大賢者の二番弟子、転生後は伝説級の強者扱いされる 〜死んでいる間に一番弟子の暴走で大賢者の戦闘理論が失われ、一番弟子も消えたらしい〜

Josse.T

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第1話 二番弟子、自分の容姿に満足する

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――転生、成功したか。

6才の誕生日の朝、ベッドを出たのとほぼ同じタイミングで俺は転生前の記憶を取り戻した。

「そう言えば、そんな設定したな……」

転生術に込めたとある魔法を思い出しながら、俺は独り言を呟いた。
その魔法とは、「6歳の誕生日まで転生前の記憶を封印する」というものだ。

転生術で転生した人間は、脳ができ次第胎児のうちから転生前の記憶が宿る。
だが正直、そんな時期に転生前の記憶があったところでもどかしい思いをするだけだ。

特に俺の場合、自分の外見レベルが分からないうちに転生前の記憶を引き継ぐのは大きな苦痛となるだろう。
そう思った俺は、適当な時期まで記憶を封印しておくことにしたのだ。

6才ともなれば、イケメンに育ちそうかどうかはそれなりに予想がつく。だから、そのくらいで記憶を解放する事にした。



何はともあれ、まずは転生後の、つまり今の自分の状況の整理からだな。

名前はテーラスじゅり。樹男爵家の長男だ。
前世では貴族には必ず苗字があったものだが、今はそうではないらしい。
そのかわり、名前の最後に「貴族証明古代文字」という貴族であることを示す1文字が付いている。

俺の場合、「樹」が貴族証明古代文字だな。

ちなみに貴族証明古代文字は家族単位で同じ文字が使われるのだが、その読みは一人一人違っていいことになっている。
俺のは「じゅり」と読むが、父の場合は「き」、母は「じゅ」、姉は「いつき」だ。

姉と言えば、今の時代は女性も当主になれるって事で家は姉が継ぐことになっている。
よって俺は権威関係のことは一切気にせず、自由に生きられるってわけだ。

そして、肝心の外見だな。自室にある鏡を見てみよう。

……自分でいうのも何だが、マジで奇跡の美少年だな。
有名画家の専属モデルになれば一財産築けること間違いなしってレベルだ。
もうなんか、前世の自分とは人としての次元が違う。

まあ強いて言うならば……もう少し目力が欲しいところかな。
そう分析した俺は、魔法で上眼瞼挙筋と眼輪筋を刺激した。

上眼瞼挙筋は二重瞼の綺麗さに、眼輪筋は涙袋の大きさに関与してくる。
外見は、生まれ持った素質に慢心せず不断の努力を重ねることが肝要だ。毎日のケアは怠らないようにしよう。



そうこうしていると、下の階から母親の呼び声が聞こえてきた。

現状整理は中断して、下におりるとするか。
今の時代には結構疑問点も多いのだが、どうせ6歳児の知識と前世の知識を照合したところで分かることは少ないだろうしな。



食卓には豪華な食事が並んでいた。
うちは男爵家の中でも裕福ではない方だったはずだが……俺の誕生日とあって、少し奮発してくれたんだろうな。
暖かい家庭を持てて、幸せな限りだ。

「テーラスの誕生日に、乾杯!」

母・エメナルじゅの掛け声と共に、朝食が始まった。

「テーラス、いよいよだね!」

「う、うん」

姉・バーウェいつきが目を輝かせて聞いてきたのは、6歳の誕生日に役場で行うことになっている「適性診断」のことだろう。

「適性診断」とは、先天的に扱える能力が「魔法」か「気」かどちらなのかを調べる儀式的なものだ。
生まれつき扱えるのは、片方だけだからな。この儀式の結果に基づき、6才から適性のある方の練習を始めるって訳だ。

……本音としては、診断はどうでもいいんだがな。
転生前の俺の適性は魔法だったので、今回も当然魔法だと知っている以上は。
そういうわけで、姉への返事が変なテンションになってしまった。

「緊張してるの? アタシも父さんも母さんも『気』に適性があったんだから、大丈夫だよ。心配しないの!」

「そ……そうかな」

姉は先の俺の態度を、緊張によるものだと捉えたようだ。
だが、そんなことよりも、だ。

俺は姉の言い方に何となく違和感を覚えた。
今の時代への疑問点の一つにも繋がる違和感だ。

何かというと、なぜかこの時代には「気」に生まれつきの適性がある人間を優遇する傾向があるのだ。

そもそも「生まれつき扱えるのは片方の能力のみ」とは言っても、魔力も気も訓練次第で双方扱えるようになるもの。
現に前世の俺は適性こそ魔法だったが、魔法と気の両方が必要とされる転生術を成功させて今ここにいる。

どちらに長けるかは生まれつきの適性よりも、そのあとの努力の方向性によるものが大きいのだが……なぜ「気」が魔法に優るかのような見方がなされているのだろう?

転生前の記憶が解放される前は俺も何の違和感も感じていなかったが、これは明らかにおかしいな。

まあ、理由はぼちぼち探っていくとするか。



好みの料理ばかりが揃った朝食を美味しく食べ終えると、父・ロムニク樹が1つの魔道具を机の上に置いた。

適性診断用の魔道具だ。
本来は役場で行うものだが、男爵家というだけあってその予備が家に置いてある。

「もしテーラスに魔法の適性が出たら、お姉ちゃんが養ってあげるからねー」

姉がそんなことを言う。

……全く、この姉は目の前の美少年を「魔法しか使えない」などという理由で独り占めできるとでも思っているのか。
残念ながら適性自体は魔法なので一時的に姉をその気にさせてしまうが、早いとこ「気」を習得して存分にいろんな女との刹那的な恋ワンナイトラブを楽しませてもらうぞ。

父に促され、魔道具に手をかざす。
すると、魔道具は青色の光を放った。

魔法の適性がある証拠だ。因みに気だったら赤色に光る。

「魔法ね……。それはそれで素敵なことじゃないか」

口ではそう言う父だが、その眼は明らかに光を失っている。

「大丈夫よ。なんたって、私の子だもの」

母は母で、崩壊した論理で自分を納得させようとしている。

姉に至っては無言で抱きついてきた。
美形の血筋だけあって姉も前世の自分では指一本触れたことの無いレベルの美人だが、血の繋がった現世の自分からすれば「離せ」以外の感想は無い。

……ここまで魔法の評価が低いのは、どう考えても異常だ。
思ったより、この時代について急いで知っていく必要がありそうだな。
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