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「二人は回復魔法を使用する事が出来るのだ。少し聞いたのだが、指輪の種類により異次元の空間が開く前に予防できるというのだ。凄いだろう?」
「もし、可能であるのならこの世界は魔獣達からの侵略が減るという事ですね。それは凄い! ナーニョ嬢、ローニャ嬢、是非、私達に協力していただけないだろうか?」

マートス長官の言葉に一瞬躊躇った。でもこの場ではっきりと言わなければいけないと思う。私はギュッと手に力を入れて陛下達に話をする。

「陛下、私達姉妹は幼い頃、異界の穴から出てきた魔物により、私達以外の村人が全て亡くなりました。そこから私達姉妹は二人協力して生きてきました」

「そうだよ! ナーニョお姉ちゃんはずっと私を守ってきたの。お父さんとお母さんの代わりに。この世界に来たのもお姉ちゃんは私を魔物から庇ったからなの」

ローニャは魔物に襲われそうになった時の事を思い出したのかグスグスと泣き始めた。

「私としては妹の命や生活を保証していただけるなら喜んで協力します。妹はもう少しすれば成長し、大人と変わりなく自立した一人の女性になりますが今はまだ幼い。
身体の成長に合わせ、魔力もまだ安定しておらず誰かの庇護が必要なのです」

私の言葉に納得する陛下達。

「そうかそうか。ローニャ達は幼い頃から苦労してきたのだな。大丈夫。儂としても二人の生活を保証する。
君達二人はこの世界にとって居なくてはならない存在なのだから。
今はエサイアスの元で生活しておるし、更に警備を増やして君達を狙う者が出ても大丈夫だ。なんなら儂の孫に迎えても良い」

陛下はローニャの事が大層気に入っているようだ。

「陛下、流石に孫は、いけません。私の養子という事なら皆も納得するでしょう。いや、我が妻も喜んで向かえてくれます」
「宰相、誰も反対せんだろう。お前がナーニョ嬢達を猫可愛がりしたいだけだろう」

……良かった。

陛下も宰相も悪いようにはしないと思う。これもローニャのおかげね。内心ホッとする私。

「まぁ、ともかく。当面はエサイアスの邸で生活されよ。エサイアスと共に城に来て異世界の話をマートス長官に教えてはくれぬか?」
「わかりました。出来る範囲の協力いたします。マートス長官、これから宜しくお願いします」
「ナーニョ嬢、こちらこそ宜しく頼む。ローニャ嬢も宜しく」
「マートス長官、宜しくお願いします」

ローニャはペコリと頭を下げると、陛下はニコニコ満面の笑みを浮かべている。本当にローニャの事を気に入ったのだろう。猫可愛がりしたくて仕方がない様子。

ローニャは世渡り上手だなと思う。

「では陛下、執務も押しているようですから。後は私がナーニョ嬢とローニャ嬢を研究所へ連れて行きます」
「……あぁ。マートス長官、頼んだ。ローニャ、また木の実を食べにいつでもおいで」
「うん! 陛下が用意してくれた木の実はとても美味しかったの。また来るね!」

こうして陛下と宰相に礼をした後、ナーニョとローニャは帽子を深く被りマートス長官の後に付いていく。

「ナーニョ嬢、ローニャ嬢、これから研究所に向かうが、きっと研究員達は二人に失礼な事をいうかもしれない。先に私から謝っておく。そして嫌なことはすぐに私に言ってくれ」
「わかりました」



そして騎士団の詰所を通り抜け、医務室、薬師棟を過ぎ、異次元空間研究所に着いた私達。

ここの世界の言葉を読むことは出来ないため、看板がそう書かれているのかは理解出来なかった。

「マートン長官お帰りなさい!」
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