最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
385 / 625
14章

357話 イベント恒例の相手

しおりを挟む
 新しくかっぱらった車に乗り、3人で移動中。
 最初は車盗んで移動するのに抵抗があったし、警察NPCに追い掛け回されるのにも少し不安を感じていたが、人間何回かやったら慣れるもので、今ではうざったいってくらいにしか感じない。

「それで、他勢力は?」
「うむ、大きく5つあって、パワーバランスは今の所は均等、クエストの達成有無により押し引き……と言った感じだ」
「陣取り合戦するゲームなんてものもあったのう」
「そう、基本はそれらしい」

 助手席でいつものようにメモ帳を開きながらその話を纏める。こういうのばっかりやっている気がするな、私は。

「一回でどれくらいでなんだろねー……通常マップで稼ぎもしたいし、具体的なイベント内容出てたっけ」
「出てたじゃろ?期間は2週間程で、通常のマップとイベントマップを切り替える事が可能ってのう?」
「いつから開始くらいしか見てなかった」

 あれこれ準備して何かをする事が多いけど、そこまで大事じゃない物って目が滑るんだよ。だからイベント開始くらいしか気にしていなかったてのもある。と言っても、当たり前だがイベントに合わせて新しい銃を創ったり、ガンナーギルドのNPC好感度を上げてみたり、色々と手を尽くしたのは事実。
 惜しいのは此処までしっかり作った銃を誰にも見せていない上に、トカゲにすら「秘密」と言ってパーツだけ作らせた所か。
 
「5勢力だが……ノルテ、イステ、オステ、サウテ、セントラと街があって、拙者らはノルテという地名の所に所属している」
「なんとなーく、分かりやすい名前になってるわね」

 東西南北中央って意味だろう。うん、まあ分かりやすいってのはかなり大事な事だ。物凄く凝った名前を付けたり長い名前を付けた所で、大体は略されて言われる。分かりやすさってのは本当に大事。重要な事だから二回言う位には。

「後は最低の街とか俗称が別にあるって感じ?」
「うむ、その通り」
「よく調べたもんじゃな」
「それは思った、どういう事してきたん」

 ふふんと少し得意げな顔をしながらメモ帳を開きつつ、解説タイム。

「まずはクラン会話フレンド会話から参加しているかどうかを確認、メッセージは封鎖されていなかったからそこも使い、どこにいてどういう感じかを聞きだした」
「結構しっかり情報集めてた」
「うむ、其れと合わせてマップの境界線を一般人を装い移動し、プレイヤーから直接話も聞いた」

 話を聞くほど、この忍者がしっかり諜報としての忍者をしていることがよくわかる。おしゃべり忍者のやつはどっちかっていうと忍者大戦的な、派手に忍術ぶっぱして戦う方なので、系統が違う。何か違うなーって違和感があったのだが、此処で確信したわ、こいつ圧倒的に地味だ。拙者と言ったり、動きのあるような事をしているんだけど、何から何まで地味なのよ。
 車から1人離脱する時も、ムササビの術?なのか風呂敷を広げてブレーキをかけてすたっと着地していたわけだが、うん、やる事は派手に見えるがやっていることは凄い地味なんだ。でもまあ、地盤を固めるとか、足元からって考えているのならいいプレイヤーか。

「それで、名前以外に分かった事は」
「そうじゃの、そこは大事じゃ」
「まずプレイヤー同士は基本的にどの勢力にいるかは分からん、プレイヤー同士のクエストが発生した場合に、ようやく分かると言った形だ」

 これはさっき追いかけられていた時の話だからだろうなって感じ。ただ他勢力には会話ではなくメッセージしか送れないって事はその辺りの情報戦的な事もあるんだろうか。

「それとクエストの発生基点はあくまでもNPC相手の物で、そこから派生して他勢力の追撃などがメインらしい」
「さっきやったのと概ね変わらぬな」
「勢力図が変わるのはまずNPC相手で、それが成立するかは追撃を逃げられるかどうか……ってとこか」

 後部座席で「その通り」と返事をして満足そうにしている。私と爺だけじゃとりあえず暴れまわって走り回って終わっていた可能性はかなり高い。って言うか、それだけだったな。

「そうなってくると、近場で敵対勢力の相手がNPC相手のクエストを成功させると、私達も追撃戦になるか」
「おぬしら、飛び道具は?」
「拙者、一応打剣は持っておる」
「私は当たり前だけど銃器だけど、何で?」

 そういうと、少し加速し始め、前を見ろと言う様に合図される。なるほど、追撃戦は突発的に発生するから、いきなり表示が出てくるのか。
 そんな事を確認していたら目の前でバタバタと建物から出てきたプレイヤーが4人。足でもある車をが近くにないらしいので必死こいて走っているのが見える。

「なるほど、追撃戦がイコール防衛戦になるわけだ」
「やるかえ?」
「拙者はいつでも」
「それじゃあ、まあ、潰しに行こうか」

 外に紫煙を流していた葉巻を咥え、大きく吸って紫煙を吐きだしてから、葉巻をぷっと吐き捨ててからTHを取り出して準備する。




「いけいけいけ!」
「車どこに止めたのよ!」
「あっちだったかなー」
「もう追手が来ますよ」

 4人それぞれがぎゃーぎゃーと騒いでいるのが走っている車の中からでもよくわかる。最近ゲームと仕事ばっかりで走ってないな、たまにはリアルで運動でもするか。

「このまま進行方向上に車を回すかの?」
「つーか爺って何が出来るんだ」
「ライダーは何かに乗ってさえいればどうにでもなるんじゃよ」
「では悪魔殿と拙者が下りて白兵戦と行こう」

 そうして騒いでいる4人の先に車をドリフトからの停車、新しい葉巻を咥えつつ、弾を詰め直してランペイジを構えて走ってきた4人の目の前に立ちふさがる。

「月並みだが、踊って貰おうか」

 じゃきっと構えてギザ歯を見せる笑みを浮かべ、狼狽えている4人に向けて掃射を開始。いきなり攻撃してきたのに慌てて騒ぎながら近くにある遮蔽物に隠れるので撃ち切るまで続けるが、これ本当にあたんないな。暴れるって意味の通り、派手だけど命中精度はポンコツだわ。代わりに派手に鳴るから、慌ててくれるのは良い所だが。

『横からちょっかい掛けれる?』
『うむ、任されよう』
『儂は近くで逃げ道を塞ぐかの』

 このある程度勝手に判断してやってくれるってのは良い所。
 撃ち切ったランペイジをインベントリに放り込み、THを構えつつ、一定の距離まで近づいてからクロスファイアになるように、横と前で封鎖を掛ける。

「ああ、もう、どうするんだよ、いまの!」
「横、横から来てるって!」
「やばいなあー」
「なるほど、そういう事ですか……」

 おっと、1人飛び出してきた。種族はよくわからんけど、盾持ちでしっかり遮蔽作ってくるのは偉い。

「んー……盾持ちって相性悪いのよね、私」

 THで2発撃ちこむと、金属のぶつかる音、跳ねる音をさせて、一旦突っ込んでくる足を止めさせることが出来る。

「知ってますよ、相性悪いのは」
「またガチガチになってるやんけ」

 イベントの時は大体会うんだよなあ、こいつ。相変わらず小さい奴だ、まったく。

「可愛い顔してえげつない耐久してるしめんどくさいんだよな、お前の相手って」
「凶悪な顔してそのまま凶悪な攻撃してくる人に比べればマシじゃないですか」

 お、ちょっとは言う様になったじゃんか。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...