42 / 47
第三章 覚悟の先にあるものは
四十三
しおりを挟む
「白帝様、お待たせしました。彼ら三人は腕が立ちます。どうぞ冬の国へお連れ下さい」
「曼殊沙華、ありがとう。では乞ふ四季殿へ向かった後、冬の国に向かう」
「畏まりました。どうかご無事で」
私達は曼殊沙華様の見送りの下、四季殿に向かって羽根を広げた。
今、四季殿はどうなっているのだろうか。不安に思いながら近くまで飛んでいく。各国の衛門府の人達が目に飛び込んできた。
どうやらしっかりと周りの悪しきものたちは討伐されたようだ。だが、冬の国の人達の姿が見えない。
「白帝様、冬の国の人達が見えませんね」
「そうだね。事態は悪そうだ。すぐに四季殿の状態を確認したら冬の国に向かおう」
「白帝様! 宵闇様!」
各国の人達が頭を下げ、礼を執っている。
その先には壊れた四季殿が目に飛び込んでくる。白帝様が命を懸けて悪しきものを浄化した場所だ。
「君たちが無事でよかった。火影、橋の袂で待機していて」
「ハッ」
「宵闇、いこうか」
私達はゆっくりと橋を渡り始める。
すると、あの時のように花弁が空から舞い始めた。だが、かつての優しい香りは薄れ、どこか鉄のような匂いが混じっている。
涙が出てきた。
何気ない日常だったのに。
いつもこの景色が好きで通る度に白帝様の姿を思い出す。
浮島に入り、緊張しながら四季殿の入口に入った。四季殿の壁や天井は破壊され、空が見えており、至る所に焦げた跡が残っている。
そして心御柱のあったところに小さな悪しきものの姿があった。その姿を見た瞬間に葵様は錫杖を鳴らし、床を突いた。
「消滅せよ」
悪しきものを囲うように陣が現れ光と共に浮き上がり、徐々に消えていく。
あっけない終わりだった。
四季殿よりも大きな人型をとっていた悪しきものはとても小さなものになっていた。
「群青の力で悪しきものはここまで小さくなっていたからすぐに消滅させることができた」
「……そう、ですね」
私は悪しきものが居なくなった場所を見つめた。
壊れた念玉が落ちている。
「うっ、うっ。白帝様っ!私が、私が弱いばかりに……。ごめんなさい」
私は嗚咽を上げて泣いた。
もう、二度とこんな思いはしたくない。
私は、私の能力がもっと早くに分かっていれば。私の力がもっと白帝様に届いていれば。何度も繰り返し後悔が押し寄せてくる。
心のどこかでは信じたくなかった。
実感したくなかった。
「……宵闇」
「葵様っ」
「群青は最後に宵闇が来てくれて嬉しかったはずだ」
「でも、でもっ……」
「我々の力だけではここまでの威力は出ない。宵闇がいたから、宵闇の力のおかげで群青は力を最大限に引き出すことができ、悪しきものの動きを止められた。
君がいたから。さあ、僕達はまだしなければならないことが残っている。悲しいけれど、これ以上悲しむ者を出さないために冬の国に向かわなければならない」
「……そう、ですね。春隣様が堕ちようとしている。食い止めないと」
「そうだね」
私は涙を拭いて立ち上がった。
白帝様、またここに必ず戻ってきますね。
また平和な天上界に戻るように頑張ってくるので見ていて下さい。
「葵様、私、もう泣きません。白帝様の死を無駄にしないためにも頑張ります」
「私も宵闇に負けないように頑張るよ」
私はまた出そうになる涙を堪え、白帝様と共に橋の袂まで向かう。
「白帝様、四季殿の方はどうでしたか?」
「ああ、もう大丈夫だよ。悪しきものは消滅した。ここはもう大丈夫だ。このまま冬の国に向かうけれど、準備は大丈夫かな?」
「準備は出来ております」
「では行こうか」
火影様達と合流し、そのまま冬の国に向かって飛び始める。四季殿から冬の国はすぐだ。
「白帝様、冬の国の結界が弱まっているとはいえ、結界が覆っています。我々が通るほどの隙間を作りますか?」
「火影、大丈夫だよ。私が結界に干渉して少しの間隙間を作るから問題ない」
白帝様はたしかにアキコク様の結界に力を流して支えていた。私は物理的に割ってはいったが 、名無し様や白帝様達は結界に干渉する術を持っているのだろう。
そう話をしているうちに冬の国の前に到着した。確かに秋の国や春の国の結界に比べて薄く、今にも消えてしまいそうだ。
そして結界の中から見えるおびただしい瘴気がここからでも感じる。
目に見える範囲には悪しきものはまだ涌いていないようだが一体中はどうなっているのだろうか。
白帝様が薄い結界に触れ、静かに詠い始めた。
言葉というより祈りのような音はじわりと結界に溶け、人が通れるほどの穴が開いた。
「曼殊沙華、ありがとう。では乞ふ四季殿へ向かった後、冬の国に向かう」
「畏まりました。どうかご無事で」
私達は曼殊沙華様の見送りの下、四季殿に向かって羽根を広げた。
今、四季殿はどうなっているのだろうか。不安に思いながら近くまで飛んでいく。各国の衛門府の人達が目に飛び込んできた。
どうやらしっかりと周りの悪しきものたちは討伐されたようだ。だが、冬の国の人達の姿が見えない。
「白帝様、冬の国の人達が見えませんね」
「そうだね。事態は悪そうだ。すぐに四季殿の状態を確認したら冬の国に向かおう」
「白帝様! 宵闇様!」
各国の人達が頭を下げ、礼を執っている。
その先には壊れた四季殿が目に飛び込んでくる。白帝様が命を懸けて悪しきものを浄化した場所だ。
「君たちが無事でよかった。火影、橋の袂で待機していて」
「ハッ」
「宵闇、いこうか」
私達はゆっくりと橋を渡り始める。
すると、あの時のように花弁が空から舞い始めた。だが、かつての優しい香りは薄れ、どこか鉄のような匂いが混じっている。
涙が出てきた。
何気ない日常だったのに。
いつもこの景色が好きで通る度に白帝様の姿を思い出す。
浮島に入り、緊張しながら四季殿の入口に入った。四季殿の壁や天井は破壊され、空が見えており、至る所に焦げた跡が残っている。
そして心御柱のあったところに小さな悪しきものの姿があった。その姿を見た瞬間に葵様は錫杖を鳴らし、床を突いた。
「消滅せよ」
悪しきものを囲うように陣が現れ光と共に浮き上がり、徐々に消えていく。
あっけない終わりだった。
四季殿よりも大きな人型をとっていた悪しきものはとても小さなものになっていた。
「群青の力で悪しきものはここまで小さくなっていたからすぐに消滅させることができた」
「……そう、ですね」
私は悪しきものが居なくなった場所を見つめた。
壊れた念玉が落ちている。
「うっ、うっ。白帝様っ!私が、私が弱いばかりに……。ごめんなさい」
私は嗚咽を上げて泣いた。
もう、二度とこんな思いはしたくない。
私は、私の能力がもっと早くに分かっていれば。私の力がもっと白帝様に届いていれば。何度も繰り返し後悔が押し寄せてくる。
心のどこかでは信じたくなかった。
実感したくなかった。
「……宵闇」
「葵様っ」
「群青は最後に宵闇が来てくれて嬉しかったはずだ」
「でも、でもっ……」
「我々の力だけではここまでの威力は出ない。宵闇がいたから、宵闇の力のおかげで群青は力を最大限に引き出すことができ、悪しきものの動きを止められた。
君がいたから。さあ、僕達はまだしなければならないことが残っている。悲しいけれど、これ以上悲しむ者を出さないために冬の国に向かわなければならない」
「……そう、ですね。春隣様が堕ちようとしている。食い止めないと」
「そうだね」
私は涙を拭いて立ち上がった。
白帝様、またここに必ず戻ってきますね。
また平和な天上界に戻るように頑張ってくるので見ていて下さい。
「葵様、私、もう泣きません。白帝様の死を無駄にしないためにも頑張ります」
「私も宵闇に負けないように頑張るよ」
私はまた出そうになる涙を堪え、白帝様と共に橋の袂まで向かう。
「白帝様、四季殿の方はどうでしたか?」
「ああ、もう大丈夫だよ。悪しきものは消滅した。ここはもう大丈夫だ。このまま冬の国に向かうけれど、準備は大丈夫かな?」
「準備は出来ております」
「では行こうか」
火影様達と合流し、そのまま冬の国に向かって飛び始める。四季殿から冬の国はすぐだ。
「白帝様、冬の国の結界が弱まっているとはいえ、結界が覆っています。我々が通るほどの隙間を作りますか?」
「火影、大丈夫だよ。私が結界に干渉して少しの間隙間を作るから問題ない」
白帝様はたしかにアキコク様の結界に力を流して支えていた。私は物理的に割ってはいったが 、名無し様や白帝様達は結界に干渉する術を持っているのだろう。
そう話をしているうちに冬の国の前に到着した。確かに秋の国や春の国の結界に比べて薄く、今にも消えてしまいそうだ。
そして結界の中から見えるおびただしい瘴気がここからでも感じる。
目に見える範囲には悪しきものはまだ涌いていないようだが一体中はどうなっているのだろうか。
白帝様が薄い結界に触れ、静かに詠い始めた。
言葉というより祈りのような音はじわりと結界に溶け、人が通れるほどの穴が開いた。
2
あなたにおすすめの小説
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる