『コミュ障ビビリは妹の前で強がりたい!(※つよい)』〜ビビりは追放? なら今から本気出すから全員オレの妹な!(自己暗示)【配信を添えて】〜

時雨オオカミ

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追放させる詐欺が流行ってるんだってよ!

大宴会でめでたしめでたし?

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「はあー、なるほどなぁ。こんな裏があるモンなんだなぁ」

 宴会の席なのに、テーブルの上を紙束だらけにしたおっさんが呟く。

 あれはジュエリースライムの項だな。
 魔物の生態学は召喚士サモナー魔物使いテイマーに質の良い冒険者が現れ出した辺りから随分と進んだらしい。

 昔は平均的な体長とかも測れなかったし、ジュエリースライムみたいな特殊条件下でのみ危険度が上がるタイプはその性質が本当に不明だったみたいだ。

 学問が進んでいなかった時代に、ジュエリースライムの体内に蓄えている宝石を商業利用する連中が現れて、『安全で簡単に狩れる』って有名になった。
 狙った獲物は絶対に仕留めるから危険度は周りに知られなかったし、実際、その時代の行方不明者の数は多い。

 それでもスライムのせいだと判明しなかったのは、同じ地域に生息する魔物が行方不明になった人を襲って食ったんだろうと思われていたから。

 そんな状況が変わったのは、冒険者界隈に言葉の通じる幽霊族や死神を名乗る……まあいわゆる『魂が視認できる』人が現れてからだね。
 スライムの蓄えたジュエリーには魂が詰まっていて、幽霊族からしたら『人間の塊』に見えるんだって。こえーよな。

「つーか、おっさんAランクまで来てんのに知らなかったんだな」
「おっさんじゃねーっての。いや、モンスターの生態学みてぇーモンにはあんまり興味がなくてよ。言われてはいたが、長時間文字を読むより実践したほうがいいって思い込んでたんだよ。悪ぃな」

 そこで謝られると居心地が悪い。オレがいつまで経っても許してないみたいじゃん。いや、許さないけど。

「しかし、これは本当に公表しなくていいのかぁ? せめて危険性くらいは公表しとかねぇと、死亡者は減らねぇだろう」
「そう来ると思った。アルフィンはそのあたり進言してるらしいんだけどさ、上の……まあつまりはギルド総合協会が渋ってんだって。お役所仕事って本当に嫌だよなぁ」
「ほう……」
「そんなんだから、いつまで経っても死亡率ゼロにできねーんだっつの」

 いくらこっちが進言しても無駄なくせにさあ、いざオレ達が死亡者ゼロを達したら「どうやった!?」なんて言ってくるんだ。馬鹿だよなぁー、本当に。

「これをいくつも覚えねーといけねぇわけか……」
「そーそー、おっさんも頑張んな」
「おっさんではない」

 おっさん含める、バジリスク討伐配信をしていた連中は結局、アルフィンから約一週間の謹慎処分を言い渡された。ランクを下げる案もあったが、ギルドとして高ランクのやつを降格するのは人材不足的な意味で痛い。

 だからその代わりに、ガルゴらには謹慎中に魔物の生態学を勉強してもらっている。謹慎が明けても、アルフィンから出される問題にスラスラ答えられるようになるまで自分で依頼を選ぶこともできない状態にされたそうだ。

 なんとなくもやっとする部分はあるものの、こいつも死ぬ思いをしたわけだし、もう二度と馬鹿な真似はしないだろうという寛大な処置である。

「ほれ、ノア。おめーも肉食え肉」
「はいはい」

 現在ギルドでは、無事にオレ達が帰ってきたからということで大宴会が開かれている。

 宿屋に置いてけぼりにしてしまったユラは少しだけ怒っていたけど、事情を説明するとすぐに許してくれた。大天使だと思う。今はアルフィンと一緒にギルマスの部屋に行って直接説明を受けたり、冒険者として登録しているところだ。

 いやしかし、ギルメンのミスの尻拭いにオレが駆り出されただけなのにどうしてお前らが宴会すんの? とは思ったが、こいつらにとってあれだけ絶望的な状況で全員死ぬことなく帰って来たことがよほど嬉しかったらしいね。

 あとはユラの冒険者登録祝いと、改めて『オレ』を歓迎する会が主なんだと。おかしいよな、オレはこれでもこのギルドのNo.2なのにさ。だってギルドの名前【炎帝青雷】だぞ? 炎帝のアルフィンと、オレの青雷だ。

 アルフィンがギルドを受け継いだときに名前も変えたから、一番信頼されていたオレの二つ名みたいなもんがギルド名に入ったわけ。

 他のやつらについては、確かに隠してたのも悪いんだけど、ネットの文字と極少数の人間の言葉だけを鵜呑みにして人一人追放するのはさすがにねーわと思う。下手したら人一人の人生大崩壊するのにさ。

 そのことといい、ギルドのやつらは案外馬鹿だったということがよく分かった。オレが過大評価してただけみたいね。

「いや、その件については本当に悪い。戦えないやつが冒険者やっていても死ぬだけだと思ってな……実家に帰ったほうが安全だろうと思ってたんだぁ」
「いや言えよ。おっさん言葉足らずかよ。せめてそれ言ってくれたらちゃんと反論できたからね?」
「は?」

 あ、やめて怖い睨まないで。お前の顔面こえーんだよ! 

