大賢者の二番弟子、転生後は伝説級の強者扱いされる 〜死んでいる間に一番弟子の暴走で大賢者の戦闘理論が失われ、一番弟子も消えたらしい〜

Josse.T

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第11話 二番弟子、魔族の正体を語る

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気功剣を顕現させ、身体強化も発動する。
5年間で俺もだいぶ成長したもので、今では刃渡り60cmの気功剣を安定して顕現させられるようになっている。

リミッター解除で魔流を倍にしているため、普段の全力と同じ要領で身体強化をかけつつ、気功剣にも魔法を付与することができる。

今回は、炎属性魔法を付与するか。

強化された全力ダッシュで、一気に魔族に近づく。
そして──

「気炎撃」

炎を纏わせた剣戟で、一気に魔族の首を斬り飛ばした。

「流血なし。リミッター解除を併用すれば、こんなもんか……」

魔族の首からは、一滴たりとも血が流れていない。
気炎撃が、血管を焼ききって血止めできるくらいの火力は出せていたということだ。

これをリミッター解除無しでできれば、前世でも一応一人前と認められたんだよな。懐かしい。

11歳にしては、いい感じに成長できていると言えるだろう。

「あ、死体の処理はよろしくお願いします」

先ほどまで戦っていた冒険者の1人にそうお願いした。
が……その冒険者はといえば、目をひん剥き、顎が外れんばかりに口を開けたまま固まってしまっている。

そして口をパクパクさせるも、全く声は出せていない。

こんな暴論を言うのは柄でもないのだが……「嫌だ」と言わないのは了承したからと見做し、この場を後にさせてもらうぞ。

てってけてーと歩いて、俺は姉とマイアさんが待つ場所へと帰った。

「「な、何だったの今の技!?」」

姉さんとマイアさんの声が重なった。

「今の技、というのはリミッター解除か気炎撃か、どっちのこと?」

「最初の技よ。なんかかつてないレベルで魔力が増大したじゃない、悪い夢でも見てるみたいだったよ?」
マイアさんはいつになく早口で、そうまくし立てる。

「ああ、リミッター解除ね。あれは気でツボを刺激して魔流を倍にする技だよ。マイアにはまだ教えてなかったな」

「あんな凄い技、どうして教えてくれなかったの?」

「気でツボを刺激するときに、全身にかなりの激痛が走るからな。慣れればそれだけの代償で使える便利な技って認識になるけど、最初は激痛で半日動けないこともザラだ。だから、他の訓練を先に習得してもらおうと思ってた、ってのが正直なとこだな」

「そうなの……。まあ、その事情を聴いたら、教えるのを渋る気持ちも分からなくはないわ」

マイアさんは納得したようにそう言った。と、思いきや……

「でも、それを踏まえた上で私の気持ちは言わせて欲しい。私は、どれほどおぞましい激痛が待っていようとも、その技を習得したいの」

そう来たか。
確かに、今のマイアさんなら、前世の師範の基準なら「希望者はリミッター解除の訓練をしてもいい」と言われる最低限の基準には達している。
だが……俺がそれを教える心の準備が出来てないんだよな。

師範と違って、俺はそういうのを血も涙もなくできる人間ではないのだ。

だから、とりあえずこう言っておく。

「とりあえず、マイアは早く三角関数を覚えて『RLC共振訓練』をマスターするんだ。リミッター解除は確かに瞬間的には強力だが、それより普段から積み重ねる基礎の方がもっと重要だからな。それまではおあずけってことで」

RLC共振訓練というのは、体内で螺旋の魔力の流れ、魔力抵抗、魔力絶縁部分を直列に並べ、その状態を維持したまま交流魔流の訓練をするというものだ。
「魔気誘導」により魔圧の変化の周期が体内の三か所でずれて複雑な現象を起こすため、魔圧、魔力、気の場を3つとも同時かつ効率よく訓練できる「最速で上達できる訓練」だ。

俺は10歳の頃からこの訓練を始めたが、マイアさんは今になってもまだこの訓練を苦手としている。
おそらく、訓練の原理の理解に必須な三角関数の習熟に苦労しているせいだろう。

こう言えば、向こう数か月はリミッター解除習得を先延ばしにできるだろう。
俺のペリアレイ入学まではあと1年あるし、その頃俺の心の準備ができてれば十分じゃないか……と、思う。

