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1話 魔法少女、平和な学校生活終了のお知らせ
しおりを挟むやってしまった……。
ここは、五年一組の教室内。私の名前は、魔夜優花。
そんなことは、どうでもいい。私はとうとうやってしまった。
クラスメイトに、魔法を使うところを見られてしまったのだ。
さかのぼること、一分前。
机からペンケースを落としそうになった私は思った。
「落ちないで」
たった五文字の思いから、ペンケースは重力に逆らってフワッと浮いてしまい。それを、クラスメイトに見られてしまったのだ。
しかも、見た相手が悪かった。
そいつは、いつも女子に囲まれている男子。
名前は……、忘れた。あいつ、でいいや。
たしか、四年生の時ぐらいに近所に引っ越してきて家が近い。
女子たちが言うには、きれいな目に、整った鼻筋、優しい笑顔に、穏やかな話し方。背が高くて、スタイル良くて、勉強も運動も何でもできる。
完璧なさわやかイケメンで、王子様みたいだそうだ。
王子様かイケメンか知らないけど、囲む理由が全く分からない。
だから、そんなこと、どうでもいい。
人気者のあいつが、私が魔法を使っていたと言い出したら終わりだ!
そして、現在。
あいつは私をチラチラ見ながら、女子と何かを話している。
見た? 見た? ねえ、見たよね?
私の学校生活、終わった……。
たましいが抜けた表情をしたとたん、学校のチャイムが鳴りひびく。
(おい、チャイム。お前まで、平和な学校生活終了だと言いたいのかよ……)
「みんな、おはよう」
「松田先生だ! きゃー!」
また、クラス中が悲鳴に包まれる。
担任の先生が、女子に人気のイケメン先生だと分かった瞬間だからだ。
クラスの盛り上がりと反比例するかのように、私は盛り下がっていった。
今日は始業式。
新しいクラス発表に周りは浮かれ、友だちと一緒だった。あこがれの人と一緒だった。好きな人と一緒だった。
そんな感じで、クラス内は盛り上がっていた。
そんな中、私は黙々とカバンの中身を引き出しに入れる。
そして、ペンケースを落としそうになり、このありさま。
五年生になって、たった五分で私の平凡な学校生活は終わりを告げた。
そんな私の気持ちとは関係なく、始業式、入学式、学級活動と続き、下校時間となる。
集団下校のグループに集まり、五年生の私は今日から副班長として一番後ろで下級生たちを見守る。
あいつも同じ地域で、私は二班であいつは三班。
ただ、三班は六年生がいない為、こいつが班長として前を歩いている。
つまり、私の真後ろに居るのだ。控えめに言って最悪!
(何も考えるな私!)
無心を心がけて、ただ下級生たちを見守る。
そう自分に言い聞かせている間に、集団下校の解散場所に着いた。
「じゃあ、みんな気を付けて帰ってね。解散ー!」
班長の声に返事をし、みんな家に向かって行く。
私は一人になったことでやっと気をゆるめ、今日のことを考える。
今日半日、クラス内で私のことで騒がれることがなかった。
つまり、あいつは何も言ってないってこと?
……あれ? もしかして、見てないんじゃないの?
あの時、目が合ったような気がしたけど、私のかんちがいだったんじゃない? なーんだ。
(私の学校生活、終わってなかったー!)
見上げた空は青く、太陽は明るく、私はあくびを一つもらす。
(眠い……。いや、帰ってから寝るから!)
首をブンブンと振り、家に向かって歩いて行く。
その時。その声は聞こえた。
「なあ」
声がする方を振り向くと、あいつだった。
(は? なんでここに居るの? こいつの家、方角違うよね?)
するとこいつは、自分の顔を私の顔ギリギリにまで近づけてきた。
(え! ちょっと待ってよ! 近い! 近い!)
私が一歩下がると、こいつは一歩近づいてくる。
そうしている間に、電信柱にランドセルがぶつかる。
すると、私が逃げられないのをいいことに、そいつはまた顔を近づけてきた。
こいつは背が高いけど、私は低い。この大きな体からは逃げられなかった。
ドクン、ドクン、ドクン。
心臓がうるさいぐらいに鳴ってしまい、こいつに聞かれたらどうしようと思った。
(聞かれたくないけど、お願いだから心臓止まらないでー!)
私がひたすらに願っていると、こいつは一言つぶやいた。
「……お前、さっきペンケース浮かせてなかったか?」
まじまじと私の顔を見つめる、こいつの姿に。
(終わったー!)
と頭の中で、終了の鐘がチーンと鳴っていた。
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