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第2章 鳥や動物たちの時代
00話 第2章への序章
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これまでを少し振り返ろう
和寿は何処にでもいる鳥や動物好きの少年だった。彼がスズメのヒナを保護したことで、この物語は始まる。スズメは和寿によってチュヴィンと名付けられた。鳥や動物の心が半ば読める和寿少年と特別な使命を帯びたスズメのチュヴィンは出会うべくして出会った。二つの存在は、今までの世界のことわりを変えてしまう。
人間には、太古の昔、魔女の嫉妬を買って封印された『万能のコミュニケーション能力』というものがあった。これが封印されている限り、世界は、人間の本意ではないにしろ滅ぼされようとしていた。これまでの争いの絶えない人間には必然の結果だ。
人間に一番近い距離で生活しているスズメの一族に、人間の『万能のコミュニケーション能力』の封印を解く呪文と、限られた人間に同じく『万能のコミュニケーション能力』をあたえる魔法が代々伝えられてきた。和寿にもチュヴィンにも、始めから知らされていたわけではない。それは突然だった。つまりチュヴィンは巣から落ちて瀕死の時、「あなたは生きなくてはならない」と両親に言われ、自分が救世主であることが明かされる。また和寿はチュヴィンにその素質を見込まれて魔法によって『万能のコミュニケーション能力』が与えられ人類の代表者にされてしまう。
あとは紳吉おじいさんを含む身近な鳥や動物から募った100の仲間で魔女から封印の水晶玉を奪い、人間にだけ封じられていた『万能のコミュニケーション能力』の封印を解き、結果、人は鳥や動物と話せるようになり、人と人は、より深いコミュニケーションをおこなうことができるようになった。そして、人と人は争わなくなり、世の中は平和を取り戻すことになる。最後に印象的だったのは幹夫君のペットのハムスターの空太が病気で亡くなろうとしている時に最期のお願いを飼い主の幹夫君に聞いてもらい大往生を遂げたことがあげられる。動物は決して人より劣った生き物ではない。ペットの死も人の死も何の変りもなかったのだ。
さて人間と鳥や動物が話せる世界、人間同士がもっとわかり合える世界のお話です。
三好家では文鳥のブンちゃんの地位がにわかに上がった。人間にとってはあくまで自然にいつのまにかである。なぜなら人間の『万能のコミュニケーション能力』はある日突然解放されたのだから。その解放された前後を知るものはもうすでにこの能力を身に着けているすべての鳥や動物たちと、自覚的にチュヴィンの魔法によってこの能力を身に着けた和寿と紳吉おじいさんのみである。すべてが一挙に変わったので、普通の人間には何故と問うことすらできない。ブンちゃんは喜んだ自分の言うことが重みを増して受け止められるのだから。ためしに、
「誰か籠から出して遊んでおくれ」
とつぶやいてみると、時間に余裕のある者は、進んでこの要求を呑んでくれた。といっても時間に余裕があるのは紳吉おじいさんばかりだ。このおじいさんが封印解放の前後を知る英雄だなんて誰が思うだろう。本人はその話がしたくてしょうがない。それは分かるけど、家族は一般の人間だから封印解放の前後など知らないし、おじいさんが話をしていても、ぼけてきたとしか思わないだろう。結局ペットのわたし以外、相手になるものはいないので聞いてあげている。和寿はどうか。和寿は学校だ。和寿は朝早くに出かける。飼育係なのだ。
和寿はチュヴィンに乗って学校に通っていた。チュヴィンの背中を撫でればいつでもこびとにも逆に元通り等身大の人間にもなれる。そしてこびとの時にはチュヴィンの背に乗ってフライトもできる。この魔法は今でも有効だ。こびとになる時も等身大の人間に戻る時も一瞬なので誰にも気づかれない。チュヴィンとの絆はますます強くなった。
「もう梅雨も明けるでしょう。暑い夏がやってきますね」
チュヴィンが言った
「こうして登下校できるからずいぶん楽さ」
「わたしもご主人とこうしてずっといられるのがうれしいんです」
「僕ばっかり世話になって悪いと思っているんだ。なんのお返しもできていない」
「そんな堅苦しい仲にはなりたくないですね。もっと気軽に呼んでください。そろそろ学校ですね」
「ありがとう」
学校に着くと放課後を約束して等身大に戻りチュヴィンとは別れた。
「さあウサギとハムスターが待っているぞ」和寿は調理室に行ってくず野菜をもらってきた。いつもの通りまだ登校してくる生徒はいない。でも教室の扉を開けると動物たちが和寿を待っていた。ハムスターのジェリーがいつものように
「お腹と背中がくっついちゃうよ」
と言って甘えた声を出した。ウサギのピーターは、ぴょんぴょん跳ねて和寿に頭突きを食らわせた。そして
「僕は今日はニンジンがいいな」
と言った。そして皆が
「おはよう」
と合唱した。いつもの朝が戻ってきた。和寿はうれしくって仕方なかった。ここは楽園か。世話を手早くかたずけていくと後ろから「おはよう」と早い生徒がやって来る。もうこっそりと動物と話す必要も無い。皆が動物と話せるのだから。動物と話していても変な人とは思われない。
