『コミュ障ビビリは妹の前で強がりたい!(※つよい)』〜ビビりは追放? なら今から本気出すから全員オレの妹な!(自己暗示)【配信を添えて】〜

時雨オオカミ

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追放させる詐欺が流行ってるんだってよ!

噂が悪意でめちゃくちゃ歪められてるんですけど!?

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「……はあ~」

 ズルズルと背中を宿屋の壁にくっつけて座り込む。妹とは隣の部屋同士で、現在あの子は部屋に荷物を置きに行っている。だから今は取り繕う必要はない。思う存分に表情を変えて心の中で叫ぶ。

 のああああああ!? 
 こっっっっわ!? こっっっっわ!? 改めて思うけど、なにこれなにこれー!? 
 意味分かんないんですけど!? 怖すぎるだろおおおおおおお!! 

 待って心臓がバクバクいってる……死にそう。耳から心臓出てくるんじゃないのこれ? やば、マジ死ぬ。なにこれ怖すぎるって。

 え?? みんなそんなにオレのこと嫌いだったの?? 泣くんだけど。わりと真面目に悲しいんですけど!! 

 確かにさ! 確かにさあ! オレコミュ障だよ? 
 頭抱えてたのは連携がバラバラすぎて傷つきまくるメンバーのために、必死に苦手な回復魔法使って傷治してあげてたんですよ!? 確かにオレの回復魔法は瞬時に治るから気づきにくいって言われてるけどさあ! 

 ぶつぶつ呟いてたのだって詠唱してただけなんだけど!? 
 だって聞かれたら恥ずかしいじゃんよ! 

 基本詠唱って集中して魔力を練り上げるために言うものだから、みんなだいたいオリジナルだし! 精霊に「協力して!」ってお願いするものだから美辞麗句びじれいくたっぷりですし! オレの語彙力のまったくない詠唱好き好んで聞きたい人なんていないだろ!? 

 ただでさえ嫌われてるから端っこで援護してただけなのに! なんでそれで無能扱いなの!? だって喋ったら喋ったでうるさいって! 言うじゃん! だから集中してサポートするだけにしてたのに! 

 雷属性なら一切詠唱いらないから、そっちで攻撃しようとすると前に剣士が飛び出してきたりしてあっぶねーから! だから攻撃じゃなくてわざわざ苦手な回復に専念してたのに! お前ら少しは後衛のこと考えろよって何度思ったか数知れないんですけど! 


 つーかこわぁ!? 
 逆恨みもいいところだよコノヤロォ! 

 もうやだ……しかもオレをリンチする計画っぽいの立ててたし……なによりアルフィンに一連のことがバレた。これが一番怖い! 

 ただ……彼女が言っていたことは事実だ。

 ギルドにはそれぞれ電糸の中継地点となっている、でっかく成長したエレクトロ・スパイダーが飼われているのだが、これがまた重要なんだよなあ。

 冒険者登録をしたらまず冒険者端末を支給されるのだけれども、この端末のデータ登録に数時間かかる。

 なぜなら、その冒険者に合わせた個別のIDを発行しなければならないから!

 人間も動物も、みんな身体の中に微弱な電気というものが流れているわけで。
 その『電磁波』は一人一人でまったく違う形と流れかたをしていて、その電流を感知さえできれば個別認識が可能になるくらい特徴的なんだ。

 子機になっているエレクトロ・スパイダーにはこの冒険者の体に流れる微弱な電気を感知してもらって、それを更に暗号化して電気信号の識別番号を作成。それを受け取ってから冒険者端末に番号――俗称で言う『ID』が登録されることになるわけ。

 一人一人違う電磁波を記録し、個人の電磁波を登録した冒険者に渡すわけだから当然、識別番号――IDは管理者側からしてみればバレバレなんだよ。

 この世に同じ電磁波はひとつとして存在しないの。

 だから、電気信号の暗号を解読できて、端末情報を握っている人間ならば個人特定が容易だ。

 そしてこのID情報はギルドマスターと研究室長。地下電糸網アンダーネット管理課の人間にのみ閲覧が許可されている。

 そのどれにも属さないオレは、本当なら見れないはずなのだが……残念ながらオレは開発者なんだよね~。

 それに、生まれたときから持っている『天賦の才能ギフテッド』……『雷を愛し、愛される才能』があるため、オレは制御用のイヤリングさえしていなければ人の身体に流れる電気信号を肉眼でることができてしまう。

 電気系統の情報を抜くことだって簡単。教えられていなくとも、掲示板に載っているIDだけで個人の特定から居場所の特定までできちゃうのだ。

 まあ、それはそれとして……一番まずいのはギルマスにオレが追放されたことがバレたことである。

 怒ってる。絶対怒ってる。
 んで、あの人のことだから確実にオレが逃げようとしたことも見抜かれているはず……! 

『ノア、アルフィンから、着信、だゾ』

 ビクンッと肩が跳ねる。

「あ、あああああ、レビン。切っちゃって」
『だめダぞ』

 背後から小さなささやき声が聞こえてくる。
 端末は着信音が鳴らないようになっているのに、なぜにこの子は伝えてきちゃうんでしょうねぇ! 

 この声の正体は、オレの髪の毛をくくっている黄色い蜘蛛の髪飾りである。
 正確に言えば、『髪飾りのフリをしたペットのエレクトロ・スパイダー』だ。名前を『レビン』という。

 オレの発する電気が美味しいらしくずっと一緒にいたがるので、仕方なく髪飾りとして誤魔化しているのである。

 にしてもこの子、オレを死刑台送りにでもする気か?? 
 今着信に出たら死ぬほど怒られるだろ?? 

『ノア、観念シろ』
「ううううううペットが意地悪してくるううううう!」

 この情けない声が隣の部屋にいるユラに聞こえたら大変なので、声のトーンを落としてさめざめと泣き始めてみる。

『いイ加減にシろ、こノ腰抜ケ』
「ううううひどいよぉ……ぴえん」
『泣いテないで、出ろヨ』
「ふうううう、ぴえん超えてわおんだよもおおおおお」

 だってさ、今あいつ怒り心頭だって! ああいうときは他人の目がなくてもすげー高慢チキになってるのに……絶対怒鳴られるって。

「落ち着くのを待ったほうが」
『出ろヨ』

 あのギルマス兼幼馴染は、俺とは真逆で他人の目があるときと苛立っているときは高潔で高慢チキで敏腕上司を気取っているが、オレと二人きりのときなら素が出て可愛くなるんだよ。

 だから落ち着くのを待ったほうがオレの心労が少なくて済むって言ってるのにぃ!

『出ルんだ。ちょっとクらい鬱憤うっぷんヲ晴らさセてやレよ』
「うううう、分かったよぉ……」

 意を決して端末に手をかけ、耳に当てる。
 瞬間、オレの脳天に衝撃が駆け抜けていった。

「五秒以内に出なさいノアァァァァァ!」
「ひぎゃっ」

 ブチンとやべー音を立てて周囲が無音になる。
 オレの鼓膜よ永遠に。サヨナラは突然に。

『……』
「ごめんなさい、大声を出しすぎました。無事かしら?」

 瞬間、レビンの微量な回復魔法によって鼓膜が復活してアルフィンの声が耳に入る。おかえり鼓膜さん。仕事しなくていいよ。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「もう一度鼓膜をぶち抜いて差し上げましょうか?」
「ごめんなさい」

 根負けした。
 二人きりのときはデレまくりのくせに……本当に可愛くないやつ。
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