犬と歩けば!

もり ひろし

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第04章 大団円

01話 ヒロちゃん、犬ぎらい直る? Ⅲ

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 ヒロちゃんは、本当に犬を好きになれたのだろうか。ヒロちゃんには、幼少のころ、犬に吠えられ、追いかけられて、盛大にころんだという、ある種のトラウマがあった、まだほんの一年前まで、ヒロちゃんは犬ぎらいのオーラを出していて、犬を寄せ付けなかった。ヒロちゃんが、さとしと寺本との友達関係の問題で、無理に散歩会に付き合い、偶然にたえ子ちゃんの愛犬サムに好かれてポメラニアンは飼いやすい犬種だと思ったかどうか知れないが、犬に対する偏見は徐々に薄れていった。そしてヒロちゃんは、散歩会に来ているのに、自分だけが、犬を飼っていないことに、いまさらながら気づき、愛犬迎えようとする。でもヒロちゃんの家は犬を飼うだけの経済力は難なくあったものの、犬自体を買うまとまったお金がなかったので、譲渡犬という選択肢を選んだ。そしてポメラニアンのヒメを迎えた

 しかし保護犬はたいてい飼うのが難しい。ヒメもこれまでさんざん人間に利用されてきたので、怖がりで、なつかなかった。そこで散歩会だ。始めこそ一ぴきと二人だったものの、四ひきと五人の大所帯となり、解決できない問題も、みなで話し合って解決するという気運が高い。どうしようかと考えられたさくによりヒメは少しずつ心を開いた。それがまた散歩会のメンバーの喜びになった。悪循環は断ち切られ、ヒメも今では散歩会の一ぴきに堂々と数えられるようになった。
「ヒメヒメ、こっちへおいで」
とヒロちゃんが呼ぶと、初めのうちは寄り付きもしなかったのだが、今では普通に寄って来て、片足ずつ両足で忙しそうに、お手をしにやってくる。それを見たサムはしっとにかられ、ヒロちゃんに寄り沿いながら自分もお手をしようとする。ヒロちゃんは散歩会の面々にどうだと言わんばかりにじまんした。「ぼくも立派な愛犬家だろ!」

 そんなヒロちゃんが、さとしの自身のおばあちゃんにもらった、愛犬ユキとはどうなのかと言えば。ユキは母親のマルと性質がそっくりだったので、和犬にしては珍しく温厚おんこうで、ヒロちゃんをそつなく迎えてくれた。この場合、犬の方が大人だったといってもいいのだろう。
 しかし相変わらず誇り高き寺本の愛犬、マルチーズのロロとはどうかというと相性が良くない。ロロは、はっきりものを伝えないヒロちゃんに、どすの利いた低い声で「ワン!」一声吠えると、ヒロちゃんはたちまち、犬ぎらいだった昔の自分に舞い戻ってしまうのだった。何もマルチーズが悪いわけではないマルチーズは、あるじに忠実な良い犬だ。ただはっきりしない言動がロロの気にさわるのだろう。
 ヒロちゃんが本当にポメラニアン以外の犬種でも好きと呼べるようになるのは、いつの日になる事やら、ヒロちゃんはポメラニアンじゃなくとも、フレンドリーで陽気な犬ならだれでもいいよと言っている。ヒロちゃんの目標はそこかい! とみんなはあきれた。



 とにかく散歩会のメンバーは夏中退屈知らずだった。良いことばかりじゃなかったが、そんな時はみんなで考え問題を解決していった。

                                   つづく
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