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第三十三話「帰還」
しおりを挟む―ホワイトハウス作戦司令室
「ポチっとなっと」
現代に帰ったルシファーがICBM(大陸弾道ミサイル)の発射スイッチを押す。
核弾頭を積んではないが強力な破壊力を持つ現代の大量破壊兵器だ。
それをルシファーは天使の本拠地である東京の議事堂目掛けて放った。
―数時間前の異世界イシュロア
時間は数時間前に遡る。
ルシファーズハンマーの入り口前で大勢の魔物達が待機していた。
オーク、ゴブリン、ハーピー、キマイラ、サイクロプス、メデューサ、デュラハン、リッチ、アンデット、人狼、吸血鬼と種類は数えきれない。
更に言えば別のルートでリヴァイアサン親子が海の戦力として参戦してくれる。
これだけの戦力と現代の悪魔達がいれば現代を侵略する事は容易いだろう。
「いざ行かん!現代へ!」
ルシファーは現代へ通じるゲートを神の石板を読んで開くと、皆でそこを通った。
そこはかつてミカエルと戦った地でもあり、現代の悪魔の本拠地でもあるアメリカのホワイトハウスの近くだ。
すると茂みから一人のブラックスーツの男が出て来る。
その男は白目の無い目が黒い悪魔だった。
「ルシファー様!……ですよね?」
「いかにも僕だ。それとも殺されないと分からないか?」
ルシファーは瞳を赤く光らすと自身の存在を証明する。
「い、いいえ、滅相も無い!今悪魔軍はアザゼル様が指揮をとっております!ホワイトハウスも占拠されてしまい……」
「アザゼルか……」
アザゼルはルシファーに最も忠実な悪魔であり、ルシファーを地獄の檻から出したのも彼である。
彼が現代での天使と悪魔の戦争の火蓋を切ったと言っても過言ではないだろう。
「ここが現代か……高い塔ばかりだな。現代人は巨人なのか?」
高層ビルを見てリィンが驚く。
ここはタワーマンションやオフィスビルが立ち並ぶ所で、異世界人であるリィンが驚くのも無理はない。
「あらあら、あの城達には貴族か女王が住んでるのでしょうね。どれを奪ってやろうかしら」
高層ビル群を見てスカーレットがはしゃいでいる。
まあセレブやお金持ちの資産家や実業家、会社の社長達がいるのだから間違いではないが。
「あの鉄の馬、どんな魔術で動いてるのかしら」
道路を走る車達に興味を示すゴブ子。
まあ運転してるのは悪魔だが。
「のんびりと観光している暇は無い。このままホワイトハウスに乗り込むぞ!」
ルシファーが号令を掛けると後方で大量の声が上がった。
戦闘に飢えていた魔物達の声である。
旧魔王軍が敗れてからというものの、自粛命令が出されていた為、早く戦いたくてうずうずしていたのだ。
「じゃあアレックス、先陣は任せるぞ。この薬を打ってくれ」
ルシファーは注射器をアレックスに渡すとアレックスの手は震えていた。
「ぼ、僕に出来るでしょうか?それに人を殺すなんて……」
「君は無敵のスーパーオークだぞ?恐れる事は無い。それに天使は魔物みたいなもんだ。躊躇しなくていい」
「分かりました……!僕、やります!」
「その勢いだ(乗せやすいな)」
アレックスは手首に注射針を刺すと突然苦しみだした。
肌は緑色に変わり体は巨大な筋肉の塊に変貌した。
スーパーオーク、アレックスの変身完了である。
「ウガアアアアアア!!!ルシファーノテキ、スマッシュスル!!!」
アレックスは突撃しホワイトハウスの警備の天使達を薙ぎ倒していく。
体に天使の剣が幾つも刺さるがびくともしない。
逆に刺した天使が吹っ飛ばされてしまう程だった。
そしてホワイトハウスの外壁に大穴を開けるとそのまま中に消えていった。
「よし、あの穴から突入するぞ!」
おおおおおおおおおお!!!!
ルシファーの異世界魔物軍と悪魔軍の残存部隊が外壁の穴からホワイトハウス内部に突入した。
中はアレックスが粗方暴れまわった後だったが、天使はまだまだ残っていた。
ルシファーはそれをコバエを潰すが如く殺していく。
「ルシファー、覚悟!」
数人の天使達がルシファーに襲い掛かる。
しかしルシファーは手をかざすと天使達を吹っ飛ばした。
そして手を握ると彼らの首は小枝の様に簡単にへし折られた。
そしてルシファーはレッドカーペットを歩き大統領執務室に着いた。
かつての自分の専用席である。
「やれやれ、やっと帰って来たぞ」
ルシファーはデスクのPCを付け監視カメラの映像を見ると、魔物や悪魔、そしてスーパーオーク・アレックスの暴れっぷりをこの目で楽しんだ。
そして数時間後のホワイトハウス作戦司令室でルシファーがICBMの発射ボタンを押したのである。
そして幾ばくかの時間が経ち、着弾予想地点を示すレーダーが赤く染まる。
この時代の天使は現代の一部のハイテク機器を破壊もしくは隔離したらしく、
人間を収容所に隔離した事が仇となり、日本の誇る優秀な迎撃システムは作動しなかった。
これで天使達は大量に殲滅できた、大量虐殺と言っていい。
これはホワイトハウスの占拠が必須だった為、異世界の魔物あってこその成果であろう。
「ナイスショット!」
ルシファーがガッツポーズを決める。
そして大統領の椅子で一回転するとルシファーは立ち上がりホワイトハウスの外に出た。
そこには異世界にはいなかったブラックスーツを着た配下の悪魔達がいた。
「じゃあカース、ルシファーズハンマーLA<ロスアンゼルス>支店まで運転頼むぞ」
「承知しました」
ルシファーは二台の黒塗りのリムジンに乗り現代のルシファーズハンマーに向かう。
異世界に向かう前に自身が愛用していた店だ。
今はホワイトハウスがあるので異世界の魔王軍幹部達の拠点にする予定だ。
「これが現代の鉄の馬か。中々に良い乗り心地だな」
シャンパンのグラスを片手にスカーレットが足を組みながら言う。
現代でのゴージャスな暮らしに満足しているようだ。
「私はどうも好きになれん。ここは森も動物も少ないし……」
自然を好むエルフとしてはビルだらけの現代はどうも馴染めないのだろう。
後で自然公園にでも連れて行くかとルシファーは思った。
「ところで私の報酬のゴブリン1000体、勿論覚えてるわよね」
自身の完全復活が目的のゴブ子にとっては現代の事などどうでもいい事だった。
「さあて、僕は寝る。着いたら起こしてくれよ」
「分かりました」
ルシファーは最後のモヒートの一滴を飲むとそのまま眠りに入った。
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