最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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20章

537話 分かっている相手

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 前に犬野郎を据えてのダンジョンアタック。なんとなく本当に最初のころを思い出す。

「出会ったころの銃も使えない時に、こんな事してたなあ」
「あの時はこんな風になるとは思ってませんでしたよ」

 周辺を照らしながら犬野郎がふふっと小さく笑いつつ、先に進んでいく。あの頃は松明使ってた気もするけど、今じゃ何でもかんでも魔法よ。何だろう、文明開化的な?人間やっぱり不便な事よりも便利な方に行くよね。松明すげえめんどくさいし。

「手放しで光源確保できるようにするかなあ、最近スキルも出てこないし、魔法系伸ばすのも面白そうだけど」
「光魔法扱いですね、便利系のスキルは何個か取っておいた方が楽ですよ」
「例えば?」
「飲料水を出せるのは重宝していますね」

 それはただただ紅茶を飲むってだけのために使っている奴じゃないのか?って言うけど、私も煙草の為だけに生活火魔法を使ってるから似たようなもんか。とは言え、光源に使える魔法は疑似的にフラッシュグレネードとして使えるって考えたら便利だな。あったらあったで使えるので無駄にはならないけど、フラッシュグレネードのコストもかなりバカにならない。鉄容器は重いしでかいし、中に詰めるマグネシウムも取りに行くのが大変だし、何だったら買うのも結構高かったりする。発火装置も機構が特殊って言うか、あれも使い捨てのわりに高価。
 こうやって考えていったらガンナーってずーっと金のかかる職だな。銃弾1発で3,000Z。マガジンやアタッチメントはそこまで高価じゃないけど、フラッシュで大体5万、スモークは1~2万程度、グレネードも火薬量を考えると最低でも3万程。グレネード類はそこまで使用頻度が高いわけじゃないから売り専用の所もあるけど、それでもだな。

「そういえばこのゲーム、ベータ版からやってるんだっけ」
「そうですね、あの時はガンナーが強すぎたのもあってクソゲーと言われてましたけど」
「正式になって全滅して、また増えて……金のかかる職になったおかげで安定したって言うね」
「ですね、私の後ろにいる人が原因ともいいますが」

 此処までの事を振り返れば、ガンナーのギルドを見つけて、火薬の製法を広めて、銃を作って、アタッチメントの開発、色んなガンナーのタイプまで発展させて、私自身そういうのを広めて……うわ、私って貢献しすぎ。

「ここ数日でガンカタじゃなく、殴りガンナーってのも出てきたようですし」
「こっわ……銃弾握って殴ってたあれでしょ?グローブに装填でもするの?」
「案外他のガンナーの環境調べないんですね」
「自分の事で手一杯だから、っと……モンスター」

 洞窟の奥からのそのそとやってくるのは白い毛むくじゃら。これまたオーソドックスなイエティだ。そういえばこういう初見のモンスター相手をするのも久々だ。

「パワータイプ相手は得意でしょ、あんた」
「そちらはHPの高い相手には有利でしたね」

 両手を組んでの大きく振り下ろしてくるハンマー攻撃を犬野郎が大盾で受け止めると、攻撃を受けた犬野郎が少し陥没して、地面にヒビを入れる。あんなパワーで殴られたらワンパンで死ぬだろうなあ。そもそも真正面から強力な物理攻撃を受け止めてるって、チェルシーくらいだな。

「ま、先入観なんだろうけど」

 狭い洞窟内であっちゃこっちゃ動き回るって訳にも行かないので跳弾を使い犬野郎のサイドからイエティに銃弾を浴びせる。ステータスも元に戻したしIntの高さからMP量は十分、やっぱりガンナーもある程度はInt振ってMPを確保しておいた方が良いな。

「外れましたよ」
「こんな狭い所でお前もいるのに直撃させろって無茶言うなよ」
「がっちりガード固めてる相手に、直接銃弾ねじ込めるくらい正確な攻撃が出来るじゃないですか」
「無茶言うなっての」

 狭いってのに器用に大振りな攻撃を繰り出してくるのを盾で受け止めてから攻撃の機会を作ってくれる。

「なんであのイベントでタイマン張ろうとしたん?」
「……意地って奴ですね」
「嫌いじゃないわ、そういうの」

 2回目の跳弾。イエティの3回目の攻撃が振られる前に1発入って動きが鈍るので、それに合わせて犬野郎がカウンターで体勢を崩す。もろに食らったカウンターで蹈鞴を踏んでそのまま尻餅をつくのに合わせ、追撃の射撃とシールドバッシュで連打。こうなったらガンナーの固定ダメージが有効だから動いてない相手にバカスカ当てるなんて余裕よ、余裕。
 さくっと片付けてポリゴン状に消失していくイエティを見ながら空になったマガジンを入れ替えて、空マガジンに銃弾を詰め直し。こういう手間がガンナーの良い所なのに、最近は大型マガジンにして装弾数がっつり増やすのが傾向らしい。ガンナー自体の動向は気にしてないのに、銃の動向を気にするって辺りが私らしい。

「そういえばずっとシンプルな銃を使ってますが、もっとアタッチメントなり付けたほうが良いのでは」
「何でもかんでも付けりゃ良いってもんじゃないのよ?」

 装填し直してからくるりと銃を回転させてからホルスターに。
 これをやるならリボルバーの方が恰好は付くんだけど、生憎オートマチックしか持ちこんでない。

「様になってますよ」
「知ってる」

 ふいーっと半分ほど吸った煙草を吸い切って、吸殻をぷっと吐き捨てる。

「……どうやら、お目当てじゃないけど、当たりは引いたみたいよ?」
「そのようで」

 一息ついていた犬野郎と共に構えて洞窟の奥を見やる。
 一匹見つけたら三〇匹なんてよく言うけど、どうやら蜂の巣をつついたようだ。

「後ろは吹雪、前はイエティ」
「ま、余裕でしょう、あなたと私なら」
「はいはい、そうですね」
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