37 / 49
第34話 勇者をプロデュースした
しおりを挟む
「アラレジストさん、いい話があります」
アラレジストというのは、今分割払いに来た俺の顧客の名前だ。
「今後の分割払いを一気にチャラにできる提案ですが、いかがですか?」
「あ、是非!」
とりあえず、食いついてはくれたな。
後は、提案の難易度を見誤って拒否されなければいいのだが。
「これから俺は冒険者ギルドに行き、魔王討伐の指名依頼を出します。指名するのは当然、アラレジストさん。討伐報酬は、分割払いの残り18回分と同等の額です」
「……はい?」
「魔界までは俺が転送します。魔王討伐は一気にランクを5つ上げられる依頼内容ですし、アラレジストさんにとっても悪い話では無いかと」
「……いや、ちょっと待ってくださいよ。魔王って、魔界にいるんっすよね? 僕、魔界で身、持ちますかね……」
「大丈夫です。甲型使徒紋持ちのアラレジストさんは、俺の鑑定の上では魔王の約70倍の強さと出ています。万が一にも負けることは、いや傷を負う事さえ無いかと」
「そうですか、淳さんがそうおっしゃるならそうなんでしょうけど……でも相手は大陸を切り離すようなバケモンっすよ?なんか勝てるイメージが出ないと言いますか……」
……あ、そうか。
人類にとって、魔王と言えば未だにプレート=テクト=ニクスなんだったな。
「あ、アラレジストさんが想定している魔王は俺が前に倒しました。アラレジストさんに倒していただきたいのは、その次の代の魔王です。魔王って、先代が異常に強かっただけで通常は大陸移動なんてさせる力を持ってはいません。その点はご安心ください」
「なるほど……。なら次の魔王も淳さんが倒せばいいような気がしますが、なんか事情があるんでしょうね。後継者育成とか。分かりました、引き受けます」
……俺が倒すわけにはいかない理由を聞かないでくれるのはありがたいな。
事情の予想はまるっきり外れてるが、訂正する気も無い。
「では行きましょう」
☆ ☆ ☆
まずアラレジストの家に行って野宿道具を取ってきてもらい、それから冒険者ギルドに向かった。
アラレジストはといえば、道中ずっと「エッスラーンク♪エッスラーンク♪」と上機嫌だった。
いい仕事してくれそうだ。
いつもの窓口ではなく、依頼用のカウンターへ向かう。
「すみません。1つ、指名依頼を出したいのですが」
「はい、分かりまし……って、学生番号281番? 淳さんじゃないですか! なんで……依頼側?」
「複雑な事情があるんです」
「そうなんですね、分かりました。」
受付嬢は、興味津々と残念が入り混じったような顔でそう言った。
ギルドの規則上、依頼者が話したがらないことを詮索できないからだろうな。
「……で、依頼内容はどのようなものでしょうか?」
「魔王の討伐です。指名は、アラレジストさんで。」
「魔…………MA!?」
「時間が無いんです。依頼料はこれで。魔王討伐に対しては少ない額かもしれませんが、双方の同意の元決めた金額なので」
受付嬢は空いた口が塞がらなくなってしまっているが、構わず分割払い18回分に相当するお金をカウンターに置く。
聖騎士たちが軍の予算で現金一括払いにしてくれたので、賄えた金額だ。
「ま……まあ、淳さんがそう言うなら、その内容で処理しますね……」
そう言って、受付嬢はお金を持ってカウンターの奥へと引っ込んで行った。
俺はアラレジストが依頼を受けるまで、ギルドの待合で過ごすことにした。
約30分後。
「淳さん、依頼、受けてきましたよ」
アラレジストがそう報告してきた。
「じゃ、行きますか」
ギルドを出て人通りの少ない場所へ移動し、転移魔法を……あれ、転移魔法って俺使ったことあったっけ。
まあいいや。空間座標を歪ませるイメージでやれば。
見よう見真似で、転移用の黒い扉も顕現させる。
転移に魔力を1割ほど使ってしまったのは、まあ稚拙なイメージを魔力でゴリ押したからだろうな。
こんなことならちゃんと学んでおけばよかったな。転移先が明確でないと使えないと知り、破壊天使リンネルに会うのには使えないと思って放置していたのだが。
「うっわぁー、ここが魔界かあ」
アラレジストが感想を漏らす。
俺たちはルシオラの拠点から少しだけ離れた、砂漠地帯のような所に転移した。
もちろん、ルシオラの拠点とヤウォニッカのいる新魔王城を結んだ直線上の地点にだ。
ちなみに出発時は夕方だったのだが、微妙に時差があるのでもう真っ暗だ。
「あっちの方角に魔王がいるの、分かりますか?」
「……ああ……僕、危険度感知は使えないんで何となくですが……ほんと強そうじゃありませんね……」
言いながら、慣れた手つきで野宿の準備をするアラレジスト。
「そういえば、淳さんはどこで寝るんですか?」
「俺は収納の中にいます」
「収納……は? え、マジで?」
思わず敬語を失うほど驚愕したアラレジスト。
「やっべぇ……やっぱ淳さんは格がちげーわ……」
「あ、でもそれだとアラレジストさんを一人で放置することになってしまいますね。大丈夫でしょうか?」
「あ、あれが相手なら何が起ころうと遅れは取らないんでご心配なく。良い収納睡眠を!」
……適応の早い奴だ。
さて、俺も収納で寝るとするか。
アラレジストというのは、今分割払いに来た俺の顧客の名前だ。
「今後の分割払いを一気にチャラにできる提案ですが、いかがですか?」
「あ、是非!」
とりあえず、食いついてはくれたな。
後は、提案の難易度を見誤って拒否されなければいいのだが。
「これから俺は冒険者ギルドに行き、魔王討伐の指名依頼を出します。指名するのは当然、アラレジストさん。討伐報酬は、分割払いの残り18回分と同等の額です」
「……はい?」
「魔界までは俺が転送します。魔王討伐は一気にランクを5つ上げられる依頼内容ですし、アラレジストさんにとっても悪い話では無いかと」
「……いや、ちょっと待ってくださいよ。魔王って、魔界にいるんっすよね? 僕、魔界で身、持ちますかね……」
「大丈夫です。甲型使徒紋持ちのアラレジストさんは、俺の鑑定の上では魔王の約70倍の強さと出ています。万が一にも負けることは、いや傷を負う事さえ無いかと」
「そうですか、淳さんがそうおっしゃるならそうなんでしょうけど……でも相手は大陸を切り離すようなバケモンっすよ?なんか勝てるイメージが出ないと言いますか……」
……あ、そうか。
人類にとって、魔王と言えば未だにプレート=テクト=ニクスなんだったな。
「あ、アラレジストさんが想定している魔王は俺が前に倒しました。アラレジストさんに倒していただきたいのは、その次の代の魔王です。魔王って、先代が異常に強かっただけで通常は大陸移動なんてさせる力を持ってはいません。その点はご安心ください」
「なるほど……。なら次の魔王も淳さんが倒せばいいような気がしますが、なんか事情があるんでしょうね。後継者育成とか。分かりました、引き受けます」
……俺が倒すわけにはいかない理由を聞かないでくれるのはありがたいな。
事情の予想はまるっきり外れてるが、訂正する気も無い。
「では行きましょう」
☆ ☆ ☆
まずアラレジストの家に行って野宿道具を取ってきてもらい、それから冒険者ギルドに向かった。
アラレジストはといえば、道中ずっと「エッスラーンク♪エッスラーンク♪」と上機嫌だった。
いい仕事してくれそうだ。
いつもの窓口ではなく、依頼用のカウンターへ向かう。
「すみません。1つ、指名依頼を出したいのですが」
「はい、分かりまし……って、学生番号281番? 淳さんじゃないですか! なんで……依頼側?」
「複雑な事情があるんです」
「そうなんですね、分かりました。」
受付嬢は、興味津々と残念が入り混じったような顔でそう言った。
ギルドの規則上、依頼者が話したがらないことを詮索できないからだろうな。
「……で、依頼内容はどのようなものでしょうか?」
「魔王の討伐です。指名は、アラレジストさんで。」
「魔…………MA!?」
「時間が無いんです。依頼料はこれで。魔王討伐に対しては少ない額かもしれませんが、双方の同意の元決めた金額なので」
受付嬢は空いた口が塞がらなくなってしまっているが、構わず分割払い18回分に相当するお金をカウンターに置く。
聖騎士たちが軍の予算で現金一括払いにしてくれたので、賄えた金額だ。
「ま……まあ、淳さんがそう言うなら、その内容で処理しますね……」
そう言って、受付嬢はお金を持ってカウンターの奥へと引っ込んで行った。
俺はアラレジストが依頼を受けるまで、ギルドの待合で過ごすことにした。
約30分後。
「淳さん、依頼、受けてきましたよ」
アラレジストがそう報告してきた。
「じゃ、行きますか」
ギルドを出て人通りの少ない場所へ移動し、転移魔法を……あれ、転移魔法って俺使ったことあったっけ。
まあいいや。空間座標を歪ませるイメージでやれば。
見よう見真似で、転移用の黒い扉も顕現させる。
転移に魔力を1割ほど使ってしまったのは、まあ稚拙なイメージを魔力でゴリ押したからだろうな。
こんなことならちゃんと学んでおけばよかったな。転移先が明確でないと使えないと知り、破壊天使リンネルに会うのには使えないと思って放置していたのだが。
「うっわぁー、ここが魔界かあ」
アラレジストが感想を漏らす。
俺たちはルシオラの拠点から少しだけ離れた、砂漠地帯のような所に転移した。
もちろん、ルシオラの拠点とヤウォニッカのいる新魔王城を結んだ直線上の地点にだ。
ちなみに出発時は夕方だったのだが、微妙に時差があるのでもう真っ暗だ。
「あっちの方角に魔王がいるの、分かりますか?」
「……ああ……僕、危険度感知は使えないんで何となくですが……ほんと強そうじゃありませんね……」
言いながら、慣れた手つきで野宿の準備をするアラレジスト。
「そういえば、淳さんはどこで寝るんですか?」
「俺は収納の中にいます」
「収納……は? え、マジで?」
思わず敬語を失うほど驚愕したアラレジスト。
「やっべぇ……やっぱ淳さんは格がちげーわ……」
「あ、でもそれだとアラレジストさんを一人で放置することになってしまいますね。大丈夫でしょうか?」
「あ、あれが相手なら何が起ころうと遅れは取らないんでご心配なく。良い収納睡眠を!」
……適応の早い奴だ。
さて、俺も収納で寝るとするか。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる