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第26話 二番弟子、校舎の裏へ向かう
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迷宮実地訓練の日の放課後、俺は職員室に呼ばれ、遂に黒の覆面更生員の覆面を受け取った。
覆面はよく出来ていた。
まず、覆面にはフォルマントシフトとごく軽めのオーバードライブの術式がかけられていて、話し声では中の人がバレないようになっていた。
息も普段通りにできて、「覆面のせいで呼吸がしづらく、ハンデになる」ということも無さそうだった。
せっかくここまで高性能にできているのだから、と思い、俺は爺さんに許可を取って覆面に幻視の術式もかけた。
この幻視魔法は、覆面の装着者の全身に対してかかるタイプで、これをかけておけば体型から中の人が割り出される恐れが少なくなる。
「じゃあ、この覆面は保管室に置いときなよ」
改造が済んだところで、爺さんがそう言ってきた。
まあ、それでも良いんだが……それだと、咄嗟の状況に対応出来なくないか?
そう思ったので、俺は爺さんにこう提案した。
「保管室じゃなくて、収納術にしまっておいてもよろしいでしょうか。こうしておけば、現場での機動力が上がりますんで」
そう言って覆面を仕舞うと……爺さんは目をカッと見開いて、こちらを指差してきた。
「ユー! 何ちゃっかりと伝説の技を使っちゃってんの!」
オーマイガーと言わんばかりの表情で、指がプルプルと震えている。
そうだな。このまま、動揺している隙に同意を得てしまおう。
「このまま持ち帰りますね」
「あ……あぁ……。収納術……本当にそんな技が存在したとは……」
同意は得られたみたいだな。
そう捉え、俺は爺さんの部屋を後にした。
☆ ☆ ☆
「どう? フラッシュ出たよ!」
「残念だったな、俺はフルハウスだ」
「だあああああ」
覆面を貰った次の日の朝、俺たち4人はポーカーに勤しんでいた。
2人がプレイし、残り2人は観戦するという形でだ。
今のゼルトvsサムの対決では、サムの勝ちとなった。
そして、次は俺とマホートの対決の番。
試合を始めようとしたその時──突如、教室に数人が怒鳴り込んで来た。
「おい。この教室に、テーラスって奴はいるか」
ったく、面倒な奴らだ。
どうせ、昨日の件で6年D組の奴らがいちゃもんつけに来たんだろう。
まあとりあえず、目当ての奴がいなければ退散してくれる可能性がある以上、まずは視線誘導で様子を見よう。
もしクラスメイトに危害を加えるようなら、その時割って入れば十分だ。
クラスメイトたちの視線はポーカーをしている場所へと向いたが、その時点で俺は既に最も意識が集まらない場所に移動している。
ここで、どう出るだろうか。
「い、今は彼はここにはいません! その……彼、遅刻癖があるんで」
そう言ってくれたのはマリカだった。
マリカとは、教室内では滅多に話さないが、放課後になるとよく一緒になって遊んだりしていた。
その中で、ある日俺は転生探知が使えることと、それによりいつでも助けに行けることを話した。
こんなトラブル時でも勇敢に発言できるのは、その安心感故だろうか。
何にせよ、神がかり的な采配だ。
……最後の一言はちょっと余計だが。
「そうか」
ここで、怒鳴り込んできた集団の中で1番後ろにいた人が声を発した。
明らかに、その1人だけ纏っている雰囲気が不良のそれではない。
あいつがリューナか。
本当に、魔族じゃなかったんだな。とりあえず、転生探知が使えるよう魂の波長だけ覚えておくか。
「なら、そいつが来たらこう伝えとけ。『今日の放課後、校舎の裏へ来い』ってな。もしそいつが来なければ、お前らの命は無い」
命。
等価交換が成り立ってなさ過ぎて、俺は吹き出しそうになった。
……コイツの場合は過去にガチで殺しているので、笑い事じゃないのがアレだが。
うん、決まりだな。
行ってやろうじゃないか、放課後に、校舎の裏へ。
但し、1年A組のテーラス樹としてではなく黒の覆面更生員として、単騎ではなく教員を連れてだがな。
☆ ☆ ☆
放課後。
リューナ達が待っているであろう校舎裏に、俺は6人の正規の覆面更生員と共に向かった。
案の定、そこには朝教室に乗り込んできた奴らが屯していた。
「覆面更生員に頼る、か……。やっぱ特待生ってお行儀に拘るのか、それともただの臆病者か」
リューナだと予想をつけている奴が、そう言いながらつかつかと歩いてきた。
うん。いろいろとツッコミたくなる言いようだな。
本人が来てるとは思ってないだろうから、当然の反応ではあるのだが。
「しかも、黒の覆面更生員? 生徒をこういう場に駆り出すとは、教師が聞いて呆れるぜ」
リューナの発言に、その取り巻きの笑い声が続く。
そして、その発言もあってなのか、覆面更生員のうち1人がこんな事を言い出した。
「ああ言われちゃ我慢ならんな……。黒の覆面更生員、すまないが、まずは教師陣だけでアイツらを取り押さえてみるから、危うくならない限りは手を出さないでくれないか」
そう言う声は、若干震えているようにも感じられた。
……まあ、分からなくはない矜恃だ。
俺抜きだと危ういと分かった上で、それでも教師だけで場を収める努力はしたいのだろう。
気持ちを無碍にする訳にもいかないので、まずは観戦といくか。
覆面はよく出来ていた。
まず、覆面にはフォルマントシフトとごく軽めのオーバードライブの術式がかけられていて、話し声では中の人がバレないようになっていた。
息も普段通りにできて、「覆面のせいで呼吸がしづらく、ハンデになる」ということも無さそうだった。
せっかくここまで高性能にできているのだから、と思い、俺は爺さんに許可を取って覆面に幻視の術式もかけた。
この幻視魔法は、覆面の装着者の全身に対してかかるタイプで、これをかけておけば体型から中の人が割り出される恐れが少なくなる。
「じゃあ、この覆面は保管室に置いときなよ」
改造が済んだところで、爺さんがそう言ってきた。
まあ、それでも良いんだが……それだと、咄嗟の状況に対応出来なくないか?
そう思ったので、俺は爺さんにこう提案した。
「保管室じゃなくて、収納術にしまっておいてもよろしいでしょうか。こうしておけば、現場での機動力が上がりますんで」
そう言って覆面を仕舞うと……爺さんは目をカッと見開いて、こちらを指差してきた。
「ユー! 何ちゃっかりと伝説の技を使っちゃってんの!」
オーマイガーと言わんばかりの表情で、指がプルプルと震えている。
そうだな。このまま、動揺している隙に同意を得てしまおう。
「このまま持ち帰りますね」
「あ……あぁ……。収納術……本当にそんな技が存在したとは……」
同意は得られたみたいだな。
そう捉え、俺は爺さんの部屋を後にした。
☆ ☆ ☆
「どう? フラッシュ出たよ!」
「残念だったな、俺はフルハウスだ」
「だあああああ」
覆面を貰った次の日の朝、俺たち4人はポーカーに勤しんでいた。
2人がプレイし、残り2人は観戦するという形でだ。
今のゼルトvsサムの対決では、サムの勝ちとなった。
そして、次は俺とマホートの対決の番。
試合を始めようとしたその時──突如、教室に数人が怒鳴り込んで来た。
「おい。この教室に、テーラスって奴はいるか」
ったく、面倒な奴らだ。
どうせ、昨日の件で6年D組の奴らがいちゃもんつけに来たんだろう。
まあとりあえず、目当ての奴がいなければ退散してくれる可能性がある以上、まずは視線誘導で様子を見よう。
もしクラスメイトに危害を加えるようなら、その時割って入れば十分だ。
クラスメイトたちの視線はポーカーをしている場所へと向いたが、その時点で俺は既に最も意識が集まらない場所に移動している。
ここで、どう出るだろうか。
「い、今は彼はここにはいません! その……彼、遅刻癖があるんで」
そう言ってくれたのはマリカだった。
マリカとは、教室内では滅多に話さないが、放課後になるとよく一緒になって遊んだりしていた。
その中で、ある日俺は転生探知が使えることと、それによりいつでも助けに行けることを話した。
こんなトラブル時でも勇敢に発言できるのは、その安心感故だろうか。
何にせよ、神がかり的な采配だ。
……最後の一言はちょっと余計だが。
「そうか」
ここで、怒鳴り込んできた集団の中で1番後ろにいた人が声を発した。
明らかに、その1人だけ纏っている雰囲気が不良のそれではない。
あいつがリューナか。
本当に、魔族じゃなかったんだな。とりあえず、転生探知が使えるよう魂の波長だけ覚えておくか。
「なら、そいつが来たらこう伝えとけ。『今日の放課後、校舎の裏へ来い』ってな。もしそいつが来なければ、お前らの命は無い」
命。
等価交換が成り立ってなさ過ぎて、俺は吹き出しそうになった。
……コイツの場合は過去にガチで殺しているので、笑い事じゃないのがアレだが。
うん、決まりだな。
行ってやろうじゃないか、放課後に、校舎の裏へ。
但し、1年A組のテーラス樹としてではなく黒の覆面更生員として、単騎ではなく教員を連れてだがな。
☆ ☆ ☆
放課後。
リューナ達が待っているであろう校舎裏に、俺は6人の正規の覆面更生員と共に向かった。
案の定、そこには朝教室に乗り込んできた奴らが屯していた。
「覆面更生員に頼る、か……。やっぱ特待生ってお行儀に拘るのか、それともただの臆病者か」
リューナだと予想をつけている奴が、そう言いながらつかつかと歩いてきた。
うん。いろいろとツッコミたくなる言いようだな。
本人が来てるとは思ってないだろうから、当然の反応ではあるのだが。
「しかも、黒の覆面更生員? 生徒をこういう場に駆り出すとは、教師が聞いて呆れるぜ」
リューナの発言に、その取り巻きの笑い声が続く。
そして、その発言もあってなのか、覆面更生員のうち1人がこんな事を言い出した。
「ああ言われちゃ我慢ならんな……。黒の覆面更生員、すまないが、まずは教師陣だけでアイツらを取り押さえてみるから、危うくならない限りは手を出さないでくれないか」
そう言う声は、若干震えているようにも感じられた。
……まあ、分からなくはない矜恃だ。
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