47 / 209
美しい君から目が離せない
この地に足を踏み入れた瞬間から、胸の奥が不思議と温かかった。
辺境伯家の歓待は、過剰なほど丁寧で、だが決して重くない。
「客人」としてではなく、「迎え入れる者」として扱われている――そんな錯覚すら覚える。
だが、その理由は、すぐに理解した。
ここにいる誰もが、アイナを心から愛している。
そして、その愛の延長線上に、俺が立たされているのだ。
城内を案内してくれた時の彼女。
少し緊張しながらも、誇らしげに歩く背中。
部屋の前で、決まりを守って立ち止まり、「おあずけです」と言ったあの声音。
……あれは、反則だった。
晩餐の席で聞いた言葉が、今も胸に残っている。
――まるで、俺に出逢うために生まれてきたみたいだ、と。
無邪気で、無自覚で。
それでも、確かに俺の心を強く揺さぶった言葉。
夜の庭園は、静かだった。
魔法灯の淡い光が足元を照らし、星空がその上に広がっている。
風が草花を揺らし、夜露の匂いが混じる。
その中で、彼女は立っていた。
淡い色のドレスに包まれた姿は、昼間の鍛えられた印象とはまるで違う。
柔らかく、しなやかで。
それでいて、芯の強さを隠しもしない。
……美しい。
ただ、その一言しか浮かばなかった。
理性が警鐘を鳴らした。
ここは彼女の家で、俺は客人で、距離を守るべきだと。
だが、視線が絡んだ瞬間、すべてが遅かった。
気づけば、彼女の瞳から目を離せなくなっていた。
吸い込まれるように近づき、無意識に手を取る。
「……エルンスト?」
呼ばれた名が、胸に落ちる。
その温度に、もう抗えなかった。
そっと、指先に口付ける。
確かめるように、触れるだけの、浅い口付け。
だが、そこに込めた想いは、熱く、重かった。
彼女の手を包む力が、思わず強くなる。
離したくない。
奪いたい。
守りたい。
すべてが、同時に溢れ出す。
――危うい。
そう理解しながらも、俺は視線を逸らせなかった。
夜の庭園で、星の下で。
美しい君から、もう、目が離せない。
これはもう、
ただの好意ではない。
確信だけが、静かに、深く、胸に根を張っていた。
エルンスト視点
辺境伯家の歓待は、過剰なほど丁寧で、だが決して重くない。
「客人」としてではなく、「迎え入れる者」として扱われている――そんな錯覚すら覚える。
だが、その理由は、すぐに理解した。
ここにいる誰もが、アイナを心から愛している。
そして、その愛の延長線上に、俺が立たされているのだ。
城内を案内してくれた時の彼女。
少し緊張しながらも、誇らしげに歩く背中。
部屋の前で、決まりを守って立ち止まり、「おあずけです」と言ったあの声音。
……あれは、反則だった。
晩餐の席で聞いた言葉が、今も胸に残っている。
――まるで、俺に出逢うために生まれてきたみたいだ、と。
無邪気で、無自覚で。
それでも、確かに俺の心を強く揺さぶった言葉。
夜の庭園は、静かだった。
魔法灯の淡い光が足元を照らし、星空がその上に広がっている。
風が草花を揺らし、夜露の匂いが混じる。
その中で、彼女は立っていた。
淡い色のドレスに包まれた姿は、昼間の鍛えられた印象とはまるで違う。
柔らかく、しなやかで。
それでいて、芯の強さを隠しもしない。
……美しい。
ただ、その一言しか浮かばなかった。
理性が警鐘を鳴らした。
ここは彼女の家で、俺は客人で、距離を守るべきだと。
だが、視線が絡んだ瞬間、すべてが遅かった。
気づけば、彼女の瞳から目を離せなくなっていた。
吸い込まれるように近づき、無意識に手を取る。
「……エルンスト?」
呼ばれた名が、胸に落ちる。
その温度に、もう抗えなかった。
そっと、指先に口付ける。
確かめるように、触れるだけの、浅い口付け。
だが、そこに込めた想いは、熱く、重かった。
彼女の手を包む力が、思わず強くなる。
離したくない。
奪いたい。
守りたい。
すべてが、同時に溢れ出す。
――危うい。
そう理解しながらも、俺は視線を逸らせなかった。
夜の庭園で、星の下で。
美しい君から、もう、目が離せない。
これはもう、
ただの好意ではない。
確信だけが、静かに、深く、胸に根を張っていた。
エルンスト視点
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。
三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。
新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。
ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる!
実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。
新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。
しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。
ややヤンデレな心の声!?
それでも――――。
七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。
『俺、失恋で、死んじゃうな……』
自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。
傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される?
【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』