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第八章 堕天使レビが遺したもの

第百六話 魔力解放

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ウィードが少女を助けた直後、デッドプラントと、ずっと対峙が続いていた。
 デッドプラントが口火を切った。
「くそ、妙な人間だ。人間の限界速度を超えている」
 その言葉にファイが不敵な顔で、ニヤリと笑いながら言った。

「今頃気づいたか、植物。頭も植物か」
「その拳に立ち込めている炎、それは魔闘気! ラスタか」
 デッドプラントはフォライーに何も聞かされてないようで、ファイの魔闘気であることにきがついた。

「お前ら魔神剣士か」

 ファイはデッドプラントの言葉にニヤリと笑った。
「へ、だからどうしたってんだ。もっかい根から再生にしてやるぜ」
「おのれぇ、小癪な。ほざきおって。こうなれば頂戴した魔力解放じゃ」
 その瞬間、デッドプラントの身体から光りが立ち込め、解放されていく。
 これは恐らく例の魔力だ。

「植物進化(プラントディパーチャー)」
 その瞬間、デッドプラントは光に包まれ動きが止まった。
 身体が大きく巨大化していく。
 ファイは顔をしかめた。

「な、巨大化?」
「いや違う、巨大化と同時に進化してるんだ」
 ウィードが考察してるように、即座に行った。
 ヒョウが打って出た。

「ファイ、みんな、攻撃の手を休めるな! 進化して止まっている今がチャンスだ」
 そういい、ヒョウは宙に飛び、魔剣を投げるような持ち方にし、構え直し、一瞬のうちにラスタを爆発させ集中させた。
「はぁああぁ、アイスランス!」

DWOOONNN!

一瞬のうちに通ったところが凍りつき、植物の身体を貫通した。しかし、体の本体はどこにあるか、わからず、ヒョウにしても憶測で攻撃したものだった。

 アイスランスの攻撃が見事に的中し、光り輝く体の一部が氷漬けになった。
 だが、光は凍っても留まるところを知らなかった。
 魔王の魔力だ。魔力が強すぎて植物の繁殖を止められないのだ。

「触手が凍る、おのれぃ」
 デッドプラントは舌打った。
 ファイがその瞬間、動いた。

「蕾が熟して花が咲くってやつか、植物モンスター」
 ファイはそういうと宙にジャンプし、植物モンスターの頭上に瞬速移動した。

 ファイが魔剣を振り上げると、莫大なラスタが魔剣に収束していく。
 この技はもしや?

「フレアストライク!」
 死霊魔兵を苦しめた、あの大技だ。
 しかし、ファイが大技に打って出たときには手遅れだった。

「しまった、遅かったか」
 舌打った時、植物の魔力解放と同時に進化は成功していた。

 なんと光が止まると、蕾が現れ、開き、その中からは人型のモンスターが出現した。
「くくく、人間は無能だ。我ら植物は魔王アガスラーマ様の魔力でいくらでも進化が可能だ」

「蕾から人が?」
「植物人間め」
 ウィードとファイが声を顕わにした。
 悔しさが滲み出ていた。
 
 人型に進化した植物人間は地に足をゆっくりと下ろした。
 並々ならぬ、気迫と瘴気を感じる。
 威圧感で、ファイは一歩後ずさりした。

「プラントドラゴン進化! 我の植物竜、第二形態を見たのはお前らが初めてだ」
「なに、プラントドラゴンだ?」「植物の竜?」
 ファイとウィードが言葉を濁した時だった。

「甘い! ローズアロー」

SHU!

「ぐはぁ」
「ヒョウ!」
 なんと、凄まじいスピードで、植物の矢がヒョウの肩を掠めた。
 ヒョウは反動で後ろに吹っ飛んだが、瞬時に起き上がり、肩をおさえた。
 血が出ている。
 ヒョウの顔が滲んだ。

「くそ、このやろう」
 ファイがその様をみて、怒り、歯ぎしりを噛んで対抗意識を燃やした。
 だが、植物人間はどうともせず、驕り高ぶっていた。

「今のは第一形態、植物体の時、凍らされて斬られた仇だ」
「速い、僕でも見えなかった」
 ウィードは目をパチクリしながら、眉間に皺を寄せ魔剣を構え直した。

 ファイはその間に負傷し蹲っている、ヒョウを抱きかかえ、立てるように補助した。
「ヒョウ、大丈夫か、立てるか」
「ちぃ、大丈夫だ、俺はそんなにやわじゃない」
「へ、だがよぉ、あの攻撃、早すぎてみえねーぞ」

 ファイが悔しそうな顔で言い放った時、後ろにいたレギンが動いた。
「スピードにはパワーだ」
 レギンはプラントドラゴンの頭上に瞬時に飛び込んだ。

「おうらぁ、イーリアの戦斧の刃靭をくらぇ」
「残念だったな、スピードだけじゃなく、パワーもあるようだ」
「ぐ、くそッ、俺の一撃が!」
 プラントドラゴンは屠ると、なんと重いであろう、レギンの一撃を片手で凌いでいた。

 レギンの腕が力で震える。
 プラントドラゴンのもう片方の手が攻撃態勢に入っていた。
「しねぇ、大男!」
「グハぁっ」
 右手から凄まじいスピードの刃靭が発せられた。

 それは見事にレギンに命中し、レギンは血が噴き出ると同時に後ろに吹っ飛んだ。
「おっさん!」

「ははは、ざまないな、変身した途端にこれだ。人間はもろい。こんなに無様だとはな」
「あいつ、植物の羽で空を飛んだぞ」
 ヒョウが顔を濁した。

 ファイは仲間が傷つくのが見てられないという面持ちだった。
 挑戦的な面構えで、プラントドラゴンを睨みつけた。

 傲慢に屠る進化したモンスターがはびこっていた。
 敵の絶対性をどう崩すか、それが勝機する算段だった。






☆☆
アップ予定。感想おまちしてます。
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