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第三話「ルシファーズ・ハンマー(悪魔の鉄槌)、後編」
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第三話「ルシファーズ・ハンマー(悪魔の鉄槌)、後編」
―貿易街アルカディア
ルシファーは情報収集の為の拠点を酒場と言う形で作ろうとしていた。
そしてここは貿易街アルカディア、食料から武器、薬まで様々な商品が飛び交う所。
そこにある寂れた場末の名も無い小さい酒場。
そこに目を付けたルシファーはエルフの少女達とカースを店の外に待たせ一人店内に入った。
そこにはこの店の主人と思われる老人がいた。
「お客さん、今は営業時間外だよ」
「なら丁度いい。この店を買いたくてね」
「この店を?およしなさい。大通りに新しい酒場が出来てからは常連さんさえ来てくれなくなっちまった。酒の仕入れルートも乗っ取られてもうお手上げさ」
「それなら尚丁度いい。美味いモヒートの材料を仕入れるルートを知っていてね。従業員も用意したんだ、ほら」
パンパン
ルシファーが手を叩くと先程契約したエルフの少女達が入って来る。
酒場で働くにはギリギリの年齢だが、ここは現代じゃないのだから現代の法や倫理観は通じない。
いやまあ現代でも悪魔達がそんな物を守る気が無いだろうが。
「しかしのう、ここにはあの店の用心棒が荒らしにやってくるんじゃ……それをどうにかせにゃ―」
バタン!
老店主が言い切る前に酒場の扉が勢いよく開かれる。
そこには小柄な男一人と巨漢二人が立っていた。
巨漢の男を引き連れた小柄な男がニヤニヤしながらその汚い口を開いた。
「おい爺さん、約束じゃあ今日立ち退く筈だったじゃねぇか。なんでまだいるんだよ」
「お、お前さん達にこの店はやらん!」
「なに!?」
「そうそう、この店は僕が買う事になっていてね」
「!?」
突然老店主の前に出たルシファーを驚愕の目で見る老店主。
焼け焦げた服を着た半裸の男だ、無理もない。
ルシファーは別に老店主を助けるつもりで出たわけではないが、ここで暴れられても修復に時間と金がかかる。
それは避けたかった。
「誰だ、てめぇ!」
「ここの新しい店主だよ。そうだ、記念すべきお客第一号として美味いモヒートを奢ってやろう」
「モヒートってなんだ?」
女神同様に現代と異世界との知識のギャップにうんざりするルシファー。
ルシファーが指を鳴らすとバーカウンターにラム酒、ミント、ライム、砂糖、炭酸水、氷が現れる。
それぞれが女神が厳選した極上の一品であり、ルシファーはグラスにそれぞれ入れるとかき混ぜ最高のモヒートが完成した。
「さあ召し上がれ」
「なんでぇ、酒の事かよ。しかも他の店じゃ碌な酒が手に入らねぇんだ、うめぇ筈がねぇ」
「まあまあいいから飲んで」
「仕方ねぇーな……一杯だけだぞ?」
ミントとライムの透き通る爽快感の後に極上のラム酒の味わいが口の中を襲う。
それぞれの極上の材料が熟練したバーテンでもあるルシファーの計算した黄金比で混合され生み出される。
その最高のモヒートにまずい!としか言わないと心に決めてた小柄な男は思わず美味い!と叫んでしまった。
「こ、こんな美味い酒どこで……いやそんなことはどうでもいい、お前さんうちの店で働かないか?金は弾むぜ?」
「悪いが人に使われるのは好きじゃないんだ」
「そうか、じゃあしかたねぇ、お前達!」
小柄な男が合図すると後ろにいた巨漢二人がルシファーに襲い掛かった。
ルシファーは巨漢の男の手を掴むと軽々と放り投げた。
巨漢の男はむくりと立ち上がると再びルシファーに立ち向かっていく。
しかしルシファーが手をかざすと巨漢達は前に進むことが出来ず足をばたばたとさせていた。
「君達の体は使える。ここで雇ってやろう」
ルシファーは煙となった悪魔の入った小瓶を取り出すと蓋を開ける、今度は二本だ。
煙となった悪魔達が巨漢の男達に口から入り乗り移った。
巨漢の二人は白目の無い黒い瞳の悪魔となり、ルシファーに従う従順な下僕となった。
「じゃあ二人とも、この小猿君を追い出せ、多少痛めつけてな」
「「はい、ボス」」
巨漢の悪魔二人は小柄な男を担ぎ上げると店外に出て行った。
そこからは殴打の音と男の悲鳴が聞こえたがルシファーは気にも留めず老店主の方を向いた。
「じゃあ前オーナー殿、ここにサインすればこの金貨は君の物だ」
「おお!店を助けてくれたばかりかこんなボロい店に大金まで!」
「で、サインしてくれるのかな?」
「ああしますとも、しますとも!」
「ああちなみに契約破ったら地獄行きだからね」
「地獄?」
「魂が煉獄の炎で焼かれ永遠にあらゆる苦痛を受け続ける場所さ」
この世界に地獄があるかは分からないが、ルシファーに逆らえば生き地獄を見る羽目になる。
その赤く光る瞳を見て老店主は感じた。
―貿易街アルカディア
ルシファーは情報収集の為の拠点を酒場と言う形で作ろうとしていた。
そしてここは貿易街アルカディア、食料から武器、薬まで様々な商品が飛び交う所。
そこにある寂れた場末の名も無い小さい酒場。
そこに目を付けたルシファーはエルフの少女達とカースを店の外に待たせ一人店内に入った。
そこにはこの店の主人と思われる老人がいた。
「お客さん、今は営業時間外だよ」
「なら丁度いい。この店を買いたくてね」
「この店を?およしなさい。大通りに新しい酒場が出来てからは常連さんさえ来てくれなくなっちまった。酒の仕入れルートも乗っ取られてもうお手上げさ」
「それなら尚丁度いい。美味いモヒートの材料を仕入れるルートを知っていてね。従業員も用意したんだ、ほら」
パンパン
ルシファーが手を叩くと先程契約したエルフの少女達が入って来る。
酒場で働くにはギリギリの年齢だが、ここは現代じゃないのだから現代の法や倫理観は通じない。
いやまあ現代でも悪魔達がそんな物を守る気が無いだろうが。
「しかしのう、ここにはあの店の用心棒が荒らしにやってくるんじゃ……それをどうにかせにゃ―」
バタン!
