22 / 35
22 王宮のお茶会
気が重いままお茶会の日がやってきた。
日中はまだ暖かいとはいえ、王都は寒く、コートを着なければ過ごせないほどの気候になってきている。
そんな中、セレスティナ王女は中庭でお茶会を開くようだ。
今の時期に庭でお茶会を開くのは珍しいが、王女の意向により年頃の令嬢、令息たちが集められていた。
寒い中集められた令嬢と令息たちは言葉数少なく、誰もが視線を落とし雰囲気はあまりよくない。
私も案内された席に着くが、同年代の令嬢たちは座っておらず、向かいにセレスティナ王女の席があった。
親睦を深めるためと称して呼び出されたお茶会だが、明らかに失敗だとわかる。
普通なら侍女長や家族が止めに入ると思うのだが、止められない事情があるのだろう。
暫くするとセレスティナ王女は王宮の魔法使いたちを連れて会場へとやってきた。
王女の警備にはやはりオルガ様もいるようだ。彼と目が合い、一瞬だけ口角が上がるのが見えた。
会場にいた私たちは王女に礼を執る。
「みなさま、楽にして、席について下さい。本日のお茶会にようこそおいで下さいました。少し肌寒いと思いますのでこれより会場を温めさせていただきますね」
セレスティナ王女はそう話し、魔法使いたちに指示をすると魔法使いたちはふわりと結界のような幕を作り、火魔法で会場を温めはじめると、会場は暖かくなった。
わざわざ王家の威光を見せるための演出だろう。
それならサロンで趣向を凝らしたようなものをすればいいと思ったが、口にはしない。
チラリと人々の反応を確認する。
王女に見えないようため息を吐く人。
視線を背ける人。
関心なくお茶を口にする人。
様々な行動をしているけれど、私のテーブルに座っている人たち以外は王女に良いイメージを持っていないのかもしれない。
私も黙ったまま過ごしていると、何を思ったのか、後ろで警備していたオルガ様を呼び、私に見せつけるように王女の横にオルガ様を座らせた。
そして主賓だというのに会話をせずにオルガ様と二人でお茶を飲み始めた。
これには私以外の会場にいた全ての人たちも唖然としている。
私たちは一体何のために呼ばれたのだろう。
きっとみんなそう思っているに違いない。
ただただ呼び出されてお茶を飲んで帰るのね。
親睦を深める場には思えないし。
これが爵位の低い家で行われたなら即座にみんな帰ってしまっているだろう。
退屈だと思いながら過ごしていると、王宮の侍女は手を震わせながらセレスティナ王女にお茶を進める。
「セレスティナ王女様、ジネット・ベルジエ様からのいただきものです」
私はそんなお茶など用意していない。
あからさまに罠だと言いたげなものにうんざりしてしまう。
もう少し頭を使うことはできなかったのかしら。
「セレスティナ王女、お待ちくださいっ。私はそのようなものを用意した覚えはないです!」
そう声を上げ、お茶を取り上げようと動くけれど、一足遅かったようだ。セレスティナ王女はお茶を口にし、苦しみ始めた。
……なんという茶番劇なのかしら。
盛大なため息を吐きそうになる。
オルガ様はすぐに魔法使いの一人を呼んだ。魔法使いは駆けつけ、すぐに解毒魔法を施すと、すぐにセレスティナ王女は目を覚ました。
「オルガ、オルガ!」
セレスティナ王女の目に涙を浮かべオルガ様にしがみつくように抱き着いた。
「セレスティナ王女殿下」
オルガ様はセレスティナ王女に声を掛けた。
「私は狙われたのっ。怖かったっ! 誰か、誰か! ジネット・ベルジエが犯人よ!! 捕まえて!!」
……目的はこれか。
思わず遠い目になってしまった。
こんな茶番劇に巻き込まれ、怒りを通り越して呆れる。
私が居たテーブルの席についていたのは王女の取り巻きだったため、すぐに私を捕えるため手を取ろうとしてきた。
その他のテーブルにいる人たちは冷ややかな視線で見ている。
やはり茶番劇としか見ていないのだろう。
だが、ここで声を上げれば仲間だと思われかねない。黙ってただ見ているだけのようだ。
子息たちは私を捕まえようとしてきた手を伸ばすが、私は扇子で叩き落とし、王女に言葉を掛けた。
中庭の騒動を目にした騎士たちが駆け寄ろうとしてくる。
「セレスティナ王女、なぜ私なのでしょうか? 侍女が私の名前を語っただけでしょう? 証拠は?」
「酷いっ。私の侍女が嘘を吐くとでもいうのですか」
……。
なんと言えばいいのだろう。
ここで言い訳をしても彼女には届かないのだと思う。
「そんなに私がオルガ副官と婚約したことが嫌だったのですね」
私が周囲に聞こえるよう大きな声で言うと、セレスティナ王女は涙を流し始めた。
「オルガっ! 怖い。どうしてっ、どうして私ばかりこんな目に遭うの。私がそんなに憎いの!? オルガと愛し合う私が……」
セレスティナ王女の取り巻きたちが彼女の涙で敵意をむき出しにしてくる。
反応するのも馬鹿らしくなる。
「ジネット・ベルジエ侯爵令嬢、あちらで少し話をお聞きしても?」
しらけている私を余所に騎士団は私を犯人だとして私と侍女を捕まえるようだ。
「セレスティナ王女、次期ベルジエ侯爵である私を陥れるということはどういうことか理解しておられるのでしょう。覚悟をしておいてください」
私の言葉に周囲はどよめいたが、セレスティナ王女はえぐえぐと泣きながらオルガ様にしがみつき私の言葉を聞く気はないみたい。
私はスッと立ち上がり、騎士の後に付いて王宮の中庭を出た。
日中はまだ暖かいとはいえ、王都は寒く、コートを着なければ過ごせないほどの気候になってきている。
そんな中、セレスティナ王女は中庭でお茶会を開くようだ。
今の時期に庭でお茶会を開くのは珍しいが、王女の意向により年頃の令嬢、令息たちが集められていた。
寒い中集められた令嬢と令息たちは言葉数少なく、誰もが視線を落とし雰囲気はあまりよくない。
私も案内された席に着くが、同年代の令嬢たちは座っておらず、向かいにセレスティナ王女の席があった。
親睦を深めるためと称して呼び出されたお茶会だが、明らかに失敗だとわかる。
普通なら侍女長や家族が止めに入ると思うのだが、止められない事情があるのだろう。
暫くするとセレスティナ王女は王宮の魔法使いたちを連れて会場へとやってきた。
王女の警備にはやはりオルガ様もいるようだ。彼と目が合い、一瞬だけ口角が上がるのが見えた。
会場にいた私たちは王女に礼を執る。
「みなさま、楽にして、席について下さい。本日のお茶会にようこそおいで下さいました。少し肌寒いと思いますのでこれより会場を温めさせていただきますね」
セレスティナ王女はそう話し、魔法使いたちに指示をすると魔法使いたちはふわりと結界のような幕を作り、火魔法で会場を温めはじめると、会場は暖かくなった。
わざわざ王家の威光を見せるための演出だろう。
それならサロンで趣向を凝らしたようなものをすればいいと思ったが、口にはしない。
チラリと人々の反応を確認する。
王女に見えないようため息を吐く人。
視線を背ける人。
関心なくお茶を口にする人。
様々な行動をしているけれど、私のテーブルに座っている人たち以外は王女に良いイメージを持っていないのかもしれない。
私も黙ったまま過ごしていると、何を思ったのか、後ろで警備していたオルガ様を呼び、私に見せつけるように王女の横にオルガ様を座らせた。
そして主賓だというのに会話をせずにオルガ様と二人でお茶を飲み始めた。
これには私以外の会場にいた全ての人たちも唖然としている。
私たちは一体何のために呼ばれたのだろう。
きっとみんなそう思っているに違いない。
ただただ呼び出されてお茶を飲んで帰るのね。
親睦を深める場には思えないし。
これが爵位の低い家で行われたなら即座にみんな帰ってしまっているだろう。
退屈だと思いながら過ごしていると、王宮の侍女は手を震わせながらセレスティナ王女にお茶を進める。
「セレスティナ王女様、ジネット・ベルジエ様からのいただきものです」
私はそんなお茶など用意していない。
あからさまに罠だと言いたげなものにうんざりしてしまう。
もう少し頭を使うことはできなかったのかしら。
「セレスティナ王女、お待ちくださいっ。私はそのようなものを用意した覚えはないです!」
そう声を上げ、お茶を取り上げようと動くけれど、一足遅かったようだ。セレスティナ王女はお茶を口にし、苦しみ始めた。
……なんという茶番劇なのかしら。
盛大なため息を吐きそうになる。
オルガ様はすぐに魔法使いの一人を呼んだ。魔法使いは駆けつけ、すぐに解毒魔法を施すと、すぐにセレスティナ王女は目を覚ました。
「オルガ、オルガ!」
セレスティナ王女の目に涙を浮かべオルガ様にしがみつくように抱き着いた。
「セレスティナ王女殿下」
オルガ様はセレスティナ王女に声を掛けた。
「私は狙われたのっ。怖かったっ! 誰か、誰か! ジネット・ベルジエが犯人よ!! 捕まえて!!」
……目的はこれか。
思わず遠い目になってしまった。
こんな茶番劇に巻き込まれ、怒りを通り越して呆れる。
私が居たテーブルの席についていたのは王女の取り巻きだったため、すぐに私を捕えるため手を取ろうとしてきた。
その他のテーブルにいる人たちは冷ややかな視線で見ている。
やはり茶番劇としか見ていないのだろう。
だが、ここで声を上げれば仲間だと思われかねない。黙ってただ見ているだけのようだ。
子息たちは私を捕まえようとしてきた手を伸ばすが、私は扇子で叩き落とし、王女に言葉を掛けた。
