転生彫り師の無双物語 〜最弱紋など書き換えればいいじゃない〜

Josse.T

文字の大きさ
6 / 49

第5話 魔法に慣れる訓練をした

しおりを挟む
魔法教室から1日が経った。
そういえば、謎の悪寒のことで頭がいっぱいで秀英紋の青年に「サルファ=ラ=ドンを倒すと何がマズいのか」を聞きそびれたな。

まあいい。今日から魔法の(主に手加減の)修行だ。
そういうわけで、今は街の外を駆け回って冒険者たちの出張手当をしている。
負傷した冒険者が見つかるまでは、身体強化に込める魔力を変化させながら、どの程度の魔力でどれくらいのスピードが出るか確認しつつひたすら走る。行動の全てが鍛錬だ。

しばらく走ると、森の中で熊型の魔物と対峙する3人組冒険者パーティーを発見した。
ちょうど、そのうちの1人が魔物に爪で大きく引っ掻かれていた。

「大丈夫か?」
「俺は......もうダメだ......逃げて......く......」
「それ以上喋るな!とりあえずコイツを凌ぎつつタイミングを見てポーションをかけてやる。それまで体力を温存しろ!」

冒険者たちの会話の内容からすると、負傷者の容体はかなり悪そうだ。これは一刻を争うな。
死にかけの冒険者にサッと近づき、詠唱する。

「ヒール!」

他のパーティーメンバーは負傷者を生かす希望を持っていることから、講習で焼死しかけたヤオジムよりはまだマシと判断できる。そこで、ヤオジムの時の半分くらいの魔力消費で回復魔法を発動する。

「う......あれ?完全に治った?というか、魔力まで全快した気がするぞ?」

「......な!?」

予期しない仲間の回復に、他のパーティーメンバーも完全に呆気にとられている。
・・・というかおい、後ろから魔物迫ってるぞ。なんて注意散漫な......

「──結界」
ガン、と音がして冒険者たちはすんでのところで守られた。


「お前が助けてくれたのか。礼を言う」
負傷していた冒険者が話しかけてきた。

「お礼より、まずはあの魔物をどうにかすべきでは?今は結界で足止めしてますが......」
とりあえず、戦闘再開を促してみる。

しかし、冒険者たちの回答は意外なものだった。

「いや、あいつは俺たちの手に負える魔物じゃない。今だって、何とか撤退を試みていたところなんだ」
「さっきの回復魔法で、あんたが相当高レベルな魔法を使えるのは分かった。もし1人であの魔物を討伐できるなら、討伐はあんたに任せる。あんたでも手に負えないなら、連れの恩人を見捨てるわけにはいかねえし、撤退の手伝いはしてやるぜ。」

・・・そんなに強いのだろうか?結界はビクともしてないんだが。
「そうですか......なら、奴は俺が倒します。お大事に」

「ああ、重ね重ねかたじけない。・・・そうだ、これは謝礼だ。受け取ってくれ」


こうして、俺は冒険者たちから寛永通宝のごとく束ねられた50枚の銀貨を受け取り、魔物の討伐を引き受けることとなった。

しかし・・・回復させた冒険者が言ってた事が気になるな。
「体力と同時に魔力も回復した」と言っていたということは、回復魔法と魔力譲渡が一緒くたになってしまっていたってことだろう。
これは、手加減や魔力操作が不完全ってことを意味する。

やれやれ。安易に討伐を引き受けてしまったが、別の意味でまずかったかもな。手加減が満足にできないってことは、今攻撃魔法を使うと森林火災か洪水か土砂災害を起こしてしまいかねない。

「かくなる上は!」

結界を解き、魔物を掴んで放り上げる。
そして、空中で魔物に火魔法をぶつける。

結果、魔物は骨だけ残った。
「魔石だけ」じゃない分進歩はしているのだろうか。ホーンラビットより強い魔物だったから耐えただけかもしれないが。

魔石と牙を収納に入れる。
牙がギルド買取対象である保証はないが、いざ別の魔物に遭遇したら牙に魔法を付与してぶっ刺せば目立たず討伐することもできるだろうからな。

☆  ☆  ☆

「しかし、、、この巡回、効率悪いな」

半日ほど冒険者治癒のために駆け回った結果、至った結論はこれだ。

初めは、「街を出ては適当に巡回し、一旦街に入って別の門から再び街の外に出る」というルートを通っていた。しかし、これだと街中で速度を出せないのでかなりのタイムロスになってしまう。
そこで、途中からは街の外を周回する形での巡回に切り替えたのだ。これにより、大幅に巡回周期を短縮することはできた。

それでも、まだこれは最短経路ではない。
というのも、冒険者は街の外に均等に分布しているわけではなく、各門の周辺の「狩場」に集中する形で分布しているのだ。
つまり、街中を全速力でぶった切るルートを構築すれば、より効率的に冒険者たちを救えることになるわけだ。

「で、どうするかだが・・・高速自動車国道みたいなものを街の上空に架けれたら手っ取り早いんだがな。結界でやってみるか?」

アイデアは、試行錯誤の中からやってくる。多少突拍子もないアイデアも、試してみて損は無いだろう。


・・・そして10分後。
上空の結界道路は、いとも簡単に作成できてしまった。

「まあETCがあるわけでもないし、こりゃどっちかと言えばバイパスだな」
拍子抜けするほど上手くいったせいか、出てくる感想も何だかパッとしない。

何だか、もう一つくらい創作をやってみたい気分だ。
・・・そうだ。確か、魔神の魔法に「魔槍創造」というものがあったな。あれ、いっそのこと武器じゃなくて乗り物とか創造できてしまいやしないか?

いよいよ常識はずれなぶっ飛んだ思考になってきたので、どうせなら思いきり羽目を外そう。

エンジン起動は「バイクだけに、ブンブン」という俺の掛け声で、後輪には隠し武器を実装して・・・

「──魔導二輪車創造!」

イメージを固め、それっぽい詠唱文句を発してみる。
すると・・・ボン、という音と共に、俺の目の前に想像通りのバイクが現れた。

「──できちゃうのかよ......」


あまりにも何でもアリな魔法に半ば驚き、半ば呆れながらつけたバイクの名前は「カワサキ」だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...