「びえっ、いやほら……オレ依頼達成率は100%だし」

 ビビっていてもちゃんとやることはやってるんだ。文句を言われる筋合いはないっての。いや、すがりついて行きたくないって泣き叫ぶのは控えめに言っても迷惑か。すまん。そこだけごめん。
 でもお前の顔面は凶器だからこっち見ないでお願いだから。

「ちょっと見ただけでビビるなよなぁ……あと俺はおっさんじゃない」
「どう見てもおっさんだっつの」
「いくら俺でも傷つくぞ」

 いや強面のおっさんにそんなこと言われても……。

「オレが傷ついた分以上は言ってやる。百万倍にして返してやる」
「百万倍って……お前、桁が多ければいいってもんじゃねぇぞ。頭が悪く見えるし」
「はああああ!? てめーに言われたくねーよ! ちっとは生態学勉強しろこの脳なし!」
「ああん?」
「ひょえっ、ごめんなさぃ……いや、今のオレ悪くないし。反射的に謝ったけどオレ悪くないし」

 言い合っていると、奥のギルマスの部屋からアルフィンとユラが出てきたのを察知する。冒険者登録が終わったらしい。

 目で見なくても分かる。電気信号を感じる範囲を狭めるためにつけている、イヤリングがあってもギルド内の酒場部分……半径十五メートル範囲くらいは意識してなくても確実に感知できるからな。意識すればイヤリングがついていてもそれ以上一応いける。

 イヤリングで感知範囲を制御してるのは、意識してなくても一キロ先とかの電気信号まで全部拾っちゃって脳内処理が追いつかなくなるからだ。あれ、気持ち悪くなるんだよ……すげー頭痛くなるし、そんなに情報処理できないっつの。確か、最大で十キロ範囲まで分かったはずだ。それやって一回ぶっ倒れたことあるから、もう二度としたくないけど。

「ユラ!」
「お兄ちゃ……兄さん! もう。ちゃんと食べないとダメだよ?」
「あはは、ごめんな。オレ、そこまで食べるほうじゃないから……それより、登録はちゃんとしてもらったか?」

 はあ~、大勢の前だと『お兄ちゃん』呼びが恥ずかしいんだね。それでも言いかけるあたりオレの妹は最高に可愛い。

「……切り替えはえーな」
「うるせー、言うな」
「こいつっ」
「あはは、どうしたんだ? ガルゴ」

 隣でボソッと呟いたおっさんの足を踏む。おっさんの額に青筋が浮かんでいてめっちゃ怖いがそれはそれ。今は妹の前。情けなく叫ぶわけにはいかない。

「うん、うまくできたよ。ほらギルドカード」
「うんうん、よかった。これでユラも立派な冒険者だ」
「これで兄さんと一緒に活動できるね!」
「そうだなあ」

 逃げる口実が消えるんだよなあ……嫌がることも、もうできないんだよなあ。
 ニヤニヤとこっちを見ているおっさんの足をもう一度念入りに踏んでから、妹を隣に座らせる。

「わたしも隣いいかしら?」
「げっ」
「げってなによ。仕事増やすわよ」
「ははっ、うん。ごめんな、アルフィンもいっぱい食べてくれ」
「ええ、そのつもり」

 ギルマスモードのアルフィンがおっさんを押し除けてオレの隣に座り、両手の花状態になる。おっさんが微妙に引いた顔してたがまあいいだろう。

「ノア、これも美味しいと思うわ」
「兄さん、デザートもあるんだって!」

 うん、まあ、悪くないよな。

「顔がだらしなくなってんぞ」
「そんなことない」

 おっさんは黙っててくれ。

「レビンもほら、オレの静電気食ってるのもいいけどチーズとかも食べなよ」
「オウよ」
「な、なんだあ? そいつ!」
「なにって、エレクトロ・スパイダー。オレのペットだから大丈夫」
「は?」

 あー、SSR級冒険者なことは明かしたけど、地下電糸網アンダーネットを開発した件は言ってなかったな。仕方ない。その辺も教えるしかないか……まずはレビン。エレクトロ・スパイダーの生態についてからだ。

「んじゃ、こいつのこと知りたかったらそこの書類読んでからにしてくれ」
「お、おう」

 でっけー体でちっさい書類を手に四苦八苦している姿を見ると、まあ仕事に真面目ではあるんだろうなと思う。

「兄さん、お酒とかは飲まないの?」
「ノッ、ノアはだめ!」

 ユラの言葉に、そういや宴会なんだしいいかなと思ったらアルフィンから待ったが入った。
 そういえば最初の一回以来、お酒を飲もうとするたびに止められる。なんでだろう? 

「お、泣き上戸か? 気になるからほれ、飲んでみろよノア」
「んー、まあ、弱いわけではないし。いざとなったらレビンに正気に戻してもらえるし……よし。おっさん、オレ飲んだらどうなるか知らないからさ、どうなってたかあとで教えてよ」
「いいぜいいぜ、飲んでみな!」

 今まで知らなかったオレの酒癖。
 アルフィンにいくらきいても顔を赤くして「勘弁して!」って言われるだけだったから気になってたんだよ。

 そう思いながら、オレはグラスを傾けるのだった。
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