最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
470 / 625
17章

439話 急な申し出

しおりを挟む
「私もまだまだだなあ」

 半壊と言うか辛うじて胴体と頭部が残っている機体から這い出て一息。
 この間の3馬鹿相手に大立ち回りをしたおかげもあってやたらと対戦の持ち込みをされるようになった。まだゲーム初めて2日目の初心者に何をやって来てんだって思うけど、それでもまあ、向こうじゃ出来ない面白い戦闘が出来ているのも確かだ。
 って言うか血気盛んなアホが多すぎるんだよ。軽くPvEでもしにいくかなーと思ったらカロリーの高い対人戦を仕掛けられることが多い。初狩り、3馬鹿、その後は双子機、合体機、変形機、超軽量機……まー、あれこれと戦う羽目になった。今相手したのは超重量大型機、6脚でがっしゃんがっしゃん動いてくるのは良いとして、弾幕が厚すぎるわ、装甲がっちがちだわ、一発食らったら装甲抜いてくるわで苦戦しまくったのはついさっき。まあそれでも倒したんですけど。

「ただ、もうバリエーションはないべ」

 結構色んな相手を叩きのめしてきたけど、これ以上は想像がつかない。バリエーション豊かな相手には困らないのは良い事なんだけど、困らないからこそ飽きてくるってのもある。後は単純に、今の所大したことない連中ばかりなのもでかい。こういうのは一時的な話題性で相手しているのがでかいだろうな。T2Wにおけるランカーだったり戦闘力の高い連中は「誰だそいつ?」って感じだろうしね。

「最低あと1日、最高で5日はここでやらなきゃいけないしなあ」

 メンテがさっさと開けたらT2Wに戻りたくなってきた、あまり長い事離れるとそのゲームのやる気と言うかモチベーションが下がっていくからなるべく早い事戻りたい。けど、それは開発の頑張り次第だから何とも言えん。焦って実装してバグや不具合出て結局メンテなんて事もあるから、ここはしっかりやってほしい。早くやりたいけど、運営も人間だからしゃーないね。

 そんな事を考えていたらまた対戦の申し込みがあるので承認。何だかんだで私も結構戦闘民族だよなあ。珍しく場所と時間が指定されているので、そっちに向かう……前に、機体の修復と武器の回収か。中破していても最低限動けるのはなんだろう、運営側の優しさかな。とりあえず超重量機体の頭からソードを引き抜いて肩にマウントしてから指定場所に向かう。

 



「対戦を受けていただき感謝いたす」
「あー、はいはい……有象無象よりは楽しませてくれるんでしょ」

 すっかり機体も直して、いつも通りと言うかT2Wの時と一緒のシールド、ソード、ライフルの基本編成で呼んできた相手と対峙する。ずっと戦闘ばっかりやってる気がするけど、何もないよりはこうして遊んでいる方が楽しいわ。
 
 そんな事よりも相手の機体を見てどう立ち回るかの方が問題だな。
 何て言うか、武士って感じの装甲と刀が腰にあり、それ以外は目立った特徴が無い。
 この手のゲームでああいった極化している機体って、その極化している物に対してしっかり方向が向いているから余計な部分をそぎ落としているはず。つまるところ今まで倒していた有象無象の連中ってのはそれとなくまとめてはいるが、ある程度は無難な所に落ち着いていたって事になる。

「では、宜しくお願いする」
「こういうやつに限って厄介なのよね」

 腰に提げていた刀に手を掛けて構えているのを見てから、こっちもシールドを構えていつもの様にライフルの銃身をマウントしてじっと見据え、そしてどっちも動かずに相手の出方を伺う。よくある先に動いた方がどうこうってこういう事なんだろうけど、それはどっちも必殺の距離だったり、ダメージが甚大に出るわけで。
 そもそも機体を乗っているから一撃でやられるのは滅多にないし、距離も空いてる、こっちの方が先手を取った方が強いのは明確。こっちからすぐにライフルで射撃。銃声……と言うよりも、そもそもでかい銃なので砲撃のような音をさせて一発。轟くような風切り音を発して向こうの侍機に向かっていき着弾、の寸前に金属が弾かれる音が響く。

「……マジか」

 腰に差していた刀が日光を反射……なんて一般的な刀の感じではなく、日光の「に」の字も返さない程の黒いカーボンブレード……まあ、日本刀よね、それが銃弾を斬り伏せている。確かにそこそこでかい銃弾ではあるけど、機体の運動性能だけであんな芸当が出来るのか?

