魔王ルシファーの異世界征服!〜異世界転移した最強の魔王は魔物を持ち帰り現代を侵略する〜

勇者れべる1

文字の大きさ
3 / 35

第三話「ルシファーズ・ハンマー(悪魔の鉄槌)、後編」

しおりを挟む
 第三話「ルシファーズ・ハンマー(悪魔の鉄槌)、後編」

 ―貿易街アルカディア

 ルシファーは情報収集の為の拠点を酒場と言う形で作ろうとしていた。
 そしてここは貿易街アルカディア、食料から武器、薬まで様々な商品が飛び交う所。
 そこにある寂れた場末の名も無い小さい酒場。
 そこに目を付けたルシファーはエルフの少女達とカースを店の外に待たせ一人店内に入った。
 そこにはこの店の主人と思われる老人がいた。

「お客さん、今は営業時間外だよ」

「なら丁度いい。この店を買いたくてね」

「この店を?およしなさい。大通りに新しい酒場が出来てからは常連さんさえ来てくれなくなっちまった。酒の仕入れルートも乗っ取られてもうお手上げさ」

「それなら尚丁度いい。美味いモヒートの材料を仕入れるルートを知っていてね。従業員も用意したんだ、ほら」

 パンパン

 ルシファーが手を叩くと先程契約したエルフの少女達が入って来る。
 酒場で働くにはギリギリの年齢だが、ここは現代じゃないのだから現代の法や倫理観は通じない。
 いやまあ現代でも悪魔達がそんな物を守る気が無いだろうが。

「しかしのう、ここにはあの店の用心棒が荒らしにやってくるんじゃ……それをどうにかせにゃ―」

 バタン!

 老店主が言い切る前に酒場の扉が勢いよく開かれる。
 そこには小柄な男一人と巨漢二人が立っていた。
 巨漢の男を引き連れた小柄な男がニヤニヤしながらその汚い口を開いた。

「おい爺さん、約束じゃあ今日立ち退く筈だったじゃねぇか。なんでまだいるんだよ」

「お、お前さん達にこの店はやらん!」

「なに!?」

「そうそう、この店は僕が買う事になっていてね」

「!?」

 突然老店主の前に出たルシファーを驚愕の目で見る老店主。
 焼け焦げた服を着た半裸の男だ、無理もない。
 ルシファーは別に老店主を助けるつもりで出たわけではないが、ここで暴れられても修復に時間と金がかかる。
 それは避けたかった。

「誰だ、てめぇ!」

「ここの新しい店主だよ。そうだ、記念すべきお客第一号として美味いモヒートを奢ってやろう」

「モヒートってなんだ?」

 女神同様に現代と異世界との知識のギャップにうんざりするルシファー。
 ルシファーが指を鳴らすとバーカウンターにラム酒、ミント、ライム、砂糖、炭酸水、氷が現れる。
 それぞれが女神が厳選した極上の一品であり、ルシファーはグラスにそれぞれ入れるとかき混ぜ最高のモヒートが完成した。

「さあ召し上がれ」

「なんでぇ、酒の事かよ。しかも他の店じゃ碌な酒が手に入らねぇんだ、うめぇ筈がねぇ」

「まあまあいいから飲んで」

「仕方ねぇーな……一杯だけだぞ?」

 ミントとライムの透き通る爽快感の後に極上のラム酒の味わいが口の中を襲う。
 それぞれの極上の材料が熟練したバーテンでもあるルシファーの計算した黄金比で混合され生み出される。
 その最高のモヒートにまずい!としか言わないと心に決めてた小柄な男は思わず美味い!と叫んでしまった。

「こ、こんな美味い酒どこで……いやそんなことはどうでもいい、お前さんうちの店で働かないか?金は弾むぜ?」

「悪いが人に使われるのは好きじゃないんだ」

「そうか、じゃあしかたねぇ、お前達!」

 小柄な男が合図すると後ろにいた巨漢二人がルシファーに襲い掛かった。
 ルシファーは巨漢の男の手を掴むと軽々と放り投げた。
 巨漢の男はむくりと立ち上がると再びルシファーに立ち向かっていく。
 しかしルシファーが手をかざすと巨漢達は前に進むことが出来ず足をばたばたとさせていた。

「君達の体は使える。ここで雇ってやろう」

 ルシファーは煙となった悪魔の入った小瓶を取り出すと蓋を開ける、今度は二本だ。
 煙となった悪魔達が巨漢の男達に口から入り乗り移った。
 巨漢の二人は白目の無い黒い瞳の悪魔となり、ルシファーに従う従順な下僕となった。

「じゃあ二人とも、この小猿君を追い出せ、多少痛めつけてな」

「「はい、ボス」」

 巨漢の悪魔二人は小柄な男を担ぎ上げると店外に出て行った。
 そこからは殴打の音と男の悲鳴が聞こえたがルシファーは気にも留めず老店主の方を向いた。

「じゃあ前オーナー殿、ここにサインすればこの金貨は君の物だ」

「おお!店を助けてくれたばかりかこんなボロい店に大金まで!」

「で、サインしてくれるのかな?」

「ああしますとも、しますとも!」

「ああちなみに契約破ったら地獄行きだからね」

「地獄?」

「魂が煉獄の炎で焼かれ永遠にあらゆる苦痛を受け続ける場所さ」

 この世界に地獄があるかは分からないが、ルシファーに逆らえば生き地獄を見る羽目になる。
 その赤く光る瞳を見て老店主は感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...