中庭の騒動を目にした騎士たちが駆け寄ろうとしてくる。
「セレスティナ王女、なぜ私なのでしょうか? 侍女が私の名前を語っただけでしょう? 証拠は?」
「酷いっ。私の侍女が嘘を吐くとでもいうのですか」
……。
なんと言えばいいのだろう。
ここで言い訳をしても彼女には届かないのだと思う。
「そんなに私がオルガ副官と婚約したことが嫌だったのですね」
私が周囲に聞こえるよう大きな声で言うと、セレスティナ王女は涙を流し始めた。
「オルガっ! 怖い。どうしてっ、どうして私ばかりこんな目に遭うの。私がそんなに憎いの!? オルガと愛し合う私が……」
セレスティナ王女の取り巻きたちが彼女の涙で敵意をむき出しにしてくる。
反応するのも馬鹿らしくなる。
「ジネット・ベルジエ侯爵令嬢、あちらで少し話をお聞きしても?」
しらけている私を余所に騎士団は私を犯人だとして私と侍女を捕まえるようだ。
「セレスティナ王女、次期ベルジエ侯爵である私を陥れるということはどういうことか理解しておられるのでしょう。覚悟をしておいてください」
私の言葉に周囲はどよめいたが、セレスティナ王女はえぐえぐと泣きながらオルガ様にしがみつき私の言葉を聞く気はないみたい。
私はスッと立ち上がり、騎士の後に付いて王宮の中庭を出た。
あなたにおすすめの小説
夢を現実にしないための正しいマニュアル
しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。
現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事?
処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。
婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。
私の婚約者は誰?
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ライラは、2歳年上の伯爵令息ケントと婚約していた。
ところが、ケントが失踪(駆け落ち)してしまう。
その情報を聞き、ライラは意識を失ってしまった。
翌日ライラが目覚めるとケントのことはすっかり忘れており、自分の婚約者がケントの父、伯爵だと思っていた。
婚約者との結婚に向けて突き進むライラと、勘違いを正したい両親&伯爵のお話です。
繰り返しのその先は
みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、
私は悪女と呼ばれるようになった。
私が声を上げると、彼女は涙を流す。
そのたびに私の居場所はなくなっていく。
そして、とうとう命を落とした。
そう、死んでしまったはずだった。
なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。
婚約が決まったあの日の朝に。
悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています
王太子殿下と婚約しないために。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。
王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。
なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。
王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
従姉の子を義母から守るために婚約しました。
しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。
しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。
再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。
シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。
ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。
当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって…
歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。