッド)巻き起これ風よ! 『ウィンドスライサー!』」

BWOOOONNN!

 ウィードが意思で操れる遠隔操作の武器を発し助け舟を出した。
 ウィンドブリッドから発せられた突風の斬りで、上手く光る体毛を全て駆逐させた。
「やれ、今だ、ヒョウさん!」

「(念動か)お力添え感謝する、いくぞ! ゴエティア!」
 ヒョウは複雑な陣容を完成させ、ラスタを爆発させた。
 次の瞬間だった。

「氷竜破(ブリザードドラゴン)」
 あのメドゥサを氷漬けにした氷の波動の竜撃だ!
 凄まじいスピードでゴエティアに向かっていく。
 もう距離がない。
 氷の竜波とゴエティアがぶつかる。

「GUWOOOOONN!」

「大鎌で抑えたか! だが、今のお前の体力では防ぎきれまい!」
 ゴエティアは必死に大鎌で受け抑え、氷の竜撃を弾こうとしていた。

 だが、体力が完全なら容易く相殺もできたか知らないが、今のゴエティアは、キュラとエリューの最強魔法の一撃でかなり体力が落ちていた。
 大鎌の抑えも、精彩にかけた。

 ヒョウは一瞬、不敵な笑みを見せた。
「ゆけ、氷の竜よ!」

SHUDAOOONN!

 ヒョウの竜撃がゴエティアに綻んでいく。 
 これが勝負を決した。
 ゴエティアは必死に押し返そうとするが、余力がなかった。
 ヒョウは竜撃の力を強めた。
 一瞬だった。
「ぐがぎゃあああぁ」
 ゴエティアの咆哮が鳴り響くと、それが最期の断末魔となっていた。
 その瞬間、ヒョウはニヤリと笑った。
 全員の顔に笑顔が見える。

「やった、やったわー、氷漬けよ」
「勝てたドン。よかったドン」
 ニミュエとボンが抱き合った。

 ファイが空中から降りてきたヒョウの近くに寄ってきた。
「なるほどな、跳ね返されるから、体力が落ちるのを狙ってたんだな、やるなヒョウ」
「フン、俺は意味のないことはしない」
 ヒョウは重苦しい声音で言った。
 目の前にはバカでかいあの巨体のゴエティアの氷漬けの標本が出来上がっていた。
 それを瞻、ファイは唖然となった。
「それにしてもカチカチじゃねーか、すげえ、グロテスクな標本だぜ」
「焼いて食うか?」
「おっさん、そりゃ、ねーだろ。ぜってぇ、おいしくねーよ」
 レギンの言葉に一同に笑みが起きた。
 ヒョウが続け様に釘を刺した。
「無駄だな、その氷は絶対に溶けない。俺が死ぬ以外解除方法はない」
「余談はそれくらいにしておけ、ファイ、みんな、手傷を負って辛いだろうが、回復魔法で回復次第、すぐに出るぞ。フォライーに先を越されてはまずい。レビ記の紙片は奪われたのだからな」

「了解だ、キュラ様」
 ファイは視線をキュラに向けた。
 キュラは視線で返事すると、テアフレナの方を向き直り言葉を紡いだ。
「回復魔法を使えるものは手当に回ってくれ。テアフレナ、頼む」
「判りました。姫様以外のものは戦ったものの手当てをしてくれ。ボンは魔法アイテムで頼む」
「わかったどん」「わかりました」
エリューとボンが笑顔で返事を返した。

ファイも肩の荷が下りたのか、へっちゃらな顔をしながら、戦いで倒れた木に腰かけた。
キュラはみなを一瞥しほほ笑んだ。
「治り次第、でるぞ」
「次はキュラ様どこへ?」
 レイティスが戸惑いながら言った。

「とりあえずだ、ストーム山脈を越えて、ヴォルスング都市にあるアジトへいく。デッドラインに差し掛かる直前の街だ。そこで英気を養ってすぐにエトワル帝国に向かう」
「は、わかりました」
 レイティスがそういうとキュラは空を見上げた。

 苦難がくる。敵が必ずデッドラインで出るのは必至だったのだ。






☆☆
アップ予定。感想おまちしてます。
しおりを挟む

処理中です...