老店主が言い切る前に酒場の扉が勢いよく開かれる。
そこには小柄な男一人と巨漢二人が立っていた。
巨漢の男を引き連れた小柄な男がニヤニヤしながらその汚い口を開いた。
「おい爺さん、約束じゃあ今日立ち退く筈だったじゃねぇか。なんでまだいるんだよ」
「お、お前さん達にこの店はやらん!」
「なに!?」
「そうそう、この店は僕が買う事になっていてね」
「!?」
突然老店主の前に出たルシファーを驚愕の目で見る老店主。
焼け焦げた服を着た半裸の男だ、無理もない。
ルシファーは別に老店主を助けるつもりで出たわけではないが、ここで暴れられても修復に時間と金がかかる。
それは避けたかった。
「誰だ、てめぇ!」
「ここの新しい店主だよ。そうだ、記念すべきお客第一号として美味いモヒートを奢ってやろう」
「モヒートってなんだ?」
女神同様に現代と異世界との知識のギャップにうんざりするルシファー。
ルシファーが指を鳴らすとバーカウンターにラム酒、ミント、ライム、砂糖、炭酸水、氷が現れる。
それぞれが女神が厳選した極上の一品であり、ルシファーはグラスにそれぞれ入れるとかき混ぜ最高のモヒートが完成した。
「さあ召し上がれ」
「なんでぇ、酒の事かよ。しかも他の店じゃ碌な酒が手に入らねぇんだ、うめぇ筈がねぇ」
「まあまあいいから飲んで」
「仕方ねぇーな……一杯だけだぞ?」
ミントとライムの透き通る爽快感の後に極上のラム酒の味わいが口の中を襲う。
それぞれの極上の材料が熟練したバーテンでもあるルシファーの計算した黄金比で混合され生み出される。
その最高のモヒートにまずい!としか言わないと心に決めてた小柄な男は思わず美味い!と叫んでしまった。
「こ、こんな美味い酒どこで……いやそんなことはどうでもいい、お前さんうちの店で働かないか?金は弾むぜ?」
「悪いが人に使われるのは好きじゃないんだ」
「そうか、じゃあしかたねぇ、お前達!」
小柄な男が合図すると後ろにいた巨漢二人がルシファーに襲い掛かった。
ルシファーは巨漢の男の手を掴むと軽々と放り投げた。
巨漢の男はむくりと立ち上がると再びルシファーに立ち向かっていく。
しかしルシファーが手をかざすと巨漢達は前に進むことが出来ず足をばたばたとさせていた。
「君達の体は使える。ここで雇ってやろう」
ルシファーは煙となった悪魔の入った小瓶を取り出すと蓋を開ける、今度は二本だ。
煙となった悪魔達が巨漢の男達に口から入り乗り移った。
巨漢の二人は白目の無い黒い瞳の悪魔となり、ルシファーに従う従順な下僕となった。
「じゃあ二人とも、この小猿君を追い出せ、多少痛めつけてな」
「「はい、ボス」」
巨漢の悪魔二人は小柄な男を担ぎ上げると店外に出て行った。
そこからは殴打の音と男の悲鳴が聞こえたがルシファーは気にも留めず老店主の方を向いた。
「じゃあ前オーナー殿、ここにサインすればこの金貨は君の物だ」
「おお!店を助けてくれたばかりかこんなボロい店に大金まで!」
「で、サインしてくれるのかな?」
「ああしますとも、しますとも!」
「ああちなみに契約破ったら地獄行きだからね」
「地獄?」
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