さて、第2章、鳥や動物たちの時代、が本格的に始まるよ。準備はいいかな。
和寿は何処にでもいる鳥や動物好きの少年だった。彼がスズメのヒナを保護したことで、この物語は始まる。スズメは和寿によってチュヴィンと名付けられた。鳥や動物の心が半ば読める和寿少年と特別な使命を帯びたスズメのチュヴィンは出会うべくして出会った。二つの存在は、今までの世界のことわりを変えてしまう。
人間には、太古の昔、魔女の嫉妬を買って封印された『万能のコミュニケーション能力』というものがあった。これが封印されている限り、世界は、人間の本意ではないにしろ滅ぼされようとしていた。これまでの争いの絶えない人間には必然の結果だ。
人間に一番近い距離で生活しているスズメの一族に、人間の『万能のコミュニケーション能力』の封印を解く呪文と、限られた人間に同じく『万能のコミュニケーション能力』をあたえる魔法が代々伝えられてきた。和寿にもチュヴィンにも、始めから知らされていたわけではない。それは突然だった。つまりチュヴィンは巣から落ちて瀕死の時、「あなたは生きなくてはならない」と両親に言われ、自分が救世主であることが明かされる。また和寿はチュヴィンにその素質を見込まれて魔法によって『万能のコミュニケーション能力』が与えられ人類の代表者にされてしまう。
あとは紳吉おじいさんを含む身近な鳥や動物から募った100の仲間で魔女から封印の水晶玉を奪い、人間にだけ封じられていた『万能のコミュニケーション能力』の封印を解き、結果、人は鳥や動物と話せるようになり、人と人は、より深いコミュニケーションをおこなうことができるようになった。そして、人と人は争わなくなり、世の中は平和を取り戻すことになる。最後に印象的だったのは幹夫君のペットのハムスターの空太が病気で亡くなろうとしている時に最期のお願いを飼い主の幹夫君に聞いてもらい大往生を遂げたことがあげられる。動物は決して人より劣った生き物ではない。ペットの死も人の死も何の変りもなかったのだ。
さて人間と鳥や動物が話せる世界、人間同士がもっとわかり合える世界のお話です。
三好家では文鳥のブンちゃんの地位がにわかに上がった。人間にとってはあくまで自然にいつのまにかである。なぜなら人間の『万能のコミュニケーション能力』はある日突然解放されたのだから。その解放された前後を知るものはもうすでにこの能力を身に着けているすべての鳥や動物たちと、自覚的にチュヴィンの魔法によってこの能力を身に着けた和寿と紳吉おじいさんのみである。すべてが一挙に変わったので、普通の人間には何故と問うことすらできない。ブンちゃんは喜んだ自分の言うことが重みを増して受け止められるのだから。ためしに、
「誰か籠から出して遊んでおくれ」
とつぶやいてみると、時間に余裕のある者は、進んでこの要求を呑んでくれた。といっても時間に余裕があるのは紳吉おじいさんばかりだ。このおじいさんが封印解放の前後を知る英雄だなんて誰が思うだろう。本人はその話がしたくてしょうがない。それは分かるけど、家族は一般の人間だから封印解放の前後など知らないし、おじいさんが話をしていても、ぼけてきたとしか思わないだろう。結局ペットのわたし以外、相手になるものはいないので聞いてあげている。和寿はどうか。和寿は学校だ。和寿は朝早くに出かける。飼育係なのだ。
和寿はチュヴィンに乗って学校に通っていた。チュヴィンの背中を撫でればいつでもこびとにも逆に元通り等身大の人間にもなれる。そしてこびとの時にはチュヴィンの背に乗ってフライトもできる。この魔法は今でも有効だ。こびとになる時も等身大の人間に戻る時も一瞬なので誰にも気づかれない。チュヴィンとの絆はますます強くなった。
「もう梅雨も明けるでしょう。暑い夏がやってきますね」
チュヴィンが言った
「こうして登下校できるからずいぶん楽さ」
「わたしもご主人とこうしてずっといられるのがうれしいんです」
「僕ばっかり世話になって悪いと思っているんだ。なんのお返しもできていない」
「そんな堅苦しい仲にはなりたくないですね。もっと気軽に呼んでください。そろそろ学校ですね」
「ありがとう」
学校に着くと放課後を約束して等身大に戻りチュヴィンとは別れた。
「さあウサギとハムスターが待っているぞ」和寿は調理室に行ってくず野菜をもらってきた。いつもの通りまだ登校してくる生徒はいない。でも教室の扉を開けると動物たちが和寿を待っていた。ハムスターのジェリーがいつものように
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と言って甘えた声を出した。ウサギのピーターは、ぴょんぴょん跳ねて和寿に頭突きを食らわせた。そして
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さて、第2章、鳥や動物たちの時代、が本格的に始まるよ。準備はいいかな。
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