「あ、じゃあ、私はあの冒険者たちについて行って、今回の件を処理してくるね」

俺とマイアさんの会話が止まったのを見計らい、姉さんはそう言って去って行った。

姉さんは貴族の申し子と言っても過言ではないくらい領地経営に熱心で、普段も時間を惜しんで猛勉強するだけでなく、こういった実地での活動は欠かさない人だ。

その代わり戦闘技術はあまり興味が無いようで、俺が魔法と気の両方が使えると分かっても「さすが我が弟」以上の関心は持たなかったが。

つくづく、適材適所な一家だ。
男女平等な世の中に転生できたのは本当に良かったと思う。

「帰ろうか」

「うん」

俺やマイアさんはこれ以上ここにいる意味は特に無いので、屋敷に戻ることにした。

☆ ☆ ☆

「ねえ、テーラス」

帰り道の途中、不意にマイアさんが聞いてきた。

「なに?」

「そう言えばさ、魔族を倒す時、なんとなくテーラスは魔族を憎んでるように見えたんだけど……面識、無いはずよね?」

「ああ、そのことか。確かに、奴自身には面識は無いな」

「じゃあ、なんで?」

「まあ奴はな。言うなれば……俺の師範を殺した奴の、残りカスみたいなもんだったんだ」

「残り……カス?」

「残りカスって言ってもなんのことか分かんないよな。良かったら、俺の推測を最初から話そうか?」

「うん、お願い」

「まず、大賢者グレフミンを殺した奴だが……ワートっていう、大賢者の一番弟子でまず間違いない」

「え? そうなの?」

「ああ。あいつは戦闘能力に限って言えば、大賢者グレフミンを超えていた。その上素行不良の目立つ危険思想の持ち主でな、他の弟子たちからも警戒されてたんだ。実際に俺が見たわけじゃ無いが、俺が転生した後あいつが暴れたのはほぼ確定だろう」

「そ、そうだったんだ。でも……今の魔族がワートって言う人本人ってわけじゃないのよね?」

「それは無いな。さっきの『気炎撃』に反応できないようじゃ、寝込みを襲っても師範には勝てないだろう。ワート本人は、呪いにかかってとうの昔に死んでいるはずだ」

「呪い?」

「ああ。三番弟子のウェルマクスに『もしワートが暴走した時の為に、何かできることがあったらしといてくれないか』って相談されてな。俺ができることなどたかが知れてると思いつつも、得意の転生術を応用して『転生妨害』の呪いだけかけておいたんだ」

「ってことは、ワートは転生しようとしたってこと?」

「ああ。おそらく、ワートは師範を殺した後、暴虐の限りを尽くした。そして……張り合いのある武闘家を全滅させてしまったところで、更なる遊び場を求めて転生しようとしたんだろう」

「で、呪いが発動したのね」

「おそらくは。『転生妨害』は転生術を使わない限り何の影響も及ぼさない代わりに、どんなに力の差がある相手でも転生時に確実に始末できるという利点がある。要は、作戦勝ちだな」

「じゃあ、それと魔族の関連は?」

「『転生妨害』には、四散した転生術者の魂の欠片がごく稀に他人の魂と融合してしまうという欠点があるんだ。そうして誕生したのが、魔族という新たな種族なんだろう」

「そんなことが……」

「俺が簡単に魔族を倒せたのも、所詮は残りカスだったから。まあ、言うなれば復讐は転生中に済んでいるようなもんだ。が……俺は転生妨害の術者として、後始末の責任は負うことに決めたよ」

「……一つ聞きたいんだけど」

「どうした?」

「テーラス、大賢者グレフミンを置いて転生しちゃった事、後悔してない?」

「それは無いな。師範とワートの戦いの現場に俺がいたところで、足手まといになる事間違い無しだ。むしろ、転生して現場に居合わせなかったのは、結果転生妨害に気付かれずに済んだという意味でも最良の選択だったはずだ」

「良かった。テーラスが気に病んでないと知って安心した」

まあ、ほんとアレワートが暴れたら手のつけようが無いからな。気づいたら仇はとれてたっていうのは本当にありがたいことだ。

師範とて、俺が復讐心に駆られて性格をねじ曲げるのは望んでないはず。
気楽に生きながら、魔族に出会い次第後始末に従事するスタンスでいこう。
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