大賢者の二番弟子、転生後は伝説級の強者扱いされる 〜死んでいる間に一番弟子の暴走で大賢者の戦闘理論が失われ、一番弟子も消えたらしい〜

Josse.T

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第6話 二番弟子、家庭教師がつく

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翌日。
俺は家庭教師が到着するのを、今か今かと楽しみにしていた。

鏡をみて、自由に変形可能な永続結界を用いてヘアセットをする。
初対面の人の前では、第一印象が何より大事だからな。

人によってはチャラいという印象を持ちかねない髪型だが……女性と関係を持つような年でもない以上、悪印象を与えることはないだろう。

思えば、毎日魔法でしっかりケアしていたおかげでかなり目元も美しくなったな。
幅広の平行型二重に、ぷっくりとした涙袋。素材が良いと、努力のしがいも増すってもんだ。


家庭教師に真っ先に聞きたいのは、昨今の魔法と気の事情だな。
昨日の夕食時の家族の会話では、魔法と気の併用があり得ないことかのように言われていた。

もしかして俺、師範が生まれる前の時代にタイムスリップでもしてしまったのか……?
いや、ないな。自分で考えてあほらしくなってきた。
転生術では未来にしか行けないってのは常識だ。
いくら俺に転生の才能があるからって、過去に転生する術式なんて組めるはずがない。

というか、組めても組む気も無いがな。



魔法の適性は気の適性に大きく劣る扱いの上に、師範は架空の存在扱い。
更には、適性の無い能力は使えないかのような論調ときてる。

転生前の記憶が解放されてからというもの疑問が増してばかりだが、果たしてどこまで解決できるか。
早く会いたいものだ。


ずっとソワソワしているのもしんどいので、俺は気持ちを落ち着けるために気の鍛錬として瞑想を行うことにした。

アクセサリーの補助効果のおかげか、いつもより深い瞑想に入ったように思う。

この状態で家庭教師を待つとしよう。

☆ ☆ ☆

瞑想開始から1時間半後。
ついに、家庭教師がやってきた。

「はじめまして、家庭教師のマイアです」

やってきたのは、19歳くらいの少女だった。

「若輩者ですが、ペリアレイ魔法学園の元特待生として精一杯教えていきますんで、よろしくお願いします」

「テーラスじゅりです、よろしくお願いします」

ペリアレイ魔法学園。
樹領と王都の間の都市にある、国内有数の魔法学園のことだ。
そこの特待生だったってことは、かなり優秀だったんだろうな。

「まずは、少し話しましょうか」

マイアが、そう切り出した。

この人、人に教えるのが好きなんだろうな。
俺はそう直感した。
最初は「名門の学園の特待生ともあろうお方がなぜ家庭教師などに」と思ったが、雑談で生徒との距離を縮めようとする姿勢からそのことに感づいたのだ。

……「M=BLvだ! やれ!」などと、数式の意味すら解説せずに即行実技に移った師範とは大違いだな。

「テーラス君、何か好きなものはありますか?」

「そうですね……。自分の、顔ですかね!」

ピースの形にした右手を額に当て、俺はそう答えた。
本気ではなく冗談で言っていることを分かってもらうための、演出だ。

ちなみにこの解答、人によってジョークと捉えるか嫌味と捉えるかが分かれる危うさがあるのだが……マイアさんはかなりの美少女だし、いまのをジョークと受け止められるだけの心の余裕はあるだろう。

こういう際どいラインの見極めの積み重ねが、俺の神レベルの処世術へと繋がるのだ。
思った通り、マイアさんはふふっと笑ってくれた。

「面白いことを言いますね」

「逆に、マイアさんの好きなものは何ですか?」

「私は、魔法を人に教えることですね。だから、この職を選んだんです」

マイアさん、そこは「私も、自分の顔ですね」と答えていれば満点だったぞ。
まあ、その答えはその答えで俺の疑問の核心に迫りやすいので、ありがたいのだが。

「じゃあ、魔法についていくつか質問があるんですが、いいですか?」

「はい、何なりと」

俺は、どれについて最初に聞くか考えた。
魔法への不当な過小評価か、大賢者グレフミンについてか、昨晩の会話からの疑問か。
俺が選んだのは、これだ。

「昨日、家族が『魔法と気の両方が扱える人などいない』とでも言うかのように話していたんですが……それってどういうことなのでしょうか?」

するとマイアさんは怪訝な顔をして、こう返した。

「どういうこと、とは? そのままの意味だと思いますよ」

「じゃあ、つまり……魔法と気って、どっちも扱うことはできないんでしょうか?」

「無理ですね。大賢者グレフミンはその両方を扱えた、などと言われていますが、あれもあくまで架空の伝説ですし。だいたい、適性の無い能力を扱うなんて無理に決まってるじゃないですか」

……決まりだな。どういう経緯かは知らないが、この時代には、いや少なくともこの国には、魔力と気の相互作用を知る者がいないようだ。
そして、そうと分かれば魔法が気に劣ると評価されているのも納得がいく。

確かに、魔法と気を単体同士で比較すれば、殆どの場面において魔法より気の方が強力な戦力になるのだ。
両方扱えて当然と思っていた俺は、そんな無意味な比較、すっかり忘れてしまっていたがな。

魔法使いへの不当な評価の低さは、完全に無視してていいって分かったのは収穫だな。

……さて、俺が気を扱えること、どう説明するかな。

ここで「いや本当は可能なんです!」とか言ったところで、マイアさんを説得するのは不可能だろう。
6歳児の戯言と切り捨てられるのが関の山だ。

ならば、やることはただ一つ。
実演だ。

「ちょっと見ててもらっていいですか?」

そういって、マイアさんの目の前に右手を出した。
そして――剃刀の刃程度の稚拙なものではあるが、気功剣を具現化させてみた。
更に、気功剣に炎属性の魔法をまとわせる。

実用性こそほぼゼロではあるが、なんちゃって魔剣の完成である。

「魔法を付与した気功剣です。いかがでしょう?」

俺がそう問うと――マイアさんは額に皺を寄せ、この世に存在してはいけないものを見るかのように気功魔剣を見つめた。
その顔は、既に真っ青だ。

「なんで……そんな……こんなことがあっていいのでしょうか?」
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