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「大丈夫だ。ここにいる者の拘束を解け」
ヘルメットでくぐもった声は静かに指示をする。
拘束を解かれた私は、静かに状況を見守るしかない。ダリアたちは震えながらも私を庇おうとしているのを見て私は制止する。
「お久しぶりです、リヴィア様。お迎えに上がりました」
「誰、ですか?」
「おっと、この姿では誰かわかりませんね」
声の主はそう言うと、ヘルメットを脱いだ。
「ア、レン……?」
「覚えてくれていましたか」
「どうしてここに?」
「私は必ず約束を守る。こうして貴女を迎えに来た」
私は状況が飲み込めなかった。
でも彼があの時の約束を果たそうとしてくれているということだけは分かった。アレンは私の前に立ち、手を差し出した。
「さあ、行こう」
「で、でも。ティポーたちはどうなるの?」
「もちろん彼らも一緒に連れていく」
「カインディール国はどうなったの?」
「色々と聞きたいこともあるだろうけれど、とりあえず馬車に乗ってからだ。お前たち、そこにいる侍女に聞きながらリヴィアの荷物を馬車に積み込んでくれ」
「畏まりました」
私は彼の手を取ると、彼はフッと笑顔になった。
夢じゃないかしら。
私はこのまま死刑場に連れていかれるのではないかしら。
彼と再び会えた嬉しさと不安、死への恐怖や救い出してくれるのではないかという淡い希望が綯交ぜになって苦しくなり、涙が頬を伝う。
「リヴィア、心配しないで。大丈夫だ」
私はアレンに言われるまま馬車に乗り込んだ。
「私はこれからどうなるのですか?」
「このまま馬車はシューンエイゼットへ向かうことになっている。後からだが、カインディール国の王族も本国の王城に連れていくことになっている」
「その場で処刑ではなく?」
「ああ。陛下の意向だ。すぐに処刑をしてしまうと、カインディール国の貴族たちは混乱し、戦争を続ける可能性が出てくる。一貴族では奪還できないように自国に連れて行き、交渉の材料にするんだろう」
「王のいなくなったカインディール国はどうなるのですか?」
「大丈夫だ。兄の第三王子が暫定的にこの国を治める手筈になっている。俺が城を落とした後、兄が後処理を引き受けてくれて君を迎えに行くことができた」
「私はシューンエイゼット国へ行った後、どうなるのでしょうか?」
「君はケルノッティ国からカインディール国へ留学したことになっているはずだ。シューンエイゼット国へ連れていく。その後、どうするかは父次第だろう。大丈夫、心配いらない。俺がついている」
「……アレン様」
「リヴィア、顔色が悪い。少し休んだ方がいい」
「ケルノッティ国の陛下からは何も連絡が来ていませんが大丈夫なのでしょうか」
「リヴィアの父君は大層心配していると聞いている」
「陛下が、ですか?」
あの陛下が?
「陛下は陛下なりに考えているんだろう」
「……はあ」
私はアレンの言葉に半端な返事しかできなかった。
陛下の考えはよく分からない。王妃様の考えも。知っているのは家族仲が素晴らしいほど悪くて常に警戒をしなくてはいけなかったのに。
そこから半月かけて移動することになった。
ヘルメットでくぐもった声は静かに指示をする。
拘束を解かれた私は、静かに状況を見守るしかない。ダリアたちは震えながらも私を庇おうとしているのを見て私は制止する。
「お久しぶりです、リヴィア様。お迎えに上がりました」
「誰、ですか?」
「おっと、この姿では誰かわかりませんね」
声の主はそう言うと、ヘルメットを脱いだ。
「ア、レン……?」
「覚えてくれていましたか」
「どうしてここに?」
「私は必ず約束を守る。こうして貴女を迎えに来た」
私は状況が飲み込めなかった。
でも彼があの時の約束を果たそうとしてくれているということだけは分かった。アレンは私の前に立ち、手を差し出した。
「さあ、行こう」
「で、でも。ティポーたちはどうなるの?」
「もちろん彼らも一緒に連れていく」
「カインディール国はどうなったの?」
「色々と聞きたいこともあるだろうけれど、とりあえず馬車に乗ってからだ。お前たち、そこにいる侍女に聞きながらリヴィアの荷物を馬車に積み込んでくれ」
「畏まりました」
私は彼の手を取ると、彼はフッと笑顔になった。
夢じゃないかしら。
私はこのまま死刑場に連れていかれるのではないかしら。
彼と再び会えた嬉しさと不安、死への恐怖や救い出してくれるのではないかという淡い希望が綯交ぜになって苦しくなり、涙が頬を伝う。
「リヴィア、心配しないで。大丈夫だ」
私はアレンに言われるまま馬車に乗り込んだ。
「私はこれからどうなるのですか?」
「このまま馬車はシューンエイゼットへ向かうことになっている。後からだが、カインディール国の王族も本国の王城に連れていくことになっている」
「その場で処刑ではなく?」
「ああ。陛下の意向だ。すぐに処刑をしてしまうと、カインディール国の貴族たちは混乱し、戦争を続ける可能性が出てくる。一貴族では奪還できないように自国に連れて行き、交渉の材料にするんだろう」
「王のいなくなったカインディール国はどうなるのですか?」
「大丈夫だ。兄の第三王子が暫定的にこの国を治める手筈になっている。俺が城を落とした後、兄が後処理を引き受けてくれて君を迎えに行くことができた」
「私はシューンエイゼット国へ行った後、どうなるのでしょうか?」
「君はケルノッティ国からカインディール国へ留学したことになっているはずだ。シューンエイゼット国へ連れていく。その後、どうするかは父次第だろう。大丈夫、心配いらない。俺がついている」
「……アレン様」
「リヴィア、顔色が悪い。少し休んだ方がいい」
「ケルノッティ国の陛下からは何も連絡が来ていませんが大丈夫なのでしょうか」
「リヴィアの父君は大層心配していると聞いている」
「陛下が、ですか?」
あの陛下が?
「陛下は陛下なりに考えているんだろう」
「……はあ」
私はアレンの言葉に半端な返事しかできなかった。
陛下の考えはよく分からない。王妃様の考えも。知っているのは家族仲が素晴らしいほど悪くて常に警戒をしなくてはいけなかったのに。
そこから半月かけて移動することになった。
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