「参る」

 わざわざこっちに聞こえるようにオープン回線を使って声を掛けてくると共に、一気にブーストダッシュでこっちに突っ込んでくる。そのまま棒立ちで攻撃を受ける訳もないので後ろに下がりながらライフルを撃ち迎撃、なのだが接近してくる間に自身の獲物であっさりと弾を弾き、叩き落としてくる。なんだよその防御策は。いや、慣れてたら出来るのか。こういう事があるからビーム兵器が主流になってるとか?雑魚が射撃弾いてくるわけじゃないからまだいいが。

「何それ、基本なの?」
「某を倒せたら教えよう」
 
 射撃牽制も虚しく接近を許してしまうので、そのまま攻撃を振ってくる。当たり前だけどすぐさま防御としてシールドで斬撃を受けるが、一発でお釈迦にされる。そして斬り返しの一撃でライフルもマップ達にされてご臨終。機体の反応速度が速過ぎてこっちが追いついてこない。基本的に選んだパーツで機体スペックが決まるはずなのにどういう事なんだ?
 そんなあれこれを考えているとぶんぶんと刀を振ってくるのでこっちもこっちでソードを抜いて対応。金属音と火花を散らしながら打ち合いをし、相手の動きをじっくりと観察……する余裕がない。
 
「上級者様が初心者狩りか」
「主はそんなものではなかろう?」

 強く打ち合い、こっちのソードが弾かれたのに合わせて一旦バックブーストし、距離を取りながらメニューを開いて次の装備を。

「させん」

 見た目以上に足の速い相手のせいで装備の呼出すらままならない。
 ブーストを掛け、フェイントを織り交ぜて回避している中、さらに加速した相手が一気に刀で突き攻撃。これは、避けきれん。

「やっぱ特化している奴は強い」

 剣先が音速を超えていそうな勢いで迫る中、咄嗟に右掌を出し、腕を真っすぐにしてその攻撃を受ける。うっわ、これT2Wで食らったら超痛いだろうな。嫌な音を右腕から聞きつつ、勢いが殺せなかった相手がそのまま突き入れ、手のひらから肘部分までを貫通。咄嗟に脇を締めると共に前ブーストをかけて機体同士をぶつけた上で相手の刀を動かせない様に。
 
「すぐ泥臭くなるんだから」

 まだ動く右手で刀を握って固定、フリーになっている左で相手の顔面を殴る。殴るって言うか叩くだけなのだが、とにかくダメージが入るとかどうとかじゃなく、叩き殴って泥臭い戦い方をしていく。なんかいっつもこれだな。

 流石にこっちが殴ってるので向こうも空いた手でこっちの頭部を殴ってくる。こうなったらどっちが先に根を上げるかの勝負。お互いにがしゃがしゃと殴り合いし続け、先に嫌がったのは向こう。ぱっと刀を離してこっちを蹴り飛ばしてくるので、バックブーストで間合いを取る。そしてすぐさま貫かれた右腕に刺さっている刀を握り、腕のパージと共に鞘の様になっている右腕から引き抜いて左1本で構えて前ブースト。

「そろそろ、くたばれ!」
「まだ終わらんよ!」

 何故かもたついていた侍機に向けて横に一気に刀を振るって一撃。大きく甲高い金属音が響くと共に刀の刀身がへし折れて宙を舞う。一瞬何が起こったのかさっぱりわからず思考が停止したが、どうやら私のソードで侍機の刀を折っただけ。いや、どうやってやったんだ?いくら頑丈だからってこの刀、そんなに難しい装備だったか?
 刀を振り切って完全にがら空きになった右側から、思い切りソードを叩きつけられ、装甲がひしゃげ、めきめきと食い込むと共に、警告音が鳴り響く。反撃と思い、折れた刀を振るうが、体勢も悪くリーチも威力も失った武器で出来る事なんてたかが知れている。追撃の2振り目を食らえば下半身が死に、ごしゃっと音を立てて倒れ込んで、決着。

「あー、くそ……初めて負けたわ」
「かなりギリギリだったが、いい試合であった」

 機体で器用にお辞儀して、自分の刀を回収すると、近くで正座をして私の事を待ちはじめる。
 なんか言いたげだし、とりあえず話くらいは聞いてみるか。こっちもコックピットから出て、地上に着地。そうすると向こうも降りてこっちに来るので、手頃な所に座ってため息一つ。

「いきなりで申し訳ないが、某とチームを組んでいただけないか」
「は?」

 開口一番いきなりなんじゃい。

「実は明日、イベントの一環でチーム戦のトーナメントがあるのだが、それに出るために力を貸していただけないか」
「私じゃなくても良さそうだと思うけど?」
「他のプレイヤーはお主より反応も立ち回りも悪いのが多かったのでな、受けてくれないか」
「……ん-……まあ、いいけど、何個か条件があるわ」

 ぴっと指を見せながら一つずつ条件を言っていく。

「まず私のやってるメインゲームが再開したらそっちを優先するのが一つ、二つ目はさっきの戦闘の疑問点を答える事、最後の条件はやるからには勝つ事、守れる?」
「あい、わかった」
「で、戦力はどれくらいあるわけ?」
「うむ、某とお主だけだ!」

 幸先悪いな